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日本産牛肉の低関税輸入枠の消化ペース早く、既に3割を消化(米国)

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 日本産農産物・食品の輸出については、政府・民間が協力して2019年までに輸出総額1兆円を目指し、日々関係者が輸出促進に尽力しているところである。

 日本産牛肉の輸出については、米国は香港に次ぐ第2位の輸出相手国であり、世界最大のGDP3億人超の人口、そして世界最大の牛肉消費国という事実を考慮すると、重要なマーケットであることは明白である。同国への牛肉輸出については、20104月に宮崎県で発生した口蹄疫の影響により、20104月から20128月まで輸出が停止していた時期があったものの、近年の関係者による懸命のプロモーション活動やビジネスマッチングの結果、2016年には過去最高の244.6トンを記録した。ただ、今後このまま順風満帆にこの数字が増え続けるのかという問いについては、さまざまな障害が待ち受けていると回答せざるを得ず、その一つが関税割当数量の問題である。

 同国の牛肉輸入については、WTOウルグアイラウンド合意に基づく関税割当制をとっており、日本向けには200トンの低関税枠が設定されているが、昨年1110日に、この数量全てを史上初めて消化した(表1, 2)。枠内では1キログラム当たり4.4セントという税率にすればわずか0.06%(2016年平均FOB価格から算出)であるが、枠外税率は26.4%が課せられることとなり、この200トンが心理的なボーダーラインとなって、輸出量が頭打ちという状況が起きてもおかしくない税率差である。ただし、これは裏を返せば輸出促進をこれまでに進めてきたからこそ生じた悩みの種でもあり、今年についてはさらに早い時期に200トンを超過するのではないかと関係者の間でも考えられている。

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 このような状況の中、米国税関国境保護局(Customs and Border Protection)が毎週公表している313日付の資料によると、通関量は61.8トンと枠消化率にして30.9%であり、この時期で枠の3割を既に消化した結果となった。このままのペースが続くのかどうかは不明であるが、よほどのことが無い限り、今年は昨年よりも早期に200トンに到達すると考えるのが普通であろう。

 なお、前述した通り、昨年の日本からの米国向け牛肉輸出量合計は244.6トンであり、輸送に要する日数や通関のタイミングなどは考慮すべきではあるが、関係者からの聞き取りによると、1110日以降に26.4%の関税を支払って通関した事例は相当数あったことが伺える。ただし、同国でも最需要期の年末であったからこそ(関税分を)価格に転嫁してうまく販売することができたという声がある一方で、200トン超過後は全く輸入しなかったといった声も聞かれるように、この200トン超過のタイミングが前倒しされた場合、果たして同じような状況が生まれるのかどうかは定かではない。

【調査情報部 平成29年3月14日発】
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