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中国のでん粉製品貿易の動向と関連政策の概要

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最終更新日:2011年2月2日

中国のでん粉製品貿易の動向と関連政策の概要

2011年2月

調査情報部調査課

【要約】
 
 中国はコーンスターチの純輸出国であるものの、天然でん粉全体で見れば純輸入国となっている。でん粉需要が増加していることから輸入量は増加傾向で推移しており、2009年の輸入量は前年比80.9%増の87万2000トンとなった。
 
 中国のでん粉関連政策のうち、最も注目すべきは2007年9月に通知された「とうもろこし高度加工業の健全発展に関する指導意見」である。この中では、食料安全保障に対する高い関心を反映し、とうもろこしの工業仕向けに上限(国内消費量の26%)が設定されるとともに、でん粉由来製品などの原料を海外から調達することが奨励されている。このため、同国においては、でん粉由来製品の需要が増加した際は、その原料を海外に依存する構造となっている。
 

1.はじめに

 中国におけるでん粉需要は、経済の発展により増加しており、それに伴い同国の国際市場における輸入国としての存在感も増しているところである。前月号では中国におけるでん粉製品の生産と消費動向について紹介したが、本稿ではでん粉製品の貿易の動向およびでん粉関連政策の概要を報告する。
 
 

2.中国のでん粉製品貿易

(1)でん粉製品輸出入の動向

 中国は米国に次ぐ世界第2位のとうもろこし生産国で、コーンスターチについては純輸出国となっているものの、天然でん粉全体で見れば純輸入国であり、近年その輸入量は増加傾向にある。この背景には、政府が食料安全保障のため、国内産の穀物はできる限り食用に充て、でん粉由来製品などの工業品(と中国では分類されている)の原料は海外産で対応する―という方針を推進してきたことが挙げられる。
 
(a)コーンスターチ
 とうもろこし生産は、2004年から急激な増加を見せ、2009年の生産量は2004年比25.9%増の1億6400万トンとなった。これに伴い、コーンスターチの輸出量も、2006年から2008年にかけて大幅に増加した。しかしながら、とうもろこしの高度加工注を規制する政策(詳細は後述)の影響などによりコーンスターチ関連産業の成長が抑制されたことから、2009年の輸出量は前年比34.8%減の29万トンとなった。2010年についてはとうもろこしが豊作であったことから、1〜11月の累計で前年同期比23.5%増の33万1000トンとなっている。
 
 
注 とうもろこしの高度加工
 中国では、とうもろこしやその一次加工製品(コーンスターチなど)を、物理的または化学的な処理により加工することは、「とうもろこしの高度加工(deep processing)」と位置付けられている。
 対象となる主要な製品としては、発酵製品、でん粉糖、糖アルコール、アルコール(飲料用、工業用)などが挙げられる
 
 
 
 
(b)タピオカでん粉
 中国は世界最大のタピオカでん粉輸入国であり、その量は年間約70〜80万トンに上る。2009年の輸入量は前年比79.7%増の83万2000トンであったが、2010年(1〜11月)は前年同期比16.2%減の64万7000トンとなっている。2010年に輸入量が減少した要因は、主要輸入先であるタイで発生した害虫被害による価格の高騰である。
 
 なお、ASEANとの自由貿易協定(FTA)により、ASEAN産のタピオカでん粉輸入は無税となっている。
 中国におけるタピオカでん粉の主な用途は製紙業である。また、キャッサバチップ(キャッサバを粉砕し乾燥させたもの)もタイから輸入しており、これらは飲料用、工業用のアルコール原料として利用されている。
 
 
(c)ばれいしょでん粉
 ばれいしょでん粉の輸入量は、2009年産のばれいしょが不作であったことから、2009年は前年比182.1%増となる3万5000トン、2010年も1〜11月で前年同期の約5倍となる13万2000トンと大幅に増加傾向している。主な輸入先は、オランダ、ドイツ、デンマークなどのEU諸国となっており、これらが全体に占める割合は9割超である。
 
 中国政府は、2007年2月から5年間、EU産ばれいしょでん粉に対して17〜35%のアンチダンピング税を課しているにもかかわらず輸入量が増加している。このため、商務部は、2008年半ば以降EU産ばれいしょでん粉がアンチダンピング税率を超えてダンピングされているとする業界団体(中国でん粉産業協会(China’s Starch Industry Association))などの主張を受け、2009年4月1日から2010年3月31日の間に中間見直しを実施するとしたものの、現在のところその結果については公にされていない。
 
 
 
(d)でん粉由来製品
 コーンスターチを原料とするでん粉由来製品の輸出は、急激な増産に伴い増加傾向で推移している。2004年の主なでん粉由来製品の輸出量は、7万6200トン(ソルビトール4000トン、リジン1万9400トン、グルタミン酸ナトリウム(MSG)3万3400トン、有機化合物1万9400トン)であったが、2009年には28万4000トン(ソルビトール5万トン、リジン9500トン、MSG20万5700トン、有機化合物1万8700トン)と5年間で急増した。
 
