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豪州最大手乳業メーカー、南部地域の乳価の引き上げと支援措置の見直しを発表(豪州)

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 豪州最大手の酪農協系乳業メーカーであるマレーゴールバン(MG)社は10月27日、2016/17年度(7月〜翌6月)の南部地域の生産者支払乳価を、乳固形分1キログラム当たり4.86豪ドル(394円:1豪ドル=81円)へ改定し、年度見込み(注1)についても同4.95豪ドル(401円)に引き上げると発表した。10月20日に生産者支払乳価の年度見込みを同4.70豪ドル(380円)に引き下げた直後の引き上げとなった(表)。
表 MG社の乳価推移
(注1:年度末の見込み乳価)
豪州の生産者支払乳価は、年度当初は低めに設定され、その後、年度内に数回の引き上げが行われる(改定は年度当初にさかのぼって適用される)というのが一般的であることから、乳業メーカーは通常、年度末の見込み乳価を併せて提示している。
 今回の乳価引き上げは2段階式となっている。まず、10月以降出荷分について、同0.13豪ドル(11円)の引き上げを直ちに行い、その後、年度末時点のMG社への出荷者に対して、2016年7月以降の出荷量を対象として、さらに同0.13豪ドル(11円)を支払う。今回の乳価引き上げに当たり、5000万豪ドル(40億5000万円)の追加支出が発生するとしている。

 また、同社は併せて、2016年5月に実施した緊急支援措置(Milk Supply Support Package)(注2)について、以下の通り見直しを行うと発表した。
  1. 酪農家から回収する金額については、当該酪農家への支払総額を上限とし、支援金を受領した後に同社への生乳供給をやめた酪農家からの回収不能額(3180万豪ドル(25億8000万円))については、同社が負担
  2. 2016年10月〜2017年6月までの間、生産者支払乳価からの控除を停止
  3. 回収期間を6年程度に延長し、毎月の回収額を引き下げ

 現地報道によると、今回の見直しで、MG社に生乳を供給する酪農家の不公平感が解消されたとする一方で、乳価を引き上げても集乳量は回復しないといった意見もみられている。

(注2:緊急支援措置)
 緊急支援措置は、2015/16年度、2016年4月の生産者支払乳価の引き下げと併せてMG 社が発表したもので、同社が借入金を財源として、同年度の最終的な生産者支払乳価に上乗せし、実際の酪農家への支払額を乳固形分1キログラム当たり5.49豪ドル(445円)とするもの。
 総額は1.83億豪ドル(148億円)程度と見込まれていたが、同社はこの資金について、向こう3年間、生産者支払乳価から一定額を控除する形で回収するとし、支援を受けた後に同社への生乳供給をやめたため回収不能となった分については、現に供給を続ける酪農家が負担するとしていた。


 なお、同社は10月20日、2016/17年度の集乳量について、前年度比およそ20%減との見込みを発表した。集乳量の減少は、酪農家の経営中止や出荷先の変更とともに、南東部の降雨が、8月は良好だったものの、9月は過剰となったためとしている。現地報道によると、主産地のビクトリア州のうち、補助飼料給与やかんがい導入に積極的な北部地域(MG社の主要集乳地域)の生乳生産量は、8月には前年同月比17%減と大幅に減少した上、9月以降も、多雨による牧草生育不良に伴い、減少が続いている。

 一方、豪州で第2位の集乳シェアを有する豪州フォンテラ社も10月27日、MG社と同様、生産者支払乳価を、乳固形分1キログラム当たり5.00豪ドル(405円)から、同5.10豪ドル(413円)に引き上げ、2016/17年度の見込みについても、同5.20豪ドル(421円)に引き上げると発表した。乳製品国際価格の指標の一つとされるグローバル・デーリー・トレードにおける入札価格が、7月からの3カ月で26%近く上昇するなど、乳製品国際価格が回復傾向にあることが背景にあるとみられる。今後同社は、収益上の基幹部門となる、チーズや高栄養価の粉乳などの生産を強化したいとしている。
 
【竹谷 亮佑 平成28年11月4日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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