[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ
alic 独立行政法人農畜産業振興機構
でん粉 でん粉分野の各種業務の情報、情報誌「でん粉情報」の記事、統計資料など

ホーム > でん粉 > でん粉のあれこれ > でん粉原料作物の特性について

でん粉原料作物の特性について

印刷ページ

最終更新日:2010年5月10日

でん粉原料作物の特性について

2010年3月

島根大学生物資源科学部 准教授 小林 和広

1.植物とでん粉

 植物は光合成して作った栄養をでん粉に変えて蓄積することが一般的です。でん粉の役割はそれ以外にもいくつか知られています。
 
 例えば、植物の茎は重力の反対方向(すなわち上)へ、根は重力の方向(すなわち下)へ伸びる性質(重力屈性といいます)があり、その重力を感知するために細胞の中で水よりも重いでん粉を「おもし」として利用していると考えられています。
 

2.でん粉を採取する植物の今昔

 でん粉は、植物にとって一般的な貯蔵物質です。しかし、人間の利用のためにでん粉を採取する植物は容易に、多量に、かつ質のよいでん粉が採取されるものが利用されます。1873年に出版された葛粉一覧(丹波修治職、中島仰山画)にクズ(葛)、ワラビ(蕨)、カタクリ(片栗)の3種が紹介され、この3つが日本における当時の代表的なでん粉(当時はくずこ(葛粉)と呼びました)を採取する植物でした。
 
 でん粉が工業的に大量生産されるようになると、生産量が多く、安価なとうもろこし、ばれいしょ(じゃがいも)、かんしょ(さつまいも)などの食用作物がでん粉原料作物として利用されるようになりました。
 

3.でん粉の蓄積場所

 植物によって異なりますが、種子、茎、根などにいろいろな部位にでん粉を蓄積します。バナナ、カボチャ、キウイなど若い果肉に蓄積するもの、ソテツ、サゴヤシなど茎や幹、葉柄などに蓄積するものもあります。
 
 イネの場合、開花以前は茎、葉の一部である葉鞘や根にでん粉を蓄積し、開花すると蓄積していたでん粉を種子へ運びます。イネが冷害などの異常気象で実らなかったときは、わらに蓄積されたでん粉を求めて、わらを食用に供しましたが、わらからでん粉を採取する方法も記録されています。

4.でん粉の採取と用途

 でん粉は細胞の中にあるので、でん粉を含む植物材料をよく磨砕し、でん粉が水より重いことを利用して、水の中に沈殿させて分離させます。とうもろこし、イネなどのイネ科作物の種子ではでん粉とタンパク質がくっついているので何らかの方法でこれを分離する必要もあります。
 
 でん粉の用途として、大きく3つあげられます。1つめはでん粉の高分子としての性質を利用するものです。片栗粉やコーンスターチのように料理としての利用も多いですが、工業的にも重要なものです。2つめは、でん粉を分解して得られる物質(デキストリン、異性化糖など)を利用するものです。3つめは、でん粉を分解して得られる糖を発酵してアルコールを作るものです。
 
 近年では、アメリカ合衆国を中心にコーンスターチの相当量が自動車の燃料となるエタノールを作るために使用されています。アメリカ合衆国における2006年のとうもろこし生産量は、2億1800万トン、そのうち4分の1程度の5500万トンがエタノールの生産に利用されました。2005年の日本のとうもろこしの輸入量が1700万トンですから、エタノールに利用されたとうもろこしの量に驚かされます。
 
 後者の2つの用途では、でん粉を分解あるいは発酵して利用するために、でん粉自体の特性はあまり重要ではなく、安価で多量に生産されるコーンスターチからの利用が最も多くなっています。
 

5.でん粉原料作物によるでん粉の性質の違い

 でん粉の高分子としての性質を利用する場合は、でん粉原料作物によるでん粉の性質の違いが重要となります。でん粉の性質は植物によって異なるだけでなく、同じ植物でもイネなどでは粳(うるち)と糯(もち)の区別があります。また同じ植物でも部位によって蓄積したでん粉の性質は異なり、例えば、ハスは地下茎(レンコン)と種子(はす実)にそれぞれでん粉を蓄えますが、その性質はかなり違います。
 
 一般的な傾向としては、イネ科穀類の種子に蓄積されるでん粉は糊化温度が高く、糊は安定した低い粘度を示し、でん粉の粒の大きさは小さく、角張っています。ばれいしょはその反対に糊化温度が低く、最高粘度が高く、でん粉の粒は大きく、丸い楕円体です。
 
 このようなでん粉の性質の違いを簡単に示したものがでん粉尺と呼ばれるものです。でん粉尺では、コーンスターチ、米、小麦、タピオカ、かんしょ、ばれいしょの順に並びます。近縁の植物のでん粉は似ていることが多いですが、そうでないこともあります。
 
 でん粉はアミロースとアミロペクチンの2つにわけることができます。米の場合、うるち米はアミロースが15〜30%ありますが、もち米はアミロペクチンがほぼ100%です。
 

(1) 米でん粉

 米でん粉は粒が非常に小さいのが特徴で、綿布の模様の染め抜き、化粧品などに利用されます。米自体がとうもろこしや小麦よりも高価に取引され、米でん粉を取り出すコストも高いので米でん粉の特性を生かす用途で利用することがほとんどです。

