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でん粉由来のバイオプラスチック

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最終更新日:2011年6月10日

でん粉由来のバイオプラスチック

2011年6月

日本コーンスターチ株式会社
 

【要約】

 当社が開発した生分解性バイオマスプラスチック(商品名:「コーンポール」)は、天然資源のでん粉を変性することにより、疎水性と熱可塑性をもたせプラスチック化したものです。同製品はでん粉が添加剤としてではなく分子骨格の中心的役割を担っており、真の意味ででん粉プラスチックと呼べるもので、ボールペンのボディー部分や農業用マルチフィルム、インキ・塗料に至るまでさまざまな用途で利用できます。

1.でん粉プラスチック開発の経緯

 プラスチックは安定で変化せず、使用中はその性質がたいへん有用ですが、使用後はその丈夫さ、強さゆえに廃棄処理が問題となっています。このため、自然界の環境の中、あるいはコンポスト化システムの中で微生物の作用により分解され、二酸化炭素と水に変化する生分解性プラスチックが注目されています。また、近年では地球温暖化対策や石油資源の使用縮減のために、再生が可能なバイオマス資源によって生産できるバイオマスプラスチックの注目も高まっています。これらは石油枯渇や脱温暖化、リサイクルの観点からも有効な資源と考えられています。

 当社は現在の社会環境と市場の状況を見越し、でん粉の骨格を維持したままプラスチック化する技術開発に取り組み、でん粉ベースの生分解性バイオマスプラスチックを独自に開発しました。でん粉の分解、発酵によって得られる乳酸をポリマー化したポリ乳酸なども開発されていますが、でん粉自体に熱可塑性をもたせてプラスチック素材として応用しようと試みたのは当社が初めてと言っても過言ではありません。でん粉ベースの同製品は、図1で示すように、コンポスト化してとうもろこしなどの肥料として利用でき、地球規模でのリサイクルが可能となっています。
 
 

2.でん粉プラスチックの特性

 とうもろこし、米などの主成分であるでん粉は、グルコースユニットがつながった天然の高分子で、直鎖状構造のアミロースと分岐状構造のアミロペクチンとから構成されています。全て結晶性を有し、そのまま加熱しても分解するまで融点はなく熱可塑化しません。水やグリセリンのような親水性可塑剤の存在下で加熱すると可塑化はしますが、出来上がったものは水溶性であり、プラスチックとして使用することは困難です。

 図2にでん粉の分子構造を示します。グルコースユニットには3個の水酸基が存在し、でん粉の変性を行う場合には、反応活性の相違はあるものの、それぞれの水酸基が反応活性点となります。でん粉の変性と各種用途への応用の歴史は非常に古く、その目的としては食品分野などのゲル強度を応用した分野もありますが、主にでん粉のゲル形成特性(老化性)を抑えて、糊として使用する分野での取り扱いを容易にさせることが重視されてきました。加工でん粉として酸化、エーテル化、エステル化、リン酸架橋などの公知の反応により変性したでん粉が食品用・工業用に実用化されています。
 
 
 我々は加工でん粉で蓄積したでん粉の変性技術を駆使し、でん粉の骨格を維持したままプラスチック化する道を探索しました。プラスチック化に向けて、加工でん粉より高い変性を施すことができる方法を検討し、変性方法の選択と変性レベルの最適化を行いました。でん粉の変性度を高くすることで、熱可塑性を賦与でき、また、撥水性が生じて数パーセント未満の吸水率にまで耐水性が向上しました。しかも、変性方法と変性レベルを最適化すれば、生分解性と耐水性の両立が可能であることも判明しました。その結果、でん粉の分子構造を保ったまま、でん粉自体をプラスチック化することに成功しました。

 当社のでん粉プラスチックの特長としては以下のことが挙げられます。
・でん粉由来の生分解性バイオマスプラスチックであること
・原料でん粉の種類や変性方法によって物性が調製可能であること
・石化プラスチックに比べて燃焼熱が小さいこと
・形状が粉体であること
・酢酸セルロースやポリエステルと相容性が良く、複合化が可能であること
・エステル系、ケトン系、アルコール系の極性溶剤の溶解可能であること

 特に、極性溶媒への溶解性はポリ乳酸よりも優れており、同製品の大きな特性と考えています。

3.でん粉プラスチックの使用例

 図3で示すように、当社のでん粉プラスチックは年々再生産される天然資源のでん粉を、同じく再生産される天然油脂と反応させることにより製造される天然素材をベースにした生分解性バイオマスプラスチックです。同製品を使用することで、炭酸ガス循環による地球温暖化の防止、石油資源の節約、環境に優しい製品造りが可能となります。
 
 
 我々は生分解性及びバイオマス由来の特徴を活かした分野への応用を検討しました。用途に併せてでん粉プラスチックの物性を調製し、また、必要に応じて可塑剤と複合化することによって幅広いグレードを開発しました。図4にでん粉プラスチックが使用された例をいくつか示します。
 
 
(1)フィルム
 農業用マルチフィルム、生ごみ分別回収袋などは生分解という特性に意義のある用途です。既存のマルチフィルムの場合は、使用後に手作業ではがした上に洗浄して泥を落とし、産業廃棄物として有料で処分しなければなりませんが、生分解性マルチの場合は使用済み後そのまま鋤きこむことができるので、後の労力や処理費が不要となります。 生ごみ分別回収袋は生ごみをコンポスト化する際に袋も一緒にコンポスト化できます。生ごみのコンポスト化は生分解性プラスチックの普及にとって1つのキーポイントとなります。

(2)発泡体・バラ緩衝材
 生分解性の緩衝材は土に還る環境に優しい製品で、生ごみと同様の処分が可能です。

(3)成形体
 ボールペンのボディー部分に使用することで環境に優しい製品ができあがります。コーン約40粒で1本のボールペンができあがります。

(4)軽量陶器
 でん粉プラスチックを使用することで従来の陶器に比べ低温で焼成でき、製造時の二酸化酸素の削減が可能となります。この容器は2005年の愛知万博で採用されました。

(5)インキ・塗料
 でん粉プラスチックの溶解特性を利用してインキ・塗料でのバインダーとして使用できます。バイオマスプラスチック製品に使われるインキや塗料が石化由来のものでは100%バイオマス製品とは言えません。でん粉プラスチックを使ったバイオマスインキ、バイオマス塗料を使うことで製品全体をバイオマス化することが可能です。

4.今後の課題

 バイオマスプラスチックは石化プラスチックと比較するとまだまだコスト高ですが、より厳しくなる環境問題や石油価格の高騰によって今後ますます注目されていくものと考えられます。一方で、普及促進にとってキーポイントとなる石化プラスチックとの価格差をさらに縮めることや、ライフサイクルでのトータルコストダウンを図ることも重要課題と考えています。

 再生可能な天然素材をベースにした生分解性バイオマスプラスチック「コーンポール」については、生分解性及びバイオマス由来といった特長を活かした分野への応用開発を継続しています。「コーンポール」は地球環境との調和に重要な素材であると考えております。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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