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欧州委員会、3種類のネオニコチノイド系農薬の屋外での使用禁止を決定(EU)

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最終更新日:2018年5月18日

 欧州委員会は2018年4月27日、ネオニコチノイドと呼ばれる農薬のうち、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムを主成分とする薬剤(以下「対象薬剤」という)について、すべての作物への使用を禁止すると公表した。同委員会は、近くEU規則の改正案を採択する見通し。周知期間などを考慮すると、使用が禁止されるのは早くとも今年の秋以降になるとみられる。

 今回の規則は、屋外での使用を禁止するものであり、温室内での使用や、対象薬剤以外のネオニコチノイドの使用は引き続き認められる。

1.ネオニコチノイドとは

 ネオニコチノイドは、ニコチンに似た化学構造を有する各種薬剤の総称で、根から吸収され植物全体に浸透する特性から、種子にコーティングしたり、種子をまく溝の中に散布したりするなどの方法で施用される()。害虫に直接散布するあるいは葉面散布する農薬と比べ、効果に持続性があり散布回数が減らせるなどの利点から、世界で広く使用されている。
 
 EUでは、今回禁止対象となったものを含め七つの薬剤が認可されているが、近年、巣からミツバチ(働き蜂)が消える現象(注)がEU域内で多発し、その要因の一つとしてかねてから関連が疑われていた。このため、欧州委員会は、2013年から麦類やミツバチを引きつけやすい菜種などの作物に限って対象薬剤の使用を暫定的に禁止するとともに、欧州食品安全機関(EFSA)に対しリスクアセスメント(影響の分析・評価)を実施するよう求めていた。

(注)蜂群崩壊症候群と呼ばれる現象。ミツバチの方向感覚などに何らかの障害が起き、巣に戻れなくなると考えられている。ミツバチは多くの植物の受粉に関わるため、その個体数の減少は養蜂業のみならず、農業や生態系に与える影響が大きい。
昆虫は、薬剤を含んだ葉を食べたり、花粉や汁を吸ったりすることで死に至る。
昆虫は、薬剤を含んだ葉を食べたり、花粉や汁を吸ったりすることで死に至る。

2.ミツバチへの影響評価の結果

 EFSAは、約4年にわたり慎重に検証を重ね、今年2月にまとめた報告書で「蜂の種類、農薬の使用方法、蜂が農薬にさらされる経路によって結果にばらつきがあるものの、全体としてクロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムを主成分とする殺虫剤の屋外での使用は、野生種を含めミツバチへのマイナスの影響を排除できない」と結論付けた。今回の欧州委員会の決定は、この結果を受けたものである。

 また、欧州司法裁判所は2018年5月17日、欧州委員会が決定した2013年に一部の作物に限った暫定的な使用禁止の措置を支持するとの判断を示し、規制の撤回を求めた農薬メーカーの訴えを退けた。現地報道によると、同裁判所は、環境影響の発生の仕組みや影響の程度などについて科学的な不確実性が存在する場合でも、規制措置を可能にする「予防原則」を厳格に適用し、経済的利益より環境の保護を優先する判断を下した。

3.てん菜生産への影響〜業界の反応〜

 ネオニコチノイドは、てん菜生産においてウイルス性の萎黄病(写真)を媒介する害虫を防除する最も有効な薬剤とされている。このため、農業団体や農薬メーカーは、「花が咲く前に収穫するてん菜はミツバチを引きつけるような作物ではない」などと主張し、てん菜への使用を禁止しないよう働きかけてきた。

 欧州てん菜生産者連盟は、今回の決定を受けて直ちに声明を発表し、「科学的根拠に基づくものではない上、てん菜・砂糖の持続可能な生産に大きな打撃となる」と強く抗議した。また、対象薬剤に代わる有効な薬剤が存在しない現状から、「(代替薬剤の研究開発への支援を含め)影響を緩和する対策を講じるよう要請する」と付け加えた。

 一方、現地報道によると、ネオニコチノイドの使用禁止を求めてきた環境保護団体は「2013年に使用が禁止された菜種の現在の収量は、当時と比べ増加している」と語り、てん菜生産に影響しない可能性を示唆する声もある。

 EU最大のてん菜生産国であるフランスでは、2016年7月にネオニコチノイドの使用を全面的に禁止する法律がすでに成立しており、2018年9月から施行される予定である。一見、欧州委員会よりも厳しい内容に見えるが、例外規定により2020年7月1日までの使用が認められている。しかし、今回の決定により対象薬剤についてはこの例外規定が適用されないことから、同国の生産者団体は、「ネオニコチノイドの使用が禁止されれば、昆虫を媒介するウイルス性の萎黄病に感染するリスクが高まり、てん菜の収量が平均で12%減少するだろう。てん菜生産に壊滅的な影響を与える決定だ」と反発している。
てん菜の萎黄症状
【坂上 大樹 平成30年10月26日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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