(2) 小麦でん粉

 小麦でん粉は、加熱温度、時間に対して比較的均一な粘度を保持します。小麦でん粉は、粒子の大きさによって2〜10μm程度の小粒子と15〜40μm程度の大粒子にわりとはっきり分けられる特性があり、比重差によって分離すると、大粒子の方が糊化温度が低く、粘度が高い性質があります。水産練製品や繊維用のりなどに利用されます。かまぼこには、関東では弾力性を持たせるためにばれいしょでん紛が、関西ではソフト感のある風味を引き出すために小麦でん粉がよく使われるそうです。
 
 変わったところでは小麦でん粉を数年以上発酵、熟成させた古糊(ふるのり)というものが掛け軸など日本の絵画の修復などに利用されます。

(3) コーンスターチ

 とうもろこしのでん粉であるコーンスターチの粒径は、6〜25μmでよくそろっています。粒径は米でん粉より大きく、小麦やばれいしょでん粉より小さくなっています。糊化温度はばれいしょでん粉より高く、糊化後の粘性は安定しています。コーンスターチを酸化処理した化工でん粉は、水に溶解しやすく、粘度が安定し、乾燥が早い特性があります。フィルム性がよいという特性もあります。安価で品質も安定しているので、糖化用、製紙、段ボール、ビールなど、化工でん粉(酸化でん粉など)に使用されます。
 
 アメリカ合衆国の大規模工場では湿式製粉(ウエットミリング)によってでん粉、油脂(コーン油)、タンパク質(コーングルテンミールという飼料)などに分けるだけでなく、でん粉を糖化し、自動車燃料であるエタノールや異性化糖などの糖化製品なども作っています。世界で生産されるでん粉のおよそ80%程度は、とうもろこしから作られると見積もられています。
 
 とうもろこしは、さかんに品種の改良が進められています。でん粉の性質の異なるさまざまな品種も作られています。例えば、一般的なとうもろこしはアミロース27%、アミロペクチン73%ですが、アミロペクチンがほぼ100%のワキシー種やアミロースが50%以上の高アミロース種もあります。
 

(4) ばれいしょでん粉

 糊化温度が低く、最高粘度が高く、市販のでん粉ではもっとも粒が大きいのが特徴です。保水性が大きく、白度も高いです。
 
 家庭では、片栗粉の名称で調理によく使われます。ほかに水産練製品(ちくわ、かまぼこ、魚肉ソーセージなど)、化工でん粉(アルファでん粉、養鰻飼料、料理の増粘剤など)に利用されます。でん粉を採取するための栽培は、日本では北海道に限定されます。ばれいしょのでん粉は、地下部に形成される塊茎に蓄積されます。

(5) かんしょでん粉

 かんしょでん粉は、粘度や糊の性状においてばれいしょでん粉と穀類でん粉の間の性質があります。日本では大部分が糖化用に消費され、はるさめの原料ともなります。安価なコーンスターチとの競争のために、1960年代にかんしょでん粉の生産は大きく減少してしまいました。
 
 ばれいしょのでん粉は茎が変化した塊茎に蓄積するのに対して、かんしょでは根が変化した塊根に蓄積されます。

(6) タピオカ(キャッサバでん粉)

 キャッサバの塊根から得られるでん粉を、タピオカと呼びます。アミロース含量が低いので、粘着性、接着性に優れています。化工でん紛(デキストリン、接着剤、製紙用など)、不燃建材、仕上げのり用などに利用されます。さらに価格が安いことから、調味料用、糖化用などを通して、加工貿易用原料として多く使用されます。
 
 キャッサバはトウダイグサ科の作物で、原産地は中米から南米北部であると考えられています。しかし、野生種はみつかっていません。塊根にでん粉を蓄積します。最適生育温度は25〜35℃と高いので熱帯でしか栽培できませんが、環境適応力が高く、肥沃でないあるいは降雨が不安定な土地でも栽培できます。病気や害虫にも強い特性をもちます。塊根には有毒物質である青酸配糖体が含まれますが、加熱、水洗、乾燥によってこの毒を除くことができます。
 

(7) サゴでん粉

 アミロース含量が高いので、糊化した場合に老化が早いという欠点があります。一般に精製不十分なため、不純物が多いです。化工でん粉(可溶性でん粉、麺打ち粉など)に利用されます。
 
 サゴヤシは、苗を植え付けてから、10年近くかけて、樹幹に1本あたり100kgを超える多量のでん粉を蓄積します。開花すると、この蓄積したでん粉を使って、種子を作りますので、栽培の場合は開花前に収穫して、樹幹に蓄積したでん粉を採取します。インドネシア東部のニューギニア島などが原産地とされます。熱帯の低湿地に生育できること、耐塩性が強いことなどが特徴です。
 

参考文献

澱粉科学ハンドブック 二國二郎監修 朝倉書店
デンプンと植物<各種植物澱粉の比較> 藤本滋生 葦書房
工芸作物学 西川五郎 農業図書
トウモロコシ―歴史・文化、特性・栽培、加工・利用― 戸澤英男 農山漁村文化協会
コーン製品の知識 菊池一徳 幸書房
いも・デンプンに関する資料(平成21年2月) 農林水産省生産局生産流通振興課
アフリカのイモ類―キャッサバ・ヤムイモ― 社団法人国際農林業協力・交流協会
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713



このページのトップへ

Copyright 2016 Agriculture & Livestock Industries Corporation All rights Reserved.