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欧州の製菓業界、日EU・EPAにおける原産地規則に関する声明を発表

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最終更新日:2018年1月26日

 欧州チョコレート・ビスケット・砂糖菓子類協会(CAOBISCO)(注1)は2017年12月13日、日EU経済連携協定(EPA)の交渉妥結を踏まえ、原産地規則に関する懸念について声明を発表した。
 CAOBISCOは、菓子類に含まれる砂糖など域外で生産された原料(非原産材料)の重量を証明できないため、日EU・EPAの市場アクセスの恩恵を欧州の菓子産業が受けられない可能性があると懸念している。
 CAOBISCOによると、自由貿易協定(FTA)における原産地規則については、従前、最終製品(産品)の価額に占める非原産砂糖の割合が30%以下であれば関税引き下げの対象となる付加価値基準(注2)が適用されてきたが、シンガポールやベトナムとのFTAなど以降、非原産原料を制限するため、産品に含まれる原材料の重量の割合による重量基準が適用されている。CAOBISCOは、これにより、欧州産の菓子類の輸出、菓子産業の成長および雇用の拡大が多いに阻害され、高付加価値製品の生産が縮小するだけでなく、各FTAの要件に適合させるための管理上の負担が増大するとしている。また、非原産砂糖の需要は今後とも見込まれるにもかかわらず、その利用が制限されると非難している(注3)
  CAOBISCOの傘下企業は、生産割当の廃止に伴い砂糖の域内生産量が増加することを歓迎しており、原料としてEU産砂糖を優先して使用したいとしている。しかし、農産物は国際的に取引されており、納品業者申告書なしには砂糖の原産国を証明することが出来ないことから、納品業者と製菓業者には、ともに「会計の分離」(注4)の適用が認められなければならない。そのためには、EU関税当局は、全ての特恵輸出市場に対する申告書の処理について、正確な手続きを適切に行う必要があるとしている。

注1:欧州のチョコレート、ビスケットおよび菓子類製造事業(主に中小企業)で構成される団体。CAOBISCOによると、傘下企業の菓子類の年間生産量は1200万トンで、このうち200万トンがEU域外に輸出され、雇用者は32万人以上。
注2:産品の生産工程において付加される価値(原産材料、労務費、間接費、利益などの価値)が、一定の要件を満たした場合、その産品は当該国の原産品であるとする基準。
注3:日EU・EPAの原産地規則では、産品の重量に占める非原産砂糖の割合については、砂糖菓子が40%未満、チョコレートが同30%未満と規定されている。CAOBISCOは、傘下の菓子製造事業者の産品には、40%以上の砂糖が含まれているものが8割に上るため、従来の付加価値基準が適用されれば、全産品が関税引き下げの恩恵を受けられるのに対し、この8割が恩恵を享受できないおそれがあると試算している。
注4:東京税関業務部総括原産地調査官関税局業務課監修「EPA原産地規則マニュアル(平成29年7月)」では、「在庫において混在している締約国の原産材料及び非原産材料から成る代替性のある材料が産品の生産に使用される場合において、当該産品が当該締約国の原産品であるか否かを決定するときは、当該材料が原産材料か非原産材料であるかについては、当該締約国において、一般的に認められている会計原則に基づく在庫管理方式に従って決定することができる」と記載されている。


【丸吉 裕子 平成30年1月26日発】
このページに掲載されている情報の発信元
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