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東部から南東部にかけて、気象災害が発生(豪州)

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豪州東部をサイクロン「オズワルド」による洪水が襲う

 1月下旬にクイーンズランド(QLD)州沿岸部を襲ったサイクロン「オズワルド」が、QLD州からニューサウスウェールズ(NSW)州沿岸部にかけて大雨をもたらした。これにより、一部地域では洪水も発生している。QLD州沿岸部にはさとうきびの産地が点在しており、特に主産地であるBundaberg(ブンダバーグ)やMaryborough(メアリーバラ)、Childers(チルダース)では、洪水によるさとうきびへの被害が懸念されている。さとうきび生産者団体であるCanegrowersの1月29日時点での報告によれば、これらの地域では未だ水がひいていないため、さとうきびへの被害は具体的に算定できない状況だとしながら、長期間さとうきびが浸水することによる立ち枯れを懸念している。また、さとうきびへの直接的な被害以外にも、かんがい設備、運搬道路、製糖設備への被害についても言及している。
図 1月の降水量

南東部では高温乾燥気候が続く

 一方、ビクトリア(VIC)州や南オーストラリア(SA)州、NSW州内陸部では、暑熱と深刻な降雨量不足が続いている。2月5日に豪州気象庁(BOM)が発表した気象報告によると、2012年8月から今年1月までの6カ月間で、乾燥気候は南東部を中心に拡大し、特にSA州では同時期の降雨量は過去最低となった。
図 2012年8月から2013年1月までの降雨量不足の状況

森林火災や猛暑による牛肉産業への影響

 1月第1週から第2週にかけては、豪州東部を熱波が襲い、東部と南部の州に森林火災をもたらした。特に、NSW州での被害の大きさが報道されている。
 1月25日にNSW州第1次産業省が発表した最新の森林火災の状況報告によると、牛や羊などの家畜被害頭数は1万2000頭以上と算定されている。地域別では、州北西部Coonabarabran(クーナバラブラン)近郊で5万4000ヘクタール以上を焼失し、現在までに確認された家畜被害頭数は羊が850頭、牛が320頭となっている。キャンベラ近郊のYass(ヤス)近辺では羊1万頭、牛150頭の被害となった。また、他の地域でも、家畜の被害とともに、5,500ヘクタールの牧草地、1,000個以上のロールベールの乾草の焼失などが報告されている。
 現地関係者は、森林火災や猛暑が牛肉産業に及ぼす影響について、牛の焼失被害はそれほど大きくないものの、猛暑のストレスにより牛の摂食量が減少することから肥育牛の成長の遅れや、放牧地の牧草量の減少が懸念されるとしている。また、現在、生育期であるソルガムの収量が猛暑により低下すると、ソルガム価格の上昇につながりかねず、ソルガムを肉牛の飼料として使用するフィードロット産業では生産コスト高も懸念される。
 各州では、災害宣言が発動されている。これにより、森林火災の被害地域と認定された地域で、農家は州政府からの支援を受けることが可能となっている。NSW州の支援内容は、最大13万豪ドル(1,260万円:1豪ドル=97円)の譲許的融資貸付や、家畜や飼料の輸送費について最大5割、年間1万5000豪ドル(146万円)を上限とした補助などとなっている。
 牛肉産業や酪農業、砂糖産業への乾燥気候や洪水による影響は今後明らかになるとみられることから、引き続き注視してまいりたい。
【伊藤 久美 平成25年2月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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