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北海道産ばれいしょでん粉を使用したオブラート製造

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最終更新日:2011年8月8日

北海道産ばれいしょでん粉を使用したオブラート製造
〜虻田郡倶知安町 伊井化学工業株式会社の取組み〜

2011年8月

札幌事務所 所長 角田 恵造

1.はじめに

 ばれいしょでん粉は主に糖化製品、片栗粉、化工でん粉、菓子類、水産練製品・ハム・ソーセージ、めん類、その他の用途に仕向けられている。そのばれいしょでん粉の特性を利用し、薬包用、菓子用であるオブラートを製造し、需要の変化に対応しつつ、常に業界をリードする伊井化学工業株式会社の取組みを紹介する。

2.会社の歴史・沿革

 同社は倶知安町で雑穀業を営んでいた創業者伊井億右衛門氏が昭和17年、地場特産の高品質でん粉の用途特性を生かすため、北海道オブラート製造株式会社を興し、「伊井オブラート」を発売したのが出発点である。戦後の昭和24年に社名を伊井オブラート株式会社に変更。昭和35年にはオブラート自体が特殊な製品で需要が限られていることから、製造工程がオブラートと似ているポリ袋製造ラインを併設し、現在はこの2本柱で経営を安定させている。また、社名も伊井化学工業株式会社に改め、現在に至っている。

3.オブラートの製造方法・工程

 原料である道内産ばれいしょでん粉を撹拌タンクに投入、摂氏40度の温水を加え、撹拌させながら食用油など(サラダ油、乳化剤(大豆レシチン))(注1)を少量加える。この混入液に摂氏100度以上の熱蒸気を注ぎ糊状に糊化させる。次に表面を鏡面化するためにウルシでコーティング(注2)した回転式蒸気乾燥ドラムに、この糊状原料液をかけ流し、摂氏95度で乾燥させると、透明なオブラート原紙が完成する。乾燥ドラムからはがされた幅45センチメートル(注3)のオブラート原紙は連続して巻き取られ、正方形に裁断後、仕上検査へ。仕上室において用途別に薬包用と菓子包装用に分けられ、必要とされるサイズに裁断又は打ち抜かれ、包装後全国一円に出荷されている。

(注1)でん粉混入原料に食用油等を微量配合している。中身はサラダ油と乳化剤(大豆レシチン)であり、配合によりオブラート原紙に柔軟性が増すとともに、乾燥ドラムからはがしやすくなる。

(注2)鉄製の回転式蒸気乾燥ドラムの表面に、20日に一度ウルシをコーティングする塗り替え作業を行っている。

(注3)幅180センチメートルの回転式蒸気乾燥ドラムに幅45センチメートルのオブラートの製造ラインを3本設定している。連続してオブラートを製造している。
 
 

4.道内産ばれいしょでん粉へのこだわり

 同社によると、オブラート製造にあたり道内産ばれいしょでん粉を全て試してみたが、ようてい農協羊蹄澱粉工場の製品は、使い慣れているせいもあるが、工程全体を通じて、スムーズに製造を行えるとのことである。でん粉原料ほぼ全量が生食・加工用の規格外のいものため、製品の白度は他より若干劣るものの、でん粉粒子がきめ細かくかつ柔らかい特徴があり、オブラートの製造に適している。また、原料でん粉は製造年月日を指定して購入している。この理由としては、同じ工場の製品でも製造日によりでん粉の品質が微妙に違うためで、新粉に切り替わる際に、サンプルの提供を受け、製造テストを繰り返し実施し、最も製造に適した日のでん粉を購入しているとのことである。

 原料をタピオカでん粉、化工でん粉にすれば使いやすく、歩留まりも良いのは理解しているが、何十年も同じ道内産ばれいしょでん粉からオブラートを製造してきた経緯もあり、長年蓄積されたユーザーからの信用、信頼を裏切ることはできないとのことである。

5.最近のオブラートの生産動向および市場動向

 本来、オブラートの代表的役割は、飲みにくい散薬を包んで飲み下しやすくすることや、菓子向け用途において、べたつきやすい飴などを包んで食べやすくすることなどであった。しかし現在では、薬包用途では薬自体がカプセル化、錠剤化、顆粒化されそのまま服用できるようになってきている。一方、菓子向けも、包装紙材の仕様が良くなりオブラートの出番も狭められてきている。

 そのような状況のなか、平成5年にオブラートの新商品として薬包用袋オブラートを発売した。この商品は型抜きしたオブラート一枚一枚を袋状に畳んで箱詰めしたもので、上部開口部から散薬を落とし入れ、開口部をひねればすぐ飲み下せるよう利便性を高めた商品となっている。昭和30年代にも一度発売され、当時は値段が高く売れ行き不振で販売中止になったが、最近は便利さを求める時代の流れから、一般的な丸型オブラートからの消費者ニーズの転換が進んでいる。

 これから成長が見込まれる商品に粉末オブラートがある。粉末オブラートはもともと製品裁断クズを粉砕したものとして販売していた。ところが、意外にも本州の食品メーカーからこの商品の機能が注目され、注文が多く舞い込み、裁断クズだけでは原料が間に合わず、わざわざ粉砕するために、オブラートを製造するという状況になっている。今でこそ裁断クズという廃棄物のリサイクルという時代の要請に応える新商品となったが、当初は規格外品ということで低価格が設定され、現在も価格水準は低い。このデフレ傾向下では値上げも難しい状況であるが、今後はユーザーに理解を求め、少しずつ販売価格を改善して行きたいとのことである。

 なお、粉末オブラートの用途は、菓子向け(注4)90%、釣餌(撒餌)、養殖用餌、その他向け(注5)10%となっており、今後その他向けなど食用以外の需要を期待しているとのことである。

(注4)菓子にまぶすことで、金粉状にきらきらと反射し高級感がでる。米菓生地に練り込むことで、保湿性を持たせる。

(注5)撹拌すると強い粘りがでるので、釣餌などに練り込み結着剤として利用する。

6.おわりに

 現在、同社の関心事項は2つある。一つは製品の海外輸出について、もう一つは、今年産のばれいしょの出来についてである。粉末オブラートを輸出している顧客からの注文が、福島第一原発事故の影響で一時ストップしてしまっていたが、北海道庁の原産地証明を添付することで顧客がようやく輸出再開にこぎつけ、同社への注文も再開した。いまだに原発事故の収束が見えず、これからの先行きに不安をもっている。

 ばれいしょについては、作付面積の減少を気にかけている。作付面積減はばれいしょ生産量の減少を生じ、でん粉製造用原料の不足につながる。昨年は6月以降の記録的な高温と7月、8月の多雨などの天候不順で、収量減やいもの空洞化の問題が発生した。天候不順によるでん粉の品質低下は認められなかったが、原料でん粉が値上げとなった。今年も天候不順が続いているので、ばれいしょの作柄を非常に心配しているとのことである。

 同社としては、ユーザーから寄せられている信用、信頼を大切にしつつ、これからもユーザーからの新しい用途と機能への要望に確実に応えた製品を開発、製造して行きたいとのことである。 
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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