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韓国の牛乳・乳製品需給の現状と今後の見通し(2011年8月現在)

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 韓国農村経済研究院(KREI)農業観測センターが8月25日に公表した2011年9月号の畜産観測(乳牛編)に基づき、韓国の牛乳・乳製品需給の現状と今後の見通しを報告する。

乳牛飼養頭数は3月を底に回復傾向

 韓国では2011年2月25日以降、口蹄疫の発生が確認されず、4月3日にすべての地域で移動制限が解除された。農家は移動制限解除から30日を経過すれば、家畜の再導入が可能となる。6月の乳牛飼養戸数は前年同月比4.7%減の6,100戸と減少したものの、飼養を一時中断した農家において乳牛の再導入が進み、飼養頭数50頭未満の農家戸数が同4.5%増の2,300戸となった。
 乳牛飼養頭数は3月を底に緩やかな回復傾向にあり、6月の飼養頭数は前期比1.8%増の40万3千頭となった。KREIによると、12月の飼養頭数は、6月から2千頭増加し40万5千頭に達すると予測し、緩やかな回復基調にあるとしている。再導入された未経産牛が泌乳期に至るまでは時間を要するため、生乳生産量が本格的に回復するのは来年以降になる。
 また、経営再開に向け、乳牛の再導入が進んだことにより、生体価格が上昇した。6月の初妊牛価格は前月より0.2%上昇し、413万ウォン(約30万4千円。8月末TTSレート100ウォン=7.36円で計算)と今年の最高値を更新した。7〜8月にかけて価格は下落傾向にあるものの、8月20日時点で402万7千ウォン(約29万6千円)と依然として高い水準を維持している。
図1
表1

生乳生産量も回復傾向

 2011年第2四半期(4〜6月)の生乳生産量は、前年同期比10.3%減の48万7千トンとなった。第3四半期(7〜9月)は同10.3%減の46万3千トン、第4四半期(10〜12月)は同6.7%減の46万トンと見込まれ、減少幅が縮小していることから、生乳生産量も口蹄疫の影響から回復傾向にある。現地報道によると、韓国では7〜8月にかけて、猛暑と豪雨の影響により、一頭当たり乳量が低下したとされる。また、冬季は酷寒であった前年より気象条件が好転するとみられており、第4四半期以降の一頭当たり乳量は増加する見通しである。
 韓国酪農振興会は、飼料価格の高騰および生乳不足の現状を踏まえ、8月16日に基本乳価注)の改定を行い、1リットル当たり704ウォン(約52円)から834ウォン(約61円)に引き上げ、品質加算額も見直された。これにより、乳価は2割近く上昇することになり、酪農家の生産意欲を刺激し、生乳生産量の回復ペースが早まると期待される。



機構注)韓国では、酪農振興会が毎年度、生乳生産コスト等に基づいて、基本乳価および品質加算額(乳脂肪、体細胞数、細菌数)を算定している。乳価は基本乳価と品質加算額の合計で決まるため、実際の乳価は基本乳価から2割近く上乗せした価格で取引されることが多い。また、酪農家と取引を行う乳業メーカーおよび酪農組合などは横並びで当該乳価を採用している。なお、乳価は全国一律であり、基本的に用途別価格は採用されていない。

粉乳の在庫は依然としてひっ迫、今後さらなる輸入の増加も

 2011年上半期の乳製品仕向け量は、生乳生産量が減少したため、前年同期比43.9%減の264トンと大幅に減少した。特に粉乳の減産が顕著であり、2011年7月の粉乳在庫量は前月から19.8%減少し750トンとなった。7月の粉乳在庫量は平年であれば9,000トン台に維持されており、現在の在庫水準は平年の10%以下と極めて低い。
 こうした粉乳在庫の減少に伴い輸入量は増加し、6月の粉乳(HSコード:0402)輸入量は前年同月比7.4倍の4,114トンと過去最高となった。特に脱脂粉乳の輸入増加が著しく、主な輸入先はドイツ、ニュージーランド、豪州などである。
表2
図2
【木下 瞬 平成23年9月5日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8545