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ドイツ、食肉産業への最低賃金導入に合意

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 ドイツ食品・外食産業労働組合(NGG)は1月14日、食品・飲料経営者協会(ANG)との間で、食肉産業分野における最低賃金制度の導入について合意に達したと発表した。
 労働者側代表のNGG副議長と経営者側代表のANG最高責任者は、共同記者会見を行い、以下の合意内容を発表した。
【合意内容】
(1) ドイツ国内の最低賃金に格差をもうけない(旧東ドイツ地域の賃金格差の是正)。
(2) 以下のスケジュールに基づき、段階的に最低賃金の引き上げを実施。
(3) 2017年7月1日以降の最低賃金は、交渉を継続する。
(4) ドイツ国内で食肉産業分野に従事するEU域内の外国人労働者に対しても、この額を適用する。
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 今回の合意内容についてNGG副議長は、非常に満足できる内容とし、ドイツ国内で食肉産業に従事する約8万人の労働者の待遇が大きく改善されるだろうと述べた。
 ドイツの食肉産業に最低賃金制度が導入されたことに関し、隣国のフランスは歓迎の意向を示している。フランスでは、既に最低賃金制度を導入しているため、フランス国内で肥育された肉豚が、同国よりコストの安いドイツの食肉処理場でと畜される状況が続いていた。かねてから、フランスやオランダなどドイツ近隣諸国の食肉産業は、最低賃金制度を導入していないドイツに対し、社会的ダンピングであると批判していた。今回の報道を受け、フランス農業相は、ドイツの労働者だけではなく、フランスの労働者にとっても朗報であるとし、最低賃金の導入により適正な労働費の下でEU内の競争が可能となると述べている。
 また、ベルギーも、ドイツの食肉産業に従事するルーマニアからの著しく安価な派遣労働者に対し、不公平な競争を生むとして欧州委員会に対し正式に抗議を申し入れていた。最低賃金制度の導入は、こうした状況の改善に向かうと考えられている。
 一方、ドイツ最大の金融機関であるドイツ銀行の分析によると、今回の最低賃金が食肉以外の産業にも適用され、段階的に引き上げられた場合、労働コストの増加により2017年までにドイツ国内で45万から100万人分の雇用が失われるとの見方を示しており、今後のドイツ経済への影響も懸念されている。
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【宅間 淳 平成25年2月17日発】
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