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欧州乳製品輸出入・販売業者連合(EUCOLAIT)会議が開催

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 5月24日、25日にかけて欧州乳製品輸出入・販売業者連合(EUCOLAIT)会議が開催された。本会議は、EU主要生乳生産国が参集し、現在の動向、今後の予測および政策などについて各国の状況を報告し検討するものである。今回の会議では、現在問題となっている牛乳・乳製品価格の下落および2013年のCAP改革に係る意見などについて報告および検討が行われた。

EUにおける全体的な動向

 2010/11年度の乳製品価格の好調を受け、2012年年初より生乳生産量は増加している。しかし、本年2月より全般的に価格が下落していることから、生産拡大は抑えられる見込みである。2010/11年度における生乳クオータ超過国は、ドイツ、オランダ、アイルランドの見込みである。輸出は、中国、アフリカ等の需要増により脱脂粉乳で増加しているが、2012年は中国からの引きが弱くなっているため、2011年の増加率には達しない予想である。バターおよび全粉乳の輸出は、ニュージーランド産と比べEU産は価格競争力が弱いため減少する見込みである。脱脂粉乳およびチーズの輸出は増加を予測している。
 増産分をEU域内のみで消化することは困難なため、輸出促進が必要である。ユーロ安が国際市場において競合性を高めているものの、金融危機の牛乳・乳製品への影響は未知数である。

チーズ市場の動向

 チーズ生産量は、2012年1月から2月においてEU全体で前年比3.3%増となり、昨年に続き2012年も増加している。
 チーズの動向について、ベルギーは「2012年第1四半期でチーズ生産量が前年比で2.4%増、モッツァレラがピザ業務用として伸びている。オリンピックの開催による需要増に期待」、フランスは「チーズ生産量は前年比2.0%増の見込み。エダムタイプが45%を占めているが、フレンチコンテチーズの生産が伸びている。しかし、現在価格が下落しているため困難な状況にある」、オランダは「2012年第1四半期で前年同期比3.3%増の見込み。ロシアおよびドイツ向けで増加。国内消費は低脂肪チーズの需要が伸びている」と報告した。

バター市場の動向

 バター生産量は、2012年1月から2月においてEU全体で前年比6.4%増となり、昨年に続き増加している。しかし、価格下落は継続しており、3月より開始された民間在庫(PSA)の在庫が積み上がっている状態である。
 バターの動向について、ドイツは「2012年の生産量は増加、消費も価格下落に伴い戻ってきている。第2四半期は、輸出促進が需給改善の鍵」、フランスは「2012年第1四半期で対前年同期比6.0%増の見込み。一方、消費量は健康志向の高まりからバターからマーガリンへの移行が進み減少している。バターは国際価格には到底勝てない。クリーム生産を促進したい」、英国は「バター生産量は現在前年比12%増と大幅な増加。価格下落による影響を懸念。小売店のレシピがバターからマーガリンに移行しておりバター消費の下げ圧力となっている」と報告した。

脱脂粉乳市場の動向

 脱脂粉乳生産量は、2011年は113万9000トンと前年比13.5%増と大幅に増加した。2012年1月から2月も前年同期比6.9%増と増加している。脱脂粉乳は、ユーロ安とドル高によりEU産の競争性が高まり、中国などアジアの需要高で生産が増加している。しかし、現在価格は下落しており、民間在庫が積み上がっている状態である。一方、全粉乳は、ニュージーランド産と価格差があり競争性が弱いため2011年72万3000トンと前年比5.0%減となった。2012年1月から2月の生産量も前年同期比4.4%減となっている。
 脱脂粉乳の動向について、ベルギーは「第1四半期の生産量は、前年同期比32%の増加となった。しかし、現在価格が下落しているため、今後の生産拡大は抑制される見込み」、デンマークは「脱脂粉乳は増加しているが、全粉乳は減少。輸出品目として脱脂粉乳が安定しているので今後も増加する見込み」、フランスは「第1四半期で脱脂粉乳の生産量は前年同期比5%増、全粉乳は同4%減。脱脂粉乳は食品用プロテインで需要の高まりがある。また、ホエイパウダーの引き合いが強い。今後3年間で脱脂粉乳を10〜20%増産を計画」、ドイツは「第1四半期で脱脂粉乳の生産量は前年同期比6.6%増、しかし、輸出の伸びが厳しい状況であるため、今後の生産拡大は抑制される見込み。ホエイパウダーの需要が高い」と報告した。

2013年CAP改革について

 会議冒頭に欧州委員会農業総局(DGAGRI)より、欧州の財政が困難な状況にあり、CAP改革にも影響を及ぼす可能性があるとコメントがあった。
 CAP改革のうち酪農部門では、介入買入価格、在庫補助、輸出補助金が主な論点となった。今年度も介入買入価格の引き下げは行われており、現在の価格低迷を受けて、会議出席者からは2008年の酪農危機を引き合いに今回の価格下落の酪農業への影響が指摘されたが、DGAGRIからは「今回の下落は、一部製品の販売不振で発生している『購買』危機ではあるが、『酪農』危機ではない」との回答であった。また、補助金削減案の批判に対して「あくまでも市場原理を尊重し、EUはセイフティネットとしての機能を重視する」との回答であり、会場からは大きな不満の声があがった。
 2013年CAP改革について、AMI(Agramarkt Informations-GmbH:ドイツ農業情報(株))は、直接補助依存の高いフランスは大きな危惧を示すのに対し、直接補助の依存が低いドイツは品目にかかる直接補助削減に対して影響はあるものの大きな危惧を示さず、むしろ更なるデカップリングや環境保護重視の政策に対して前向きであると述べた。
 また、CAP改革予算の枠組みが決定しない状況では検討に限界があり、当初12月末までに決定する予定であったが3月末まで延長する可能性が指摘されている。
  
【矢野 麻未子 平成24年6月11日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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