 また、2010年(1〜11月)についても、ソルビトールが前年同期比33.2%増の6万1500トン、リジンが同295.9%増の2万4500トン、MSGが同14.8%減の16万4800トン、有機化合物が同22.7%増の2万500トンとMSGを除き、前年より増加している。
 
 
 

(2)関税制度

(a)輸入関税
 でん粉製品に関する関税率は、小麦でん粉とコーンスターチについては、2001年のWTO加盟時に設定された20%が据え置かれている。また、ばれいしょでん粉およびタピオカでん粉については、WTO加盟当初はそれぞれ18%、16%となっていたが、2004年に15%、10%まで引き下げられた。イヌリンについても、2004年に当初の26%から20%まで引き下げられた。
 
 でん粉由来製品については、天然でん粉よりも低関税となっている。ソルビトール、リジンおよび有機化合物の関税率は、WTO加盟以来、それぞれ14%、5%、6%となっている。MSGは、2005年に20%から10%に引き下げられた。また、デキストリンおよびその他の化工でん粉については、2002年に14.7%から12%に引き下げられた。現在の関税率は表1のとおりである。
 
 
 
(b)自由貿易協定(FTA)の状況
 中国が締結しているFTAにおいて、でん粉関連で最も重要であるのは、ASEANとのものである。中国は2002年にASEAN10カ国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)とのFTAを締結し、2010年には、6カ国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、シンガポール)について、9割以上の製品(でん粉製品を含む)が無税となった。残り4カ国も、2015年までに9割以上の製品について関税が完全に撤廃される予定である。
 
 ニュージーランドとのFTAは、2008年に発効した。関税率はそれ以降、毎年、小麦でん粉およびコーンスターチが4%、ばれいしょでん粉が3%、タピオカでん粉が2%ずつ引き下げられており、2012年までにすべての天然でん粉が無税となる予定である。
 
 チリとのFTAは2005年に締結され、天然でん粉の関税はタピオカでん粉が2008年、小麦でん粉、コーンスターチおよびばれいしょでん粉が2010年に撤廃された。
 
 最近では、ペルーとのFTAが2010年に発効した。小麦でん粉およびコーンスターチは2015年までに、ばれいしょでん粉2020年までに無税となる予定である。
 
 一方、でん粉由来製品の関税は、天然でん粉より低くなっており、FTA下においてもその傾向は同様である。ペルーについては、MSGとデキストリンを除いてすでに無税である。チリについてもデキストリン以外は全て無税となっている。ニュージーランドとは、2012年までに段階的に廃止されることとなっている。
 
 

3.でん粉関連政策の概要

 でん粉原料作物やでん粉製品の生産は、政府によって管理されている。中央政府が基本的枠組みを策定し、それを受け地方政府が地域の生産を管理し、諸政策を実施するという構造になっている。地方政府自体が加工工場を所有している場合もある。
 
 ここでは、でん粉製品に関連する主な政策の概要について述べる。
 
 

(1)とうもろこし高度加工の規制

 中国政府は自国の食料安全保障に高い関心を持っており、ほかの穀物と同様にとうもろこしの需給および価格を政府が管理している。特に国内の供給が十分でない場合は介入の度合いが強くなる傾向にある。
 
 国家発展改革委員会は、1990年代は、とうもろこしとその由来製品の生産振興や輸出促進を支援していた。しかし、2000年代中頃になると、とうもろこし由来のバイオエタノール生産が伸び、また国際的に穀物価格が上昇するなど食料安全保障に関する議論が高まることとなった。その結果、中国政府は2007年9月、(ア)とうもろこし高度加工製品の生産が急増し、そのとうもろこし使用量の増加率が生産量のそれを上回っていること(イ)高度加工製品生産企業は、小規模企業が多く、技術的に未熟で資源効率が低いこと(ウ)排水などによる汚染の問題―を理由に、「とうもろこし高度加工業の健全発展に関する指導意見」を通知した。
 
 これにより、(ア)とうもろこし高度加工業への仕向割合は、総消費量の26%以内とすること。(この上限は、2006年実績(26.8%、国内消費量1億3400万トンのうち、高度加工業向けは3589万トン)に基づくとされる。)(イ)2010年までの間、飼料仕向け量(8400万トン(2006年))の増加率は、年平均4.7%以上を維持すること(ウ)適地適作により企業の合理化、産業構造の強化を進めること―とされた。この指導文書の主目的は、食料としてのとうもろこしの利用を保護することである。
 
 特に飼料向けは畜産の振興には不可欠である一方で、高度加工業と比較して利益率が低いため、保護することが重要であるとしている。また、同指導文書には、とうもろこしの生産振興、飼料資源確保のための茎など未利用資源の活用、国内への安定供給のために海外の土地を購入または借用することを奨励、といった内容も盛り込まれている。
 

