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豪州政府、中国企業による国内最大の牧場の買収を否認へ

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 豪州のスコット・モリソン財務相は4月29日、豪州最大の牧場を有するS・キッドマン社に対する中国企業の買収について、「国益に反する」との見方を示し、否認する意向を明らかにした。
 S・キッドマン社は10万平方キロメートル以上の土地を有しており、その広さは国土面積の1.3%(総農地面積の2%)に相当する(表)。同社の買収については、昨年4月に同社の創業家が売却の方針を示して以来、中国企業2社が名乗りを上げていた。しかし、同社の所有地のうち南オーストラリア州のアナクリーク牧場は、その半分が兵器実験場の立ち入り制限区域内に位置しており、モリソン財務相は昨年の11月に、「安全保障上問題がある」ことから買収を認めなかった経緯がある。
 これを受けて買収に名乗りを挙げていた上海鵬欣集団(Shanghai Pengxin Group)傘下の大康オーストラリア(Dankang Australia)は、問題となったアナクリーク牧場を買収の対象から除外し、オーストラリア証券取引所に上場しているオーストラリア・ルーラル・キャピタルと共同で買収する案を提示した。現地報道によると買収価格として3億7000万豪ドル(315億円、1豪ドル=85円)を提示していた。
 モリソン財務相は今回の買収計画を否認する理由として、S・キッドマン社が所有する資産の大きさと重要性を考慮すると、大康オーストラリアが80%の持ち分を保有することは国益に反すること、案件の規模の大きさから、国内の購入希望者の入札を阻害していることを挙げている。
 買収には財務省とオーストラリア外資審議委員会それぞれの承認が必要であり、モリソン財務相が否認の意向を表明したことから、昨年から大きな注目を浴びた中国企業による国内最大の牧場の買収は、認められない公算が高まった。
 現地報道によると、今回の声明を受け、大康オーストラリアは今回の買収計画を撤回し、7月の総選挙後に修正案を提示する見込みとしている。
S・キッドマン社の牧場概要
【大塚 健太郎 平成28年5月9日発】
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