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2013年のトウモロコシ生産は土壌水分不足が大きな懸念材料(米国)

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 2012年6月以降コーンベルト地帯を中心に全米で発生した干ばつは、現在も継続している。
 この干ばつによりトウモロコシや大豆などは当初の生産見込みを大幅に下回り、飼料穀物価格は急騰した。トウモロコシのシカゴ相場を見ると、史上最高値(ブッシェル当たり8.31ドル)を付けた8月と比べると、現在は、同7ドル台に値下がりしているが、過去の価格水準と比べれば依然、高水準で推移している。飼料穀物価格の高騰は、飼料穀物を輸入に頼る日本の畜産だけでなく、米国畜産にも大きな影響を及ぼしている。
 また、中南部に位置するテキサス州など米国最大の肉牛繁殖地域は、2011年に続き2年連続の干ばつに見舞われており、粗飼料生産も甚大な影響を受けている。
2月の干ばつの発生状況の比較

コーンベルト地帯では土壌水分不足が懸念材料

 米国政府は干ばつの状況を5段階評価で公表している。「U.S. Drought Monitor」によると、コーンベルト地帯に位置するトウモロコシ主要生産州の2月5日時点の状況は、干ばつ〜異常な干ばつと評価される地域が、アイオワ州ではほぼ全域、イリノイ州では17%、ネブラスカ州では全域、ミネソタ州では98%となっており、干ばつが深刻化した2012年7〜8月と比較するといずれも改善しているものの、依然として干ばつが続いていることが分かる。
トウモロコシ主要生産州
 しかしながら、トウモロコシ主産州の土壌水分含有量を見ると深刻な状況にある。
 米国農務省(USDA)の1月29日公表によると、表土は、アイオワ州では46%が深刻な水分不足にある。イリノイ州では、干ばつの状況を見ると「異常乾燥」または「干ばつ」は37%にとどまったものの、42%で土壌水分が不足している。表土の水分は、春先の降雨により容易に改善されるため、トウモロコシの発芽には大きな問題は生じないと考えられるが、心土の水分が不足している場合にはその後の生育に与える影響が大きい。アイオワ州では、既に2011年から心土の水分不足が指摘されていたが、米国のトウモロコシは根の深さが地表から1.5メートルにまで達することで生育期間中の水分不足を補ってきた。しかし、2012年に大干ばつとなったことにより、地下水位はさらに低下しているとみられており、今冬の降雪量が平年を大幅に下回れば2013年のトウモロコシ生産が危ぶまれる状況となっている。イリノイ州でも状況は同じであり、72%の地域で心土の水分が不足または深刻な不足とされている。11月以降の冬季間には、降雪地帯で土壌水分の計測値が改善されることはないが、2012年の干ばつの影響が比較的小さかったミネソタ州でも88%の地域で心土の水分が不足または深刻な不足とされており、2013/14年度の穀物生産に対する不安は払拭されていない。
土壌水分

テキサス州は州の8割近くが干ばつ地域に含まれる

 一方、米国最大の肉牛繁殖地域であるテキサス州は、前年と比べると状況はわずかに良いものの、現在でも州の8割近くが干ばつとされており、草地の痛みは深刻であるため、回復には少なくとも1〜2年は要するとみられる。米国の肉牛生産は繁殖段階で放牧を行うことから、肉牛生産は干ばつの影響を引きずることが懸念される。
テキサス州の干ばつ状況
【前田 絵梨 平成25年2月12日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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