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国産でん粉の生産及び販売状況について

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最終更新日:2011年4月7日

国産でん粉の生産及び販売状況について

2011年4月

全国農業協同組合連合会 園芸農産部でん粉販売課 課長 阿部 光一

はじめに

 国産でん粉販売は、平成19年10月から新しい価格調整制度が導入され3年が経過した。でん粉業界を取り巻く環境は、国内外の経済状況が低迷し、大変厳しい状況にある。このような中、国内における最近のでん粉の生産及び販売状況について取りまとめたので報告する。

T.国産でん粉生産状況

1.かんしょでん粉

(1)平成21でん粉年度:生産数量は、5万2000トン。(注:でん粉年度とは、10月から翌年の9月まで。) 
  鹿児島のかんしょの作付面積は増加し、台風の被害もなく、作柄は良好であった。

(2)平成22でん粉年度:生産数量は、4万3000トン。 
  作付面積の増加を受け、当初増産の見通しであったが、植付期の低温、6月の大雨、夏季の高温などの複合的な影響により大減産となった。

2.ばれいしょでん粉

(1)平成21でん粉年度:生産数量は、19万8000トン。 
  北海道のばれいしょの作付面積は微減し、収穫量は7月〜8月の長雨のため成育が抑制され、かつ、ほ場がぬかるみ収穫の時期がずれたことによるでん粉含有量の低下により、近年に無い不作の年となった。

(2)平成22でん粉年度:生産数量は、16万トン。 
  北海道のばれいしょの作付面積は微減傾向のなか、6月以降の記録的な高温と多雨・日照不足のため成育が抑制され、過去最低の生産量となった。
 
 

U.国産でん粉販売状況

 でん粉の制度は、平成19年10月から仕組みが変更され、抱き合わせ措置から調整金徴収と交付金交付による価格調整となった。調整金は、糖化・コーンスターチ・加工でん粉メーカーが海外から輸入するコーンスターチ原料用とうもろこし、タピオカでん粉、ばれいしょでん粉、サゴでん粉等を対象として徴収され、その調整金を使用してでん粉原料用いも生産者および国内産いもでん粉製造事業者への政策支援が実施されている。国産でん粉(かんしょでん粉、ばれいしょでん粉)の販売は次のとおりとなっている。

1.かんしょでん粉の販売数量(平成21でん粉年度)

糖化用販売数量    3万7600トン(対前年比 104.4%)
その他販売数量        7500トン(対前年比 127.1%)   
合 計           4万5100トン(対前年比 107.6%)

(1)かんしょでん粉は、全量制度対象となっており、用途は糖化用、化工用、菓子用、春雨用、接着剤用等となっている。

(2)糖化用向けの販売量は、制度変更当時年間4万トン程度といわれていたが、現在はその品質を考えると3万トン程度といわれている。平成22でん粉年度は、ばれいしょでん粉が大幅な減産となりかんしょでん粉の契約量が大幅に伸びているが、ばれいしょでん粉の生産量が回復すれば販売量は減少すると考える。

(3)その他用は、菓子用、春雨用、接着剤等向けに販売している。競合品となるタピオカでん粉について、化工でん粉であるため添加物表示が必要となること、中国の需要動向で価格が大幅に変化することなどの問題があるため主要ユーザーは、かんしょでん粉を継続使用している。

(4)現在、鹿児島きもつき農協新西南工場製品の販売を推進しており、新たなユーザーへの販売が決定しつつある。新規の食品向けへの販売量は、一定の価格でかつ安定した品質の製品を供給できれば、増加すると考える。

2.ばれいしょでん粉の販売数量(平成21でん粉年度)

制度対象用途販売数量      8万5000トン(対前年比 73.9%)
制度対象外用途販売数量    10万6200トン(対前年比 99.0%)     
合 計                19万1200トン(対前年比 86.0%)

(1)制度対象の用途は、糖化用、化工用、即席めん、水産養殖用餌料用、板紙(層間接着用)などとなっている。販売量は前年比△26.1%と大きく減少しており、糖化用が△2万6900トン、化工用が△2800トンとなった。減少の主な理由は、ばれいしょでん粉の生産数量の減少であり、制度対象数量11万5000トンの枠を8万5000トンに縮小したことによる(表2)。
 
