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タイ:豚肉市場における最近の状況

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 タイでは、消費者物価指数が23カ月連続で上昇するなど、物価の上昇が続く中、伝染性疾病により豚肉生産量が大幅に減少したことで、4月中旬より豚肉価格が急騰し、市場の混乱を招いている。本稿では、価格の高騰を受けタイ政府が実行した3つの政策、(1)価格の統制、(2)輸出の制限、(3)取引情報の報告の義務化、を概説する。

国内の豚肉価格急騰

 生体豚価格は、2007年1月以降、ほぼ一貫して上昇傾向で推移してきた。今年2月以降は一段高となり、7月には前年比13.3%高の1キログラム当たり70.81バーツ(190円)となった。豚赤身小売価格も生体価格に連動して推移してきたが、今年4月以降は生体よりも上昇幅が大きく、7月には、同19.3%高の同140.13バーツ(377円)と高騰している。価格の高騰は、豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)といった豚伝染病の流行や、4月初旬の南部の大洪水および今夏の高温のため、豚の生育の遅れや死亡が生じたことによるとされ、飼養頭数は2011年の1年間で3割も減少するともいわれる。豚肉は1人当たり年間消費量が8.1キログラム(2008年)と、鶏肉に次ぐ食肉であるため、価格の高騰は国民生活を困窮させる事態となっている。
図1:タイにおける豚肉価格の推移

5月以降豚肉の価格を統制

 このような豚肉市場価格の推移を受け、商務省は5月1日、豚肉の価格統制措置を発動した。豚肉は価格統制品目の対象となっており、今回、統制価格はバンコク、中部、東部および西部、北部および東北部および南部の3地方について設けられた。しかし、市場価格は下がらず、政府は同月19日、豚赤身小売価格の統制価格を5バーツ引き下げた。7月に入りバンコク市場の豚赤身小売価格は、ついに1キログラム当たり160バーツまで高騰。商務省は、統制価格と実際の市場価格の差が大きいことを受け、7月29日、統制価格を引き上げた。9月に入り、政府は豚肉供給量が回復したとして、1キログラム当たり生体豚6バーツ、豚赤身小売価格12バーツ統制価格を引き下げ、バンコク、中部、東部および西部で生体豚75バーツ(約197円)、豚赤身小売価格140バーツ(約368円)、北部および東北部で生体豚79バーツ(約201円)、豚赤身小売価格145バーツ(約381円)、南部で生体豚81バーツ(約213円)、豚赤身小売価格150バーツ(約395円)となった。この価格統制では利益が少ないため、統制価格を守らない販売者が後を絶たず、また一方では、小規模農家は廃業を余儀なくされることから、生産量の抑制につながりかねない。このため、関係者は、インラック新政権が政策を見直すことを期待している。

8月5日より半年間、輸出を許可制へ

 商務省は、2011年8月5日から2012年2月5日までの6ヵ月間、生体豚および豚肉(枝肉)の輸出許可制を導入し、国内の豚肉供給量の確保に努めることとしている。同時に、輸出コントロールを確実に行うため、75県のうち24県において生体豚と豚肉の国内移動に制限を設けた。移動制限の対象となる24県は、国境沿いとペチャブリ県以北の沿岸県であり、これにより、国外への流通ルートは遮断されることになる。

豚肉取引に関する報告の義務化

 商品・サービス価格中央委員会(CCP)は、一定規模以上の生産者、取引業者および輸入業者に対し、出荷量、輸入も含めた取引量と在庫量を、月に2回報告することを義務化した。これは、政府による国内流通量の正確な把握を目的とする。
【植田 彩 平成23年9月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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