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マクリ政権、酪農補助金を新設へ(アルゼンチン)

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 アルゼンチンのマクリ大統領は2016年1月8日、乳業団体(CIL、APYMEL)と酪農生産者協同組合(JIPL)の代表者らと面会し、新たな酪農生産振興政策として、「酪農家への直接補助金の新設」などに合意した。
 具体的な内容やスケジュール等は不明であるが、直接補助金は2016年1〜3月において全ての酪農家を対象に実施される。交付額は、生乳1リットル当たり0.4アルゼンチンペソ(3.5円:1アルゼンチンペソ=8.8円)で、1戸当たり1日3000リットル分の1200ペソ(1万560円)を上限とする。これに伴い、政府の所要額は6億ペソ(約53億円)強となる見込みである。
 このほか、「最低保障乳価」については、昨年12月の変動相場制への移行に伴う実質的な通貨切り下げの影響で乳価が相対的に下落したことを受け、酪農家の収入を確保するため、業界内で統一的に取り決めることとした。
 また、「融資条件のアクセス改善」についても話し合いが行われ、政府が主要生産州政府と共に融資計画を作成し、アルゼンチン国立銀行を通じた融資条件の見直しを行うこととなった。

 今回の合意の背景として、マクリ大統領が生乳生産を早急に増やし、乳製品輸出拡大・外貨獲得につなげたい意向を有していることが挙げられる。補助金が交付されれば、特に搾乳牛200頭以下の中小規模酪農家の生産意欲を直接的に後押しするものとみられる。
 主要乳製品輸出国であるニュージーランド、米国、豪州の乳業セクターは、昨今の乳製品国際市場の価格低迷を受け、今回のアルゼンチンの決定が国際市場の更なる下げ要因になることを懸念すると見込まれる。

 マクリ大統領は同日、主要酪農生産州であるサンタフェ州ベナード・トゥエルトの酪農現場をプラットガイ大蔵・財務大臣やブルジャイレ農産業大臣などと訪れ、酪農者に対して「現政府はあなた方と成長の道を一緒に歩んでいきたい」と述べて、同国の重要産業である酪農の活性化の道筋を探ることを約束した。また、「私の夢は、ラプラタ川の恵みを受けたアルゼンチンのチーズが国際市場により多く輸出され、最も質が優れたものとして評価されることである」と述べ、酪農・乳業セクターへ高い関心を有していることがうかがえる。
酪農場を訪れたマクリ大統領(左)とブルジャイレ農産業大臣ら(写真は、MINAGRIより引用)
酪農場を訪れたマクリ大統領(左)とブルジャイレ農産業大臣ら(写真は、MINAGRIより引用)
【米元 健太 平成28年1月28日発】
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