 
(2)制度対象外用途販売の数量は、前年比△1100トンとなっている。減少している用途は、家庭用ミックス粉、スープ、冷凍食品、春雨向けであり、増加している用途は、家庭用片栗粉・水産練製品となっている。家庭用片栗粉は、景気低迷による内食化が進んだことにより増加している。水産練製品向けの増加は、23年4月からの化工でん粉の食品添加物表示義務化を控えて、大手の水産練製品メーカーが、化工でん粉から未化工でん粉に切替えたことによる(表3)。
 
 
(3)制度対象外用途向けばれいしょでん粉については、平成22でん粉年度の生産減に伴い、平成23年1月より値上げを実施した。販売先、ユーザーからは、値上げについて抵抗があったが、生産数量が16万トンという低水準になったことにより、価格についての要望より安定供給についての要望が強い。

(4)国内産ばれいしょでん粉制度対象外主要用途の販売情勢
ア.片栗粉(販売量:4万1000トン、対前年比99%、△300トン)
 a.家庭用:2万8700トン(100%、+100トン) 景気低迷の影響で内食化が進んでおり、家庭用片栗粉の荷動きについては、堅調に推移している。
 b.業務用・外食用:1万2200トン(96%、△400トン) 外食向けは、景気低迷による影響で減少している。

イ.水産練製品(同1万5000トン、同102%、+300トン) 
 水産練製品は、平成21年から22年にかけての冬が暖冬であったため、おでん向けの荷動きが芳しくなかった。販売数量の増加は、大手蒲鉾メーカーが原料を化工でん粉から国産ばれいしょでん粉に切り替えたための増加である。一方、中小の水産練製品メーカー向けは苦戦しており、この大手メーカーの伸びを除くと、実質的には業界として前年比94%、△750トンとなっている。

ウ.菓子(同1万7000トン、同104%、+700トン) 
 ボーロ菓子は、老人食としての需要が高まり堅調な販売となっている。米菓関係は、新潟の大手せんべいメーカーの業績が伸長しており、堅調な荷動きとなっている。なお、名古屋地区のえびせんべいについては、前年並みとなっている。

エ.食用その他(同2万6000トン、同99%、△100トン) 
 ミックス粉は、内食向けの販売が増加する一方、外食・中食(コンビニ弁当)向けが減少している。特に、コンビニ弁当向けの鳥の唐揚は、中国で製造し日本に輸入しているため、国内の生産量は減少し、ミックス粉の需要も減少している。 冷凍食品市場は、デフレ色が強まり、PB製品主導や半額セール等により単価安傾向になっている。大手冷凍食品メーカーにとっては、セールでの顧客確保は難しくなっているなか、今後は新商品開発が課題となっている。冷凍食品の市場は、中国産冷凍ギョウザ事件以前の水準にはもどっておらず、依然として苦戦している。 スープについては、大手メーカーの製品が年明け以降大ヒットし、大幅に増加している。

オ.春雨(同6000トン、同95%、△300トン) 
 中国の冷凍食品、粉ミルクなどの問題から、中国緑豆春雨の需要が大幅に減少し、国内春雨にシフトした。この頃の国内のほとんどのメーカーは、注文に生産が追いつかない状況であったが、現在では若干弱含みの状況となっている。
 中国の緑豆でん粉の相場の高騰により、カップ春雨の製造が大変厳しい状況となっている。カ.即席めん関係(同1000トン、同89%、△1,000トン) 即席めん全体の需要は増加しているが、ばれいしょでん粉を使用していない製品が増加している。また、メーカーは量販店から安いPB商品の製造を求められており、コストをかけないように、タピオカでん粉の使用、でん粉を使用しないめんの開発を実施している。

おわりに

 世界的にばれいしょでん粉の生産数量は減少傾向にあり、この流れは数年続く可能性がある。国産ばれいしょでん粉は3年連続で生産数量が減少しており、すぐに生産数量が増加に転じる見込みは無い。作付け面積は毎年減少しており、作付け面積を増加させるには種ばれいしょの確保が最大の問題となっている。今後は、北海道でん原用ばれいしょの作付けが増加となるよう、産地とメーカーを結びつける販売対策を講じる必要がある。
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