(2)輸出税の還付

 中国では、輸出の際に輸出税(増値税、Value Added Tax)が課されるが、品目によっては還付が行われている。政府は、輸出を促進したい品目には還付を行い、逆に制限したい品目には還付率の引き下げや還付を行わない、という方法で輸出を管理している。とうもろこし由来製品については、輸出促進の対象であり輸出税の13%が還付されていたが、2007年6月に、食料安全保障および産業の発展による環境汚染の防止のため、還付は一旦廃止された。
 
 しかし、2009年6月以降は、とうもろこし生産が豊作であったことなどから、以前よりは低い水準であるものの5%の還付が行われている。
 
 
 
 

(3)ばれいしょでん粉生産の振興

 農業部によると、中国におけるばれいしょの単収は、1ヘクタール当たり15トンと米国の44トンに比べ低い水準にある。これは、ウイルスフリー種いもの使用が、栽培面積の2割に満たないなど、品質の悪い種いもの使用が多いことによる。
 
 中国政府は単収向上のため、2015年までにウイルスフリー種いもの使用を5割まで拡大する目標を設定している。2010年初めには、種いも生産に対する補助制度が新設された。これにより、1ヘクタール当たり220米ドル(1ム当たり100元、1ム=約666.7平方メートル)がウイルスフリー種いもの生産者に交付される。しかしながら、関係筋によると、この補助制度は、(ア)交付額がウイルスフリー種いも1キログラム当たり0.04元と少額であること(イ)交付先が農家ではなく種いも生産者であること―などから、現在のところ当初期待したほどの効果が得られていない状況である。
 
 なお、中国政府は2010年5月、ばれいしょの増産によって、貧困の改善、食の安全性の向上、農家所得の増加を図るため、関連研究や指導に注力すると発表した。このように、中国ではばれいしょの単収の向上や栽培面積の拡大に取り組む姿勢がみられる。
 
 

(4)バイオエタノール政策

 商業ベースでのバイオ燃料の生産が2004年に始まって以来、その需給は政府によって管理され、工場の新設には政府の認可が必要となっている。これまで認可を受けたのはすべて省が所有する5工場であり、このうち4工場が穀物を原料とし、1工場がキャッサバを原料とする。2008年の生産量は158万トン(穀物由来146万トン、キャッサバ由来12万トン)であり、10省でE10(ガソリンへのエタノール混合割合が10%)の利用が推進されている。このうち6省では既に全域でエタノール混合ガソリンを使用しており、残る4省では部分的な使用となっている。
 
 2007年以降、食料安全保障のため、穀物を原料とするバイオエタノール工場の新設は認められていない。国家発展改革委員会が2007年9月に公表した「再生可能エネルギー中長期発展計画」では、とうもろこしや小麦など食料からのバイオエタノール生産を中長期的には行わないという方針が示され、一方で非食料を原料としたエタノール生産に重点を置き、2010年の生産量を200万トン、2020年に1000万トンとすることとしている。
 
 関係者によれば、中国政府は最近、外国産の塊茎作物やスイートソルガムを原料としたバイオ燃料生産に特に重点を置いているとのことである。このようにとうもろこしからのバイオエタノール生産が拡大する可能性は現下では考えられず、でん粉仕向けとのとうもろこしの競合は限定的と見ることができる。
 
 

(5)サッカリンの生産規制(参考)

 サッカリンはでん粉由来製品ではないものの、甘味料市場での競合製品の一つとして関連政策を紹介する。
 
 中国はサッカリンの世界最大の生産国であり、かつ輸出国である。しかしながら、その廃液による水質汚染問題が生じ、生産の規模拡大が禁止されたため、2006年以降、生産量は減少傾向にある。現在稼働を許可されている4工場は、生産量、在庫量、販売量および輸出量を中国砂糖協会(China Sugar Association)に報告する義務がある。また、他国と比較して消費量も高水準であるが、砂糖とのバランスを考慮して政府が市場への出回り量をコントロールしている。
 
 
 
 

おわりに

 2011年1月下旬現在でとうもろこし価格はブッシェル当たり6.5〜6.6ドルと上昇しているが、「中国のとうもろこし輸入」がその価格動向に影響を与えていることは周知の事実である。さらに、2010年初旬から中旬にかけては、減産による価格上昇にもかかわらず、タイからタピオカでん粉を積極的に輸入したことも、中国のでん粉需要の底固さの表われといえよう。
 
 この背景にあるのが、国内のでん粉由来製品へのとうもろこしの仕向割合を規制し、原料となる穀物は海外産で賄うとする「とうもろこし高度加工業の健全発展に関する指導意見」である。このため、中国は当面、国際市場における巨大な需要国であり続けると見込まれる。中国は他国よりも政策が産業に及ぼす影響力が大きいこともあり、引き続き政策動向について注視していきたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713



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