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豚肉価格は底堅く推移するも、飼料価格高騰で養豚経営は依然厳しい状況(EU)

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 EUでは、2月の民間在庫補助の発動により市場から隔離された豚肉が放出されているにもかかわらず、7月の豚枝肉卸売価格は100キログラム当たり157ユーロ前後で推移し、底堅い展開となっている。一方で、飼料価格の高騰が続き、生産コストにおける飼料費の割合が約5割を占める養豚経営は依然厳しい状況にある。

7月の豚肉価格は底堅く推移 

 欧州委員会によると、EUにおける7月第4週目の豚枝肉卸売価格は100キログラム当たり156.21ユーロ(約1万7964円、1ユーロ=115円)と、前週並みとなった(図1)。EUでは、2010年末に発生したダイオキシン汚染飼料混入問題による価格下落を受け、2月に民間在庫補助が発動され、豚肉14万1218トンが市場から隔離された。このうち、5月に2万8175トン、6月に5万2873トン、7月に2万4873トンが放出され、残りの3万5297トンについては、8月に放出される予定である。在庫放出による一時的な需給緩和を受け、5月の豚肉価格は第1週目の同159.40ユーロ(約1万8331円)から第5週目には同153.48ユーロ(約1万7650円)に下落した。6月に入ると価格は緩やかな上昇に転じ、7月は同157ユーロ前後で推移した。
 在庫放出にもかかわらず、EUの豚肉価格が底堅い要因として、域外輸出が好調なことが挙げられる。2011年1月〜5月における域外向け豚肉輸出量は122万9000トンと、前年同期と比べ30.8%増加した(図2)。ユーロの為替レート低下により、国際市場におけるEU産豚肉の相対的な競争力が向上したことが輸出増加の要因と考えられる。また、主要輸出先の韓国向けについては、同国で大規模な口蹄疫が発生し、供給不足で輸入需要が増加したことを受け、9万8438トン(前年同期比127%増)と大幅に増加した。
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6月の豚飼料価格は前年同月比40.3%高

 豚肉価格が底堅く推移する一方で、英国の農業・園芸開発委員会(AHDB)は、飼料価格の高騰によりEUの養豚経営は厳しい状況にあるとみている。2011年6月の豚飼料価格は1トン当たり297.89ユーロ(約3万4257円)と、前年同月と比較して40.3%上昇した。EUにおける飼料価格の高騰は、世界的な穀物価格の高騰を背景に、原料となる大麦やとうもろこし価格が前年の約2倍の水準にまで上昇していることが要因と考えられる。生産コストに占める飼料費の割合は5割と前提とすると、飼料価格の上昇により、生産コストは全体で2割増加したことになる。6月の豚枝肉卸売価格は100キログラム当たり155.57ユーロ(約1万7890円)と前年同月を3.2%上回っているものの、生産コストの大幅な上昇に追い付いておらず、養豚経営は収益性の低下に直面している。
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【日高 千絵子 平成23年8月5日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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