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2016年の農業所得は前年をかなり大きく下回る見込み(米国)

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 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)は11月30日、米国農業部門の2016年の所得見通しを公表した。これによると、農業現金所得(注1)は前年比14.6%減の901億米ドル(10兆1813億円:1米ドル=113円)、農業純所得(注2)は同17.2%減の669億米ドル(7兆5597億円)と見込まれている(図1)。農業純所得は、過去最高であった2013年と比べて45.9%低く、2010年以降最低の水準と予想されている。
 
  (注1)農業現金所得は、農産物の販売収入、政府補助金収入、農業関連収入(農業機械の貸し出しや観光農園などの収入)の合計(総農業現金収入)から、農業を行うための費用および借入金の利子などの現金支出額を控除したものであり、キャッシュフローの指標となる。
 
  (注2)農業純所得は、総農業現金収入に非現金収入(農家自家消費分の現金相当額など)を加えた額から、在庫相当額の変化を反映させ、現金支出額および非現金支出額(減価償却額など)を控除したもの。農業現金所得に加え、直接現金の増減として表れない収入や費用も反映している。

 
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 農業販売所得の減少には、畜産部門での収入減が大きく影響しているとみられる。USDAによると、畜産部門の収入は、生産が堅調な牛、豚、牛乳および乳製品、家きん肉などの価格が軒並み低下していることから、前年比12.3%減の1663億7900万米ドル(18兆8008億円)と見込まれている(表)。一方、作物部門は、トウモロコシや野菜の価格が下落した一方、大豆や綿花の価格が上昇したことから、前年並みの1864億9200万米ドル(21兆735億円)と見込まれている。
 こうしたことから、USDAは2016年の農業部門への政府補助金を前年比19.1%増の129億米ドル(1兆4577億円)と見込んでいる。
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 また、農業現金所得について、USDAが定めた地域区分ごとにみると、主要肉用牛生産州であるコロラド州やアリゾナ州を部分的に含むベイスンアンドレンジ(注3)(Basin and Range)や、乳牛飼養頭数が全米2位のウィスコンシン州などを含む東北部の酪農地帯であるノーザンクレセント(注4)(Northern Crescent)などでは、前年をかなり下回ると見込まれている。一方、価格が比較的堅調に推移した綿花やコメの生産が盛んなミシシッピ川下流域のミシシッピポータル(注5)(Mississippi Portal)では、前年を11.8%上回ると見込まれている。また、コーンベルトに位置するハートランド(注6)(Heartland)では、豊作であった穀物などの収入が増加することにより、前年比4.1%増と見込まれている(図2)。
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(注3)ベイスンアンドレンジ:ワシントン州東部、オレゴン州内陸部、アイダホ州北部、ネバダ州、ユタ州、モンタナ州西部、ワイオミング州西部、コロラド州西部、ニューメキシコ州西部と一部の沿岸地帯、アリゾナ州東北・西北部を含む。全米に占める割合は、農家戸数では4%であるが、非家族経営の経営体数は最大である。また、農地面積は最少の4%であり、農業生産額も4%である。肉用牛、小麦、ソルガムの生産が主である。
 
(注4)ノーザンクレセント :ミネソタ州中部・北部、ウィスコンシン州、ミシガン州、オハイオ州北部、ペンシルバニア州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州、マサチューセッツ州、バーモント州、ニューハンプシャー州、メイン州、ロードアイランド州を含む。全米の15%の農家戸数を有し、人口は最大である。また、農業生産額では15%、農地面積では9%を占める。酪農、穀物の生産が主である。
 
(注5)ミシシッピポータル :ルイジアナ州東北部・沿岸地帯、ミシシッピ州中部・北部、テネシー州西部、アーカンソー州東部を含む。農家戸数は全米の5%で、小規模農家と大規模農家が混在している。また、農業生産額は4%、農地面積は5%を占める。綿花生産、養鶏、養豚が主である。
 
(注6)ハートランド :ミネソタ州南部、アイオワ州、ネブラスカ州北東部、ミズーリ州北中部、イリノイ州、インディアナ州、ケンタッキー州西部、オハイオ州中西部を含む。農家戸数、農業生産額はそれぞれ全米の22%、23%を占め、最大である。穀物、肉用牛の生産が主である。
 なお、今回の公表には農家の負債状況などに関する報告も含まれており、2016年は所得の減少に伴い農機具などの導入が減少したことなどを受けて資産はわずかに減少する一方、堅調に推移する農地需要に伴う不動産ローンの増加を反映して負債は過去最高を記録した2015年を上回ると見込まれている。従って、資産に対する負債の割合の上昇が見込まれ、USDAは農業部門の経済的なリスクがわずかに上昇する可能性を認めつつも、農家の財務状況は依然として健全であるとしている。
 
【野田 圭介 平成28年12月2日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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