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低迷からの脱却が見込まれるアルゼンチンの牛肉輸出

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 かつて世界有数であったアルゼンチンの牛肉輸出量は、フェルナンデス前政権による国内供給を優先した反輸出振興政策の下、ここ数年、全盛期の3分の1程度に低迷してきた。
 前政権時代に行われた牛肉を含む農畜産品の輸出規制については、まず、2001年末の同国における経済危機後に輸出税制度が導入され、輸出(FOB)価格に対して15%の輸出税が課されていた。また、2006年には国内需要量の確保および市場価格の安定を目的とする政策の一環として、輸出量を間接的に制限する輸出登録制度(ROE)が導入され、以後、牛肉や乳製品、穀物がその対象品目に追加されてきた。肉牛農家は、こうした政策に対する不信および2008〜2009年の深刻な干ばつにより、繁殖用雌牛などを売却し、より収益性の高い穀物・油糧種子などの栽培に転換したため、2010年以降、牛肉産業は衰退し、輸出量も20万トン強程度にとどまっていた。
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 こうした中、マクリ新政権は2015年12月の発足後、積極的に変革を進めており、長年低迷を続けてきた牛肉を含む農業セクターを取り巻く環境は劇的に変わってきている。既報の通り、同年12月14日付で輸出税の減免が発表され、12月17日に政令第133/2015号で正式に農畜産品にかかる輸出税は撤廃された。また、輸出登録制度(ROE)についても、2015年12月29日に、まず穀物について撤廃され、牛肉や乳製品についても撤廃に向けて作業中とみられる。

 一方、同国では、輸出税撤廃後、牛肉輸出意欲の増大により相対的に国内向けが不足する懸念が高まっていたが、現地報道によると、Ricardo Buryaile(リカルド・ブルジャイレ)農産業大臣は、現地のラジオ番組で「国内で牛肉が不足する事態は招かない。牛肉の輸入許可を申請する者がいれば許可を与える」と述べた。フェルナンデス前政権は、国内優先政策により市場規制を行う中、国内需要量を十分に確保するために厳しい輸出規制を行った一方、牛肉の輸入もウルグアイ産冷蔵牛肉を除きほとんど許可してこなかったが、マクリ新政権による政策転換の下、今後はウルグアイ以外の外国産牛肉も輸入される見通しである。

 自身も牧場主である同大臣は、輸出によって同国の牛肉生産量を大幅に増加させ、あわせて鶏肉と豚肉の生産量も増加させることを目標としている。2015年の同国の牛肉輸出量は、約23万トンであったが、政府は2016年の輸出量を前年比60%増にすることを目指しており、以国際牛肉市場でグルメミートに位置づけられる「高品質なアルゼンチンビーフ」の存在感が以前のように戻ることを望んでいる。
【米元 健太 平成28年1月27日発】
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