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1. 一般経済の概況

 2002年のブラジル経済は、大統領選挙と外国投資の減少に影響を受けた。下半期に入り、10月の大統領選挙間近となっても、優位にあった左派政党(PT)のルラ候補に対する内外経済界の不安が外国投資を減少させ、通貨レアルの対ドルレートを1月の2.38レアルから10月には3.81レアルへと下落させた。為替レートの下落は、小麦製品、燃料、大豆油などの値上がりを招いて、物価に影響し、過去5年間1桁台にあったインフレ率は14.7%と再び2桁台となった。また、投資の減少や建築部門など工業活動の停滞と、それに伴うサービス部門への影響から失業者が増加し、ブラジル地理統計院(IBGE)が全国6大都市を対象として調査した失業率は、前年の6.2%を大きく上回り、一時11.7%に上昇したが、年間を通してみると7.1%となった。こうした中、2002年の(GDP)成長率は1.9%となった。

 2002年の貿易収支は、前年に引き続き、一次産品の輸出増加などにより約131億ドルの黒字となった。

2. 農・畜産業の概況

 ブラジルは、日本の約23倍に当たる8億5,100万ヘクタールの国土を有しており、そのうち農場面積は3億5,360万ヘクタール(96年)で、国土面積の41.5%を占める。農場数は486万戸、1農場当たりの平均面積は72.8ヘクタールであった。

 99年の農業就業人口は、1,663万4千人と全就業人口(7,187万6千人)の約4分の1を占めるほか、全輸出額のうち農産品の輸出額が約3割を占めるなど、農業は国内の重要産業として位置付けられている。2002年の農業の実質成長率は、5.8%と高い成長率となり、同年の低調な成長率を下支えした。

 2002年における主要農産物25品目(畜産物5品目を含む。)の農業粗生産額は、主要穀物の価格上昇により前年を11.2%上回る1,312億レアルとなった。また、2002年の農産品およびその加工品の輸出額は、205億ドルで、全輸出額の約34%を占めている。

3. 畜産の動向

(1)肉牛・牛肉産業

 ブラジルの肉牛生産は約1億8千万ヘクタールの広大な草地を利用した放牧肥育が中心で、インド原産のゼブーに属するネローレ種を主体に飼養されている。約1億7,600万人もの大消費市場を抱えるブラジルでは、牛肉生産の約9割が国内消費向けとなる。

(1)牛の飼養動向

 2002年の牛飼養頭数(乳牛を含む)は、1億8,535万頭でうち肉用牛が約7割を占める。肉用牛のうち約1億頭がゼブーおよび少数のヨーロッパ品種とされている。

 牛の飼養頭数を地域別に見ると、中西部、南東部、南部に全体の7割以上が集中している。飼養頭数が最も多い州は、中西部のマットグロッソドスル州(シェア12%)で、牧草を主体とした肉牛生産が盛んである。次いで多いのはミナスジェライス州(11%)である。


(2)牛肉の需要動向

ア 生産動向

 2002年のと畜頭数は、前年比8.1%増の1,992万頭となった。種類別では、全と畜頭数の約6割を占める去勢牛および同2割の雌牛がそれぞれ前年比12.3%および13.9%の増加となった。また、平均枝肉重量は、前年比0.4%増の235.9キログラムとなり、この結果、2002年の牛肉生産量は、前年比4.6%増の713万9千トン(枝肉ベース)となった。

イ 輸出入動向

 2002年の輸出量(製品重量ベース。冷蔵肉、冷凍肉および加工肉など)は、自国通貨の安値による価格競争力の向上、低い生産コスト、生産能力向上への投資の増加などから、前年比16.2%増の61万1千トンとなった。中でも生鮮肉(冷蔵、冷凍)輸出量は43万トンと全輸出量の7割を占める。国別に見ると、最大の輸出先であるチリは、同34.3%増の7万6千トンとなった。これはチリが、アルゼンチンの口蹄疫発生で2001年3月以降、同国産牛肉輸入を停止し、代替として、ブラジルなどからの供給が増加したためである。

 ブラジルでは、OIE総会で98年に南部2州、2000年に南部・中西部の1連邦区と5州、2001年に東部・中西部の6州、2002年には認定を留保されていた南部2州もワクチン接種清浄地域として承認されるなど、家畜衛生に対する対外的信用と国内食肉産業の輸出へのインセンティブが高まっている。

ウ 消費動向

 1人1年当たりの牛肉消費量は前年比2.0%増の36キログラムとなった。


(3)牛肉の価格動向

 ブラジルでは、生体取引が主体であるが、生産者販売価格は、15キログラム単位で枝肉の建値を決める。2002年の生産者販売価格(サンパウロ州)は、前年比13.2%高の15キログラム当たり48.45レアルとなった。

(2)養鶏・鶏肉産業

 ブラジルの鶏肉生産量は、92年の272万7千トンから2002年には744万9千トンと約2.7倍に増加し、米国、中国に次ぐ生産量を誇っている。また、輸出量も米国に次いで多く、2002年は生産量の2割強の162万5千トンを輸出した。

(1)ブロイラーのふ化羽数動向

 好調な輸出需要に支えられ、2002年のひなふ化羽数は前年比9.9%増の38億1,900万羽と過去最高となった。

(2)ブロイラーの需給動向

ア 生産動向

 2002年のブロイラー生産量は、レアル安による価格競争力の向上などにより輸出が大幅に増加したことなどから、前年比13.4%増の744万9千トンと過去最高を記録した。

