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ベトナムのでん粉事情

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最終更新日:2012年4月10日

ベトナムのでん粉事情〜生産、需要ともに急速な伸び〜

2012年4月

調査情報部
 

【要約】

 ベトナムのキャッサバ生産は、2000年代になって以降、急速な増加を見せた。2010年の生産量は、2000年の4倍以上である。今後は、都市化や工業化により農地は減少すると見込まれているため、作付面積の大幅な増加は期待し難く、単収の増加が増産に向けての課題となっている。

 タピオカでん粉については、2010年の生産量は、前年比21.3%減となったのに対し、国内消費量は、2010年に2000年の4倍以上まで増加した。この背景には、経済発展に伴うでん粉需要の増加がある。ベトナムはタイに次ぐタピオカでん粉輸出国であるが、国内消費量が増加しているため、輸出量は2006年以降減少傾向にある。今後、ベトナムの需給動向を見通す上では、消費の動向がカギを握るとみられる。

はじめに

 2011年に我が国が輸入したタピオカでん粉は、11万7000トンであった。ベトナム産の輸入量は、3000トンとわずかであるものの、タイに次ぐ第2位の輸入先国である。また、化工でん粉については、輸入量45万4000トンのうち、ベトナム産は3万7000トンで第3位である。このように、我が国のでん粉輸入において、ベトナムは一定の位置を占めている。

 そこで本稿では、ベトナムにおけるでん粉の需給動向について、英国の調査会社LMC社の報告に基づき紹介する。

1.ベトナムの農業概要

(1)生産額でみる農業の位置づけ
  〜総GDPに占める農林水産業分野の割合は2割〜

 ベトナムは、近年、市場経済の導入と対外開放政策を打ち出したドイモイ政権樹立後、工業部門やサービス部門の貢献により、順調な経済成長を遂げている。1人当たりのGDPは、2000年に569万ドン(約2万2300円、1ドン=0.00392円、2012年3月12日現在TTS相場)であったが、2010年には2279万ドン(約8万9328円)まで成長した。
 
 
 2010年のGDPにおける農林水産業が占める割合は、10年前と比べるとやや低下しているものの(2010年は20.6%)、生産額は408兆ドンと2000年の約4倍に増加しており、現在も重要な産業の一つとして位置づけられる。

 2000年以降の人口は毎年、1.1〜1.3%の割合で増加しており、2010年の推定人口は8693万人でASEANの中で3番目に多い。就業人口に占める農業従事者の割合は、減少傾向にあるものの、依然として50%近くを占めており、農業への依存度は非常に高い。ただし、最近では、都市部と農村部における収入格差の広がりが問題となっており、今後も農業人口の割合が低下することとみられる。
 
 
(2)国土利用状況
 〜伸び悩む耕地面積〜

 ベトナムは南北に約1650キロメートルと細長い国土を有しており、北部山岳地域、紅河デルタ地域、沿岸地域、東南部、中部高原、メコンデルタの6地域に分けられる。

 ベトナムの国土面積は、3310万ヘクタールである。2010年の統計によると、このうち耕地面積は1390万ヘクタールと、全体の42%を占める。2000年から2008年までの農業開発により増加傾向を示したが、2009年以降、横ばいで推移している。

 作物別の耕地面積割合を見ると、主要生産物である米は、2010年で54%(751万ヘクタール)を占めた。北部は紅河デルタ、南部はメコンデルタで生産されている。次いでとうもろこし8%(113万ヘクタール)、天然ゴム5%(74万ヘクタール)、キャッサバ4%(50万ヘクタール)となる。これら作物は、米生産地以外での生産が主である。キャッサバの耕地面積は、ベトナムで4番目である。
 

2.原料作物の需給動向 

(1)キャッサバ 
 〜生産量増加のカギは単収増〜

(1)−1生産動向

 2010年のキャッサバ作付面積は、49万6000ヘクタールと見込まれる。これは、2000年の約2倍の水準である。作付面積は、2000年から2008年まで急速に増加し、2008年には55万4000ヘクタールとなった。しかしながら、2009年以降は減少傾向での推移となっている。関係者によると、これは、他作物との競合や、土壌侵食などを懸念した作付制限などによるものとみられる。また、今後についても、都市化や工業化により農地は減少すると見込まれているため、大幅な増加は期待し難い。

 単収について見ると、2000年に1ヘクタール当たり8.3トンであった単収は、2010年には同17.2トンと倍増している。特に主要生産地域の一つである南東部では、同25.3トンにまで増加し、主要生産国のタイの並みの水準となっている。今後、作付面積の増加が見込み難い中、単収の増加が増産へのカギとなるであろう。なお、使用品種は主にKM94である。

