畜産物の需給動向

 3 豚肉 


▼輸 入
15年度の輸入量は、77万9千トン(4.2%)3年連続で増加
 豚肉の輸入量は、13年10月以降、国内でのBSE発生の代替需要などにより特に、保存性の高い冷凍品を中心に増加傾向で推移してきた。また、3年連続で関税の緊急措置が発動され(16年3月末まで)、基準輸入価格が引き上げられたにもかかわらず、15年度は米国でのBSEの発生、国内外での鳥インフルエンザの発生に伴う牛肉・鶏肉の代替需要が増加傾向に拍車をかけ14年度をやや上回る77万9千トン(4.2%)となった。このうち冷蔵品は178,396(▲8.8%)とかなりの程度減少した一方、冷凍品は600,170トン(8.9%)と増加した。(図6、P.89)。

 また、12年から14年にかけて海外で口蹄疫が発生したことにより、それまで輸入主要国であった韓国をはじめ、英国などに対して輸入禁止措置がとられ、ここ数年のわが国の豚肉輸入主要国は、米国、デンマーク、カナダとなった。特にデンマークは前年度に比べ、輸入量を増やした。(図7、P.90)。

 15年度は、第1四半期までの豚肉などの輸入量が同期の発動基準数量を超えたことから、3年連続、6回目の関税の緊急措置が発動された。 昨年と同様8月1日の発動となったため、駆け込み輸入により7月は急激な増加になった。

 基準価輸入価格は、部分肉ベースで546.53円から681.08円となったにも関わらず相対的に各国からの輸入が増え前年度を3万1千トン(4.2%)上回った。(図8、P.90〜94)。


図6 豚肉の冷蔵品、冷凍品別輸入量
図7 豚肉の国別輸入量


資料:財務省「貿易統計」
 注:部分肉ベース
資料:財務省「貿易統計」
 注:部分肉ベース

図8 豚肉の冷蔵品、冷凍品別輸入量と基準輸入価格


資料:財務省「貿易統計」
注1:部分肉ベース
 2:過去の関税の緊急措置の発動実績は、7年11月〜8年3月、8年7月〜9年3月、9年4月〜6月、13年8月〜14年3月、14年8月〜15年3月、15年8月〜16年3月の6回である。
このほか、生きている豚及び豚肉等についてSSG(特別セーフガード)がある。
 3:9年8月1日〜31日の間は関税の減免措置が実施された。


米国産
図9 米国からの豚肉輸入量
 米国産の豚肉は、当初口蹄疫が発生した台湾産の代替として、輸入が増加したが、これに加えて特定の部位を大量に入手しやすいこと、冷蔵での輸入が可能なことなどを理由に、近年、冷蔵品を中心に輸入量を増加させていたが、14年度以降、牛・鶏肉の代替需要により冷凍品がかなり増加した。

 米国の15年度の豚肉輸入量は、冷蔵品は124,688トン(▲5.7%)で総冷蔵品輸入量に占めるシェア70%、総合計では245,594トン(▲0.7%)でシェア27.6%となった(図9、P.90)。

資料:財務省「貿易統計」
 注:部分肉ベース
デンマーク産

図10 デンマークからの豚肉輸入量

 デンマークは、ハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工仕向用冷凍品の最大輸入先国である。15年度は、8月からの関税急措置発動にもかかわらず牛・鶏肉の代替需要により、冷凍品は233,137トン(5.4%)で総冷凍品輸入量に占めるシェア39%、総合計では233,446トン(5.4%)でシェア30%となった(図10、P.90)。
資料:財務省「貿易統計」
 注:部分肉ベース

カナダ産

図11 カナダからの豚肉輸入量

 カナダ産は、13年度までは冷蔵品、冷凍品ともに増加していたが、14年度以降は牛肉の代替需要から冷凍品が大幅に増加し、今後は重要な輸入相手国になると考えられている。冷蔵品は34,616トン(▲15.9%)で総冷蔵品輸入量に占めるシェア19%、冷凍品は137,795トン(8.5%)で総冷凍品輸入量に占めるシェア23%、総合計では172,412トン(2.4%)でシェア22.1%となった(図11、P.90)。
資料:財務省「貿易統計」
 注:部分肉ベース

調製品

図12 豚肉の調製品の輸入量

 豚肉調製品(豚の肉またはくず肉のみから成るものを除く。)やソーセージ類は、豚肉の緊急措置が発動され基準輸入価格が引き上げられた場合でも、定率関税で輸入することができるため、増加傾向で推移してきた。15年度は、かた調製品およびソーセージがわずかに減少したものの調製品全体量では6.9%増加した(図12)。
資料:財務省「貿易統計」
 注:もも調製品:1602.41-090  調製品その他:1602.49-290
   かた調製品:1602.42-090  ソーセージ:1601.00-000