畜産物の需給動向

 5 牛乳・乳製品 


▼飲用牛乳等生産量
15年度の牛乳の生産は402万kl(2.7%)とわずかに増加、乳飲料は微増、はっ酵乳は減少
 飲用牛乳(牛乳および加工乳)は、11年度にはおおむね天候要因や茶系飲料などとの競合などにより減少傾向であったが、12年度には12年6月末に発生した加工乳などによる食中毒事故の影響により牛乳はわずかに増加した。13年度には食中毒事故の影響による牛乳への消費増加が一巡したことや、秋口の天候不順などによりやや減少し、14年度には加工乳の牛乳使用割合表示が義務付けられ、加工乳の大幅な減少に牽引され牛乳の表示見直しなどにより減少した。15年度には4,479,722(1.8%)とやや上回った、このうち牛乳は4,024,942kl(2.7%)とわずかに増加し、加工乳は454,780kl(▲5.2%)と前年度をやや下回った。

 ヨーグルトなどのはっ酵乳は、活発な商品開発や消費者の健康志向などを背景に、昭和60年以来、生産量が堅調に推移してきたが、12年度には15年ぶりに前年度を5.1%下回った。13年度には(2.1%)再び上回り、14年度にはプロバイオティクスの効用により(14.2%)とかなり大きく上回った。15年度には794,687kl(▲0.5%)とわずかに減少した。

 乳飲料(牛乳等にカルシウム、しょ糖、コーヒーなどを加えた飲料)は、消費者の健康志向、栄養強化タイプを中心としたメーカーの積極的な商品開発などを背景に8年度以降急激に伸びてきたが、加工乳と同様に食中毒事故の影響で、12年度は前年度をやや下回り、13年度は消費を回復してわずかに上回ったが、14年度は消費者の生乳志向に押され(▲4.0%)とやや下回り、15年度は1,180,913kl(0.7%)と微増した。

 乳酸菌飲料は、15年度は179,700kl(▲3.0%)と前年度を下回った(図12、13、P.106)。

図12 飲用牛乳の生産量
図13 飲用牛乳等の種類別生産量(対前年増減率)


資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」
 注:「その他」には、乳飲料、はっ酵乳および乳酸菌飲料を含む。
資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」

牛乳・乳製品の消費者物価指数、引き続き下落
 総務省が平成16年1月30日に公表した消費者物価指数によると、牛乳・乳製品の品目別動向は、輸入チーズは上昇、牛乳は前年並みとなったほか、他の品目は軒並み低下した。

 牛乳について過去5年間の動きを見ると、牛乳の指数は11年以降、連続して下落していたが、15年は前年並みの水準となり、下げ止まった。これは、配達牛乳の指数が大きく上昇した結果である。しかし、店頭売り牛乳の指数は依然として下落が続いており、5年間で3.9ポイント低下している。

 
脱脂粉乳の推定期末在庫、4年連続で増加

 農林水産省牛乳乳製品課調べによると、16年3月の脱脂粉乳の推定期末在庫量は、前年同月に比べて15.4%上回る9万3千トンとなり、12年度以降、4年連続の増加となった。

 15年度の需給状況についてみると、生乳生産がわずかに増加する中で、冷夏の影響などにより飲用乳の消費が停滞した結果、脱脂粉乳の生産が前年度に比べて1.3%増加した。一方、加工乳から牛乳への飲用乳消費のシフトに伴い脱脂粉乳の需要は依然低迷しており、脱脂粉乳の在庫は1年間で1万2千トン積み増される結果となった。

 

脱脂粉乳を利用したみそに関係者が注目

 脱脂粉乳の過剰在庫対策が酪農乳業界の大きな課題となっている中で、当機構、大学、みそメーカーなどからなる研究グループ(「脱脂粉乳の利用を考える会」)が開発した脱脂粉乳を原料の一部としたみそが、関係者の注目を集めている。開発の着想は、従前の脱脂粉乳の用途と競合しない新規用途の開拓にあり、醸造段階から主原料である大豆に脱脂粉乳を加えて製造する(1kgのみそに約120gの脱脂粉乳が使われている)。できあがったみそは、みその風味はそのままに、カルシウムやアミノ酸含有量は通常のみそを上回っており、同研究グループでは、骨粗しょう症や高血圧防止への効果を念頭に置いて、その特性に由来する効能についても研究を進めている