イ ブロイラーの輸出動向

 2002年の輸出量は、前年比28.1%増の162万5千トンとなった。形態別に見ると、丸どりが前年比16.2%増の67万4千トン、パーツ(解体品)が同38.3%増の92万6千トンとなった。国別では、2001年から本格的な輸出を開始したロシアが29万6千トンと最大の市場となったのをはじめ、丸どりの主要市場であるサウジアラビアが25万1千トン、次いでパーツの主要市場である日本が16万4千トンと続いた。

ウ 消費動向

 1人1年当たりの消費量は、牛肉と比較し安価であることや、消費者の健康志向の高まりなどから増加傾向が続き、2002年は33キログラムとなり、92年に比べ2.3倍となった。


(3)ブロイラーの価格動向

ア ブロイラー生産者販売価格

 2002年のブロイラーの生産者販売価格は、輸出量の増加などにより、前年比35.0%高のキログラム当たり1.13レアルとなった。

イ 卸売価格

 ブロイラーの丸鶏卸売価格は前年を12.5%上回るキログラム当たり1.46レアルとなった。

4. 飼料穀物

 世界のトウモロコシ生産の約5〜7%を占めるブラジルでは、国内における養鶏、養豚などの畜産業を中心とした大消費市場が形成されている。また、飼料基盤のぜい弱な北東部の養鶏生産者が、国産よりも割安なパラグアイ、アルゼンチンなどからの外国産トウモロコシに一部依存している。

(1)主要な政策

 ブラジルにおける農業政策は、1991年1月に成立した農業法に基づいて実施されている。同法は、農業生産の拡大と生産性の向上、食糧供給の安定、地域格差の是正などを目的とし、主要な制度として、農業融資や取引支援策がある。また、これらの中心的メカニズムとしては、収穫時の価格暴落による農家のリスクを軽減し、生産者に対し生産者コストを保証する最低保証価格制度がある。最低価格は、毎年、作付け前に発表されるが、各作物別の新しい最低価格は、生産者の作付け意向に影響する重要な要素となるため、作付けの方向を誘導する政策手段でもある。最低価格設定の対象となるのは、トウモロコシ、大豆、コメ、綿花、フェイジョン豆などの主要作物である。

(2)穀物の需給動向

 2001/2002年度のトウモロコシ生産量は、前年度比16.6%減の3,528万トンとなった。これは生産者がトウモロコシより価格が優位である大豆の作付けを選択したことや、南部の長期乾燥により1ヘクタール当たりの収量が減少したことなどが要因となっている。

(3)穀物の価格動向

 2002年の生産者価格(サンパウロ州)は、トウモロコシの天候不順などによる大幅な減産で国内供給がひっ迫したことから、前年比66.0%高の60キログラム当たり15.49レアルとなった。このため、飼料原料の約6〜7割をトウモロコシに依存する養鶏・養豚部門の経営収支に深刻な影響を与えた。



ブラジルにおいて牛の個体識別制度が始動

 牛(水牛を含む)の出生からと畜までを識別・管理する個体識別制度(Sisbov)は、ブラジル最大の牛肉輸出先であるEU市場が、生産農場までを確実に追跡調査できる個体識別制度の確立を求めたことを受け、農務省が2002年 1 月 9 日付け農務省訓令第 1 号で制定したシステムである。(1)EU向けに肉用牛を生産する農場は、2002年 6 月末までに登録することが義務付けられ、(2)EU以外の諸国へ輸出する生産農場は2003年12月末までに、(3)口蹄疫清浄州および同ステータス認定を申請中の州に所在する生産農場は2005年12月までに、(4)それ以外の地域にある生産農場は2007年12月までに登録することを義務付けられた。(なお、(2)の生産農場においては、訓令17号(2003年12月12日付け)により、2004年 3 月15日までに登録することに変更されている)。

 これに伴い農務省は2002年 6 月18日、個体登録の実施機関および経歴の証明書発行機関として民間企業 4 社を認定した。この制度によって生産された牛肉には政府が公認するSisbovの証明が付されて輸出されることになる。また、各機関に登録された個体情報は同省農牧防疫局(SDA)の全国統一システムに収録され、全国的なデータ・ベースの管理が行われる。

 認定された 4 社は、(1)プラネジャル社(所在地:リオグランデドスル州、以下同じ)、(2)ジェネジス社(パラナ州)、(3)ブラジル・セルチフィカソン社(サンパウロ州)、(4)セルビソ・ブラジレイロ・デ・セルチフィカソン社(SBC社、サンパウロ州)で、すでにこの時点で30万 9 千頭の牛の登録を受け付けていた。なお登録頭数の内訳は、55.3%に相当する17万 1 千頭はプラネジャル社で、続いてSBC社が 6 万頭(全体に占める割合は19.4%、以下同)、ブラジル・セルチフィカソン社が 5 万 5千頭(17.8%)、ジェネジス社が 2 万 3 千頭(7.4%)となっていた。

 ちなみにプラネジャル社への登録申込料は75レアル、年会費は60レアル、 1 頭当たりの登録料は 1レアルであった。


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