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ばれいしょでん粉工場における省エネルギーの取り組み

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最終更新日:2011年12月9日

ばれいしょでん粉工場における省エネルギーの取り組み
〜排水処理における電力削減〜

2011年12月

東部十勝農産加工農業協同組合連合会 参事 坂口 利久

はじめに

 東部十勝澱粉工場は北海道十勝の東部にある9農協が連合会を組織し、昭和46年操業を開始した。

 年間に処理するでん粉原料用ばれいしょは約9万5000トンで、毎年2万1000トン程度のでん粉を製造している。ばれいしょが収穫される9月〜11月がこの工場の最も多忙な操業期となる。

 この期間、工場から排出されるBOD(生物化学的酸素要求量で水質汚濁の指標)30000mg/L程の排液約30万立方メートルは、敷地面積の半分に相当する19.5ヘクタールの広大な池(図1)に貯留される。これらは翌年の春から次の操業が始まる8月末までに、微生物により有機物を分解したのち近くの河川へ放流される。

 排水処理で使用する曝気池には、微生物に酸素を供給するため37kwのエアレーター10台があり、その稼動には膨大な電力が必要である。そのうえ修理費の増加や、エネルギー管理指定工場として省エネ対策を求められるなど幾つかの課題が存在していた。そこでこれらを克服することを目的に、活性微生物製剤を活用した省エネ実証事業に取り組んだ。
 
 

1.実証事業のねらいとしくみ

 この事業は「排液処理の効率化と省エネによる経費削減」が目標であり、実施方法は以下のとおりである。

 まず曝気池で活性微生物製剤注1)を投入し処理機能を向上させる。また後段の硝化注2)液を前段へ循環させ、脱窒反応及びBODの除去を促進させる。それにあわせてエアレーターの稼動台数を調節し、電力使用量の削減を図る。また実施に当たっては新たな設備投資は最小限に止め、現有設備をできるだけ有効に活用することにした。

 しくみは図2のとおりであるが、左側の原水注入側で活性微生物製剤(メルトラーゼSW)を1日20kg週5日間投入する。これにより前段から処理速度が拡大し、後段ではたんぱく質に含まれる窒素が硝酸態窒素にまで酸化される。
 
 
 こうした硝酸性窒素と活性度の高い混合液を一部前段に戻し循環させる。これによって前段では嫌気的環境の中で脱窒反応がおこり、排液中のBODを消費しながら、一部が窒素ガスとして除去される。つまりこの活性微生物製剤を使い循環を行うことで、窒素の酸化(硝化)と還元(脱窒)反応がバランス良くおこり処理効率が高まる。

 また設備面では循環のためのポンプやホース設備に加え、固定式溶存酸素(DO)計と酸化還元電位(ORP)計を設置し、計測数値を連日監視しながらエアレーターの稼動をコントロールする。

注1)でん粉工場排水処理に適合するようにバクテリアを配合した製剤
注2)排水中の窒素化合物から生じたアンモニアを亜硝酸や硝酸に酸化する現象
 
 

2.電力使用量を40%削減

 初年度の事業を行った結果、電力削減量の目標が60万836kwhであったのに対して、52万8620kwhであり87%の達成率であった。

 その後検証の結果、若干改善することでさらに大きな成果が期待できることがわかり、次年度もこの事業を継続することにした。改善点は次のとおりである。

(1)処理効率が高くなっているので、これまで4月下旬から開始していたエアレーターの稼動を5月1日以降にする。
(2)初年度はリスクも考えエアレーターを多めに稼動させたが、2年次では年間稼動台数を常時7台以下にする。
(3)エアレーターの操作を手動で行ってきたが、曝気池内の環境を常に一定にすることを考え、自動制御装置を取り付ける。
(4)高水温時期には処理効率も高いことから、活性微生物製剤の投入を週4日に減らす。
 
 
 こうして2年目の事業を終えた段階では、活性微生物製剤の投入量を若干減らしたにもかかわらず、表にみられるように、これまで常時10台稼動であったエアレーターが平均6.16台に減少した。電力使用量も稼動開始時期を遅らせたことや稼働台数を抑制したことから、従来の60.7%に止まり大きな成果をあげることができた。一方、処理水の水質もBODでは20mg/L以下で安定し、曝気池にはロタリアなどの肉質虫類から固着性繊毛虫など多様な微生物が出現し、フロック(集合体)の拡大も進んだ。

 2年間の実証事業を終えて予想を上回る成果をあげることができたのは、単に活性微生物製剤を投入するだけではなく、DO計やORP計の数値はもちろん、各ポイントにおける水質検査の結果やMLSS(曝気槽内の活性汚泥浮遊物質)の状況を判断しながら、エアレーターの自動制御運転を行ったことが成功に結びついたといえる。
 
 

3.省エネと二酸化炭素の削減

 エアレーター10台をフル稼働していた2007年を基準に比較してみると、使用電力量が2010年には86万6866kwhも減少し、およそ40%削減されたことになる。このためエネルギーでは原油換算で215kl、二酸化炭素では510tの削減結果になり、これらは東部十勝澱粉工場全体の約10%に相当する。これにより省エネ対策としても大きく前進したことになる。

 この実証事業を終えて、処理効率が向上したことによって、次年度の操業前までに余裕を持って貯留池の排水処理ができるようになった。そのうえ電力料金も大幅に下がり経費削減にもつながった。さらに年間1台あたり稼働時間が減ったことによって、エアレーターの寿命も延びることになる。当然のことながら機械は老朽化に伴い維持費が増加していくが、活性微生物製剤の使用は維持費も掛からず経営上も有効である。

 また今回の事業で測定は行っていないが、排液の効率的な処理により、池周辺の臭気が格段に少なくなったことも補足として付け加えておきたい。

4.おわりに

 以上、当工場における省エネルギーの取り組みと関連技術が、全国各地で同様の設備をお持ちの皆様の参考になればと思い、話題提供させていただいた。

 この事業は研究室における実験設備ではなく、実際に使用している大規模排水処理施設で実施され成果をあげたことが各方面で高く評価され、2011年2月には日本応用糖質科学会北海道支部の「技術奨励賞」、さらに同年3月には北海道経済産業局の「北国の省エネ・新エネ大賞」を受賞した。

 最後になりましたが、この実証事業を東部十勝農産加工農業協同組合連合会が実施するに当たり、北海道澱粉工業協会、社団法人北海道馬鈴しょ生産安定基金協会、無臭元工業株式会社の皆様のご協力をいただき成功に至りました。関係者の皆様には心からお礼申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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