 生産量は、上述したように作付面積および単収の大幅な増加により、2000年の198万6000トンから2008年には931万トンに急増し、2009年以降は減少したものの、2010年の生産量は852万2000トンと2000年の4倍以上の水準となった。
 
 
 2010年のキャッサバの生産量を地域別に見ると、沿岸地域が260万8000トン、次いで、東南部で228万3000トン、中部高原で218万トンの順となった。2000年の生産量はそれぞれ、64万6000トン、15万4000トン、35万2000トンであったのに対し、2008年までに大幅な増加を見せた。その後2年間は、作付面積の減少などから、減少傾向での推移となっている。なお、紅河デルタやメコンデルタなど、コメ生産地域ではキャッサバの生産はわずかである。
 
 
(1)−2国内の消費動向

 キャッサバは、国内ででん粉やチップに加工され、食品や飼料として消費される。

 消費量の推移を見ると、2000年の126万トンから2005年の425万トンまで着実に増加していた。2006年以降は増減を繰り返し、2010年の消費量は508万9000トンとなっている。一方、生産量は前述のとおり、2008年までは、大幅に増加し、その後減少したものの、2010年は852万2000トンと消費量を大きく上回った。この結果、2000年の輸出余力は、キャッサバ換算で72.7万トンであったが、2010年には346万2000トンと約5倍に増加した。なお、輸出品目としては、タピオカチップおよびタピオカでん粉がほとんどである。詳細は後述する。

 最近では、キャッサバの国内向け用途の一つとして、エタノールの原料としての利用が注目されている。2007年11月、政府はバイオ燃料の利用量について目標を設定した。その目標は、2025年までにガソリン使用量の5%をエタノールに、ディーゼル使用量の5%をバイオディーゼルに置換するというものである。具体的には、エタノール5%混合ガソリン(E5)の利用量について、2010年に8%、2015年に20%、2025年に100%とすることで、利用量の目標を達成したいとしている。しかしながら、エタノール利用の義務付けについては、2012年1月現在で検討事項であり、E5の普及もそれほど進んでいない。

 現在、国内にはキャッサバを原料とするエタノール工場が4カ所あり、建設中のものも含めると2012年までには6つの工場が操業する予定である。これら6つの工場のフル稼働には、現在の生産量の約3分の1となる300万トン近くのキャッサバが必要となるとみられている。このため、エタノール需要の増加によってタピオカチップおよびタピオカでん粉の輸出余力への影響が懸念されるが、関係者によると、6工場の製造能力は現状のエタノール需要を大幅に上回っているため、エタノール需要が伸びない限り、フル稼働は考えにくく、輸出余力への影響は軽微であるとみられる。
 
 
(1)−3価格動向

 2010年の国内のキャッサバ価格は、タイとほぼ同値であるトン当たり89米ドルであった。2001年より上昇基調で推移していたキャッサバ価格は、2006年に下降に転じたものの、翌年には再び上昇した。その後、タイの害虫被害による大幅な減産などで高騰したタイの価格にけん引された。
 
 
(2)競合作物(とうもろこし)の動向
 〜飼料需要からの引き合いは堅調〜

 ベトナムで生産されるでん粉のほぼ大半はキャッサバ由来のもので、とうもろこし由来のものはわずかである。しかしながら、とうもろこしはキャッサバと作付けにおいて競合しているため、その動向を知ることはキャッサバの生産等の動向を把握するうえで有用である。ここでは、とうもろこしの最近の生産および消費動向について述べる。

(2)−1とうもろこしの需給動向

ア.生産量の推移
 2010年のとうもろこしの作付面積は、前年比5.3%増の114万ヘクタールであった。2000年から2010年までの推移をみると、2000年(73万ヘクタール)から2008年(114万ヘクタール)まではおおむね増加傾向で推移したが、2009年から2010年はほぼ横ばいでの推移となっている。

 2010年の生産量は、一部の地域で害虫被害や天候不順があったものの、前年比5.4%増の460万7000トンであった。キャッサバと同様、単収の増加によって、生産量は増加傾向で推移しており、2010年には2000年の200万6000トンと比較して2倍以上の実績となった。

 主産地域は、北部山岳地域であり、生産量の約30%を占める。次いで中部高原地域が約25%を占める。

 政府は、今後も品種改良などで単収を増加させ、生産の拡大することを目標に掲げている。なお、遺伝子組み換え品種の利用については、2013年までに商業化する計画を発表したものの、関係省