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豪州農業・水資源省、酪農業界の行動規範を法制化へ

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 豪州農業・水資源省は、1月15日、豪州の酪農業界における法的拘束力を持つ行動規範(Dairy code of conduct)の策定に向けて、草案を発表した。
 行動規範を法制化する背景には、2015/16年度にマレーゴールバン社(現在は、サプートオーストラリア社に買収)と豪州フォンテラ社が、年度終了2カ月前の4月に、年度当初に遡って生産者支払乳価を大幅に引き下げたことから、多くの酪農家は十分な収入を得ることが出来ず、資金繰りが苦しくなった事態がある。これを受け、2017年6月には、酪農業界団体主導で、「豪州における酪農家と加工業者間の契約に関する実施規約(以下「実施規約」という)」を策定したものの、法的な拘束力はないことから、法的拘束力をもつ規則の制定を求める声が高まっていた。
 行動規範の草案のうち、酪農業界の商習慣に大きな影響を与えるものとして挙げられていた内容は次のとおり。
  • 酪農家と乳業メーカー間で作成する合意書に関して、最低生産者支払乳価、生産者支払乳価の算定方法、合意書の対象期間などの内容を含む合意書の基本フォームを、各乳業メーカーが毎年公表
  • 合意書を乳業メーカーが一方的に変更することの禁止
  • 乳業メーカーが、過去に遡って生産者乳価を引き下げることの禁止
  • 酪農家が出荷先の乳業メーカーを変更する際に、乳業メーカーが不公平な生産者支払乳価を設定することの禁止
  • 酪農家と乳業メーカー間の紛争調停方法

 豪州農業・水資源省のデビット・リトルプラウド大臣は、「行動規範は、酪農家と乳業メーカー間のパワーバランスを適正にし、酪農家の立場をより強くすることにつながる」としている。
 また、豪州農業・水資源省は、行動規範の草案とともに、規制による影響評価書を発表した。その中では、(1)現在の任意の実施規約を維持する場合、(2)行動規範を任意参加とした場合、(3)小規模乳業メーカーを対象外して行動規範を法制化する場合、(4)すべての乳業メーカーを対象に法制化する場合の4つに分けて、それぞれのメリットとデメリットを挙げている。法制化しない場合には、実施規約や行動規範を実態に合わせて柔軟に変更できるメリットがあるものの、参加しない乳業メーカーが出てくるデメリットがあるとしている。また、すべての乳業メーカーを対象に法制化した場合には、行動規範に対応するための事務的負担などが大きくなり、特に小規模乳業メーカーには大きな負担になるデメリットがあるとしている。
 行動規範の草案のいくつかの条項には、複数の案が示されており、2月15日まで実施されるパブリックコメントや、主要な酪農生産地域3カ所で実施される意見聴取会を通じて、行動規範の内容を固めていくものとみられる。

(注)「豪州における酪農家と加工業者間の契約に関する実施規約」の策定については、2017年7月5日付け海外情報「豪州酪農界、生乳供給契約に関する規約を策定」https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_001986.htmlを参照されたい。



 
【大塚 健太郎 平成31年1月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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