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食品医薬品局が薬剤耐性5カ年計画を発表(米国)

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 2018年9月14日、米国食品医薬品局(FDA)の動物用医薬品センター(CVM)は、獣医療とヒトの医療の双方の分野で、近年問題となっている薬剤耐性(AMR)に対抗するため、「Supporting Antimicrobial Stewardship in Veterinary Settings(獣医療における抗菌薬管理支援)」と題された5カ年計画を公表した。本計画に基づき、CVMは2019年からの3年間で、動物用製剤として承認され、獣医師の監視下での使用に限り家畜の飼料や飲用水に添加される、特定の使用期間が定められていない医学的に重要なすべての抗菌薬のリストを公表する予定である。また、関係者からの意見を広く求め、2022年からの2年間で、適切な使用期間が確実に記載されるための最終的な計画を発表する予定である。
 2017年1月、FDAは薬剤耐性のガイドラインを施行した。これは薬剤耐性に対する取り組みの一つであり、農家が抗菌薬を購入するには、獣医師が発行した処方箋や獣医飼料指示書(Veterinary Feed Directive: VFD)が必要であり、抗菌薬の使用については、獣医師の管理下で行うこととされた。これにより、成長促進を目的とする抗菌薬の使用は不可となった。
 今回公表された計画には、(1)抗菌薬の使用と抗菌薬管理の原則との整合(2)獣医師の管理下での抗菌薬適正使用支援の促進(3)家畜における抗菌薬使用および耐性獲得のモニタリングの3つの行動目標がある。この行動目標に32の具体的な行動計画が示されている。行動計画には具体的な期限が定められていないが、2019年から2021年の間に完了予定のものと、さらに先の2022年から2023年の間に完了予定のものの2グループに分かれている。
5カ年計画への反応
 ゴッドリーブFDA長官が本件に関して出した声明の概要は次の通りである。
 「本計画は重大な公衆衛生上の進歩となるが、FDAだけでは薬剤耐性と戦うことはできない。FDA以外の政府当局や多くの関係者との協力を得て、この取り組みを進めることができる。今回の新しい包括的な計画は、1つのプラットフォームを拠点とし、そこから4つの主要分野に対応することを目指している。
 1つ目は、耐性菌に有効かつ安全な堅実な治療法を確保するために、製品開発を促進すること。
 2つ目は、抗菌薬の適切な管理を推進すること。これは、獣医療とヒトの医療の衛生管理を行うことで、耐性菌の出現頻度を低下させ、有効な治療法を維持することに貢献する。
 3つ目は、抗菌薬の使用に関するサーベイランスを確立し、病原体が薬剤耐性を獲得するメカニズムを特定すること。
 4つ目は、すべての関係者が薬剤耐性に関する重要な情報を得るための科学に基づくアプローチを進めること。これには、抗菌薬に依らない、例えばバクテリオファージや便微生物移植、生のバイオ医薬品(biotherapeutic products)といった代替治療法の研究開発が含まれる。」

 全米豚肉生産者協議会(NPPC)などの業界団体は、生産者による家畜の健康を守るための抗菌薬の使用と抗菌薬の慎重な使用を確実にすることのバランスを認識しているゴットリーブ長官の発言を評価している。
【調査情報部 平成30年10月10日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397