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牛肉の短期的需給見通しを公表(EU)

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 欧州委員会は2017年7月12日、農産物の短期的需給見通しを公表した。このうち2017年の牛肉需給見通しの概要を以下のとおり紹介する。
 

牛肉生産量は4年連続で増加、牛飼養頭数は減少

 2016年12月の牛飼養頭数調査によると、総飼養頭数は前年より7万4000頭減少し、8908万頭となった。このうち、未経産牛(2才以上)は前年より3万6000頭増えた。一方、経産牛は多くの加盟国で搾乳牛の淘汰が進められたことから同5万4000頭減となったが、これは、経産牛の全飼養頭数3585万頭の0.2%にすぎない。主要国で乳用経産牛の頭数が増加したのはアイルランド(4.4%増)とオランダ(4.5%増)であり、肉用経産牛の頭数が増加したのはスペイン(1.9%増)である。
牛飼養頭数
 2017年第1四半期(1〜3月)の牛肉生産量は、前年同期並み(0.2%増)であった。これはと畜頭数はわずかに増えた(0.6%増)ものの、枝肉重量の大きい雄牛のと畜頭数が減少(2.2%減)したからである。また、この期間における経産牛と畜頭数は、同0.8%増と2016年通年の増加率(6.3%増)から減少した。経産牛と畜頭数は、ベルギー、ギリシア、オランダ、スウェーデンを除いて減少した。
 2017年の年間の牛肉生産量は、前年比1.2%増と4年連続で増加すると見られる。しかし、増加率は2016年の2.3%より減少し、2018年には1.7%減と減少に転じると予測されている。
 

堅調な牛肉輸出、輸入は減少

 2017年1〜4月の牛肉輸出量は、前年同期比17.1%増の23万8000トンとなり、この5年間で最大となった。これは、香港向けが同58.2%増と大きく伸びたことが大きい。また、フィリピン向けの輸出量は同2倍以上となるなど、低級部位の輸出先が増えたことも全体の輸出量を拡大させることとなった。
 また、上位17カ国以下の国向けの輸出量が同25.9%増となるなど、輸出先の多角化が進み、かつ輸出量も拡大している。
 2017年通年で前年比10.0%増と見込まれている。強い輸出需要によって、域内価格も引き上げられると考えられている。
 
 一方、2017年1〜4月の牛肉輸入量は、前年同期比6.4%減の10万2000トンとなった。これは、ブラジルからの輸入が同28.9%減となった影響が大きく、同国の通貨レアル高と食肉スキャンダルが主な要因として挙げられる。食肉スキャンダルは、同国の20の食肉工場で衛生検査の不正に関する司法当局の捜査が行われたものであり、世界的な食肉輸出国である同国の地位を低下させた。
 ブラジル産の減少分は、アルゼンチン、ウルグアイ、米国がそれぞれ同49.1%増、同26.8%増、同43.3%増と伸ばしたことにより、その一部を補った。米国産は、現地での牛肉価格の高騰とドル高にもかかわらず好調である。
 豪州産については、肉牛の牛群再構築により同国の牛肉生産が少しており、同27.4%減と前年の10.2%減からさらに大きく減少している。
 2017年通年では、年末までにブラジルが回復したとしても、わずかな増加(1.0%増)にとどまるものと見込まれている。
 これは、域内の供給が十分にあることや、アジアの牛肉需要が引き続き旺盛であることから、輸出国にとってEU向け輸出のメリットが小さいからである。
 

肉牛価格は上昇へ

 成牛雄価格は2016年末に回復し、2017年に入ってからは100キログラム当たり375ユーロ(4万9125円)前後で安定して推移している。
 経産牛価格は、2016年は同270ユーロ(3万5370円)前後で低位安定していたが、同年末から上昇し、2017年においても引き続き上昇している。これは、2017年第1四半期の経産牛と畜頭数の減少によるものと考えられる。
 2017年通年では、輸出が増えて生産が安定していることから、下げ圧力は緩和されると期待される。
 牛肉消費量は、2016年前年比は2.3%増となった。2017年は0.6%増の緩やかな増加にとどまるものの引き続き増加すると見られているが、2018年は、EU市場への供給量が減少することから、減少に転じると見込まれる。
 
【調査情報部 平成29年7月21日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527