畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2016年 > 米国農務省、ケージフリー卵に関する新たな月報の公表を開始(米国)

米国農務省、ケージフリー卵に関する新たな月報の公表を開始(米国)

印刷ページ
 米国にある高級志向のスーパーマーケットの卵販売コーナーでは、採卵された鶏の飼養方法が異なる鶏卵が販売されている。販売されているのは、「従来からある通常の卵(以下「通常卵」という)」、「ケージフリー卵」、「フリーレンジ卵」の3種類であり、通常、この順番に価格が高くなるように設定されており、店舗によっては通常卵の品数を押し退け、ケージフリー卵の品数が最も多く存在している売り場も散見されるほど、ケージフリー卵が同国内では市民権を得つつある。

※ ケージフリー卵とは従来のケージ飼いと比較して、アニマルウェルフェアに配慮した飼養方法により飼養された鶏由来の卵のことであり、米国農務省(USDA)の承認を得るための定義としては「(鶏が)いつでも無制限の飼料と水にアクセスでき、歩きまわれる自由が与えられた鶏舎で飼養された鶏由来の卵」と定められている。なお、フリーレンジ卵とはケージフリー卵よりもさらに一段階アニマルウェルフェアに配慮した飼養方法で飼養された鶏由来の卵であり、ケージフリー卵の条件に加え、舎外(例えば隣接する牧草地)へのアクセスが確保されていることがUSDAから承認を受ける条件となっている。なお、承認を受けた場合、USDAによる年2回の生産農場への立ち入り検査を通じ、条件がクリアされているかどうかが継続的に確認される。
 
 このような状況下、USDA農業販売促進局(AMS)食肉鶏卵穀物市場ニュース(LPGMN)課は9月19日、ケージフリー卵の市場における透明性を高めることを目的とし、ケージフリー卵の価格に関する新たな月例報告書(Monthly USDA Cage-Free Shell Egg Report)を公表した。

 この新たな報告書には、契約ベースや交渉市場スポットベースの卸売価格に加え、XLおよびLサイズ(白色・褐色卵の両方)の小売価格の情報も含まれており、小売価格は同国全土の2万9000を超す数の小売販売店から集計し、とりまとめた数字とのことである。公表された主なケージフリー卵の価格は以下のとおりである。

【卸売価格】
 Lサイズ1ダース当たりの価格(白色・褐色卵混在)
 価格帯:1.35-2.40米ドル(135円-240円)
 平均価格:1.86米ドル(186円)

【小売価格】
 Lサイズ1ダース当たりの全米平均価格(白色卵)
 価格帯:1.99-3.50米ドル(199円-350円)
 平均価格:2.84米ドル(284円)

 Lサイズ1ダース当たりの全米平均価格(褐色卵)
 価格帯:1.50-5.49米ドル(150円-549円)
 平均価格:3.07米ドル(307円)
(注)1ドル=100円で換算。

 さらに、同報告書はLPGMNが集計したケージフリー鶏の群数の予測を基に、同国で生産されているケージフリー卵の生産量推計値も公表しており、このデータを基に同国の鶏卵生産量合計に対するケージフリー卵の割合を算出したところ、約10%ではないかと推察される。

【ケージフリー卵の生産量推計値】
 ケージフリー採卵鶏の推計羽数:3050万羽
 推計採卵率:75.5%
 推計生産量(週当たり):44万7757 30ダースケース(注:30ダースケースという単位であり、1ケースにその名のとおり360個の卵が入るケースを単位としたもの)

 ※ これらケージフリーに関するデータは2016年4月に集計されたとのことから、USDA公表の4月の同国における鶏卵生産量7092百万個を参考値として、鶏卵生産量全体に占めるケージフリー卵の割合を算出すると9.7%となる。

 同国におけるケージフリー卵の生産量が一定の割合を占め始めた背景には、動物愛護団体による活動の影響もさることながら、カリフォルニア州をはじめとする各州において従来のバタリーケージによる鶏の飼育を禁止する州法を制定する動きがある。加えて近年、ウォルマートやマクドナルドなどの同国を代表する大手小売チェーンや食品関連企業が、使用する鶏卵のケージフリー卵への移行を次々に表明しており、これら消費者発の時代の流れともいえる動きを生産者サイドが受け止め始めている証と言えるだろう。
海外情報図(米国:ケージフリー卵)
【調査情報部 平成28年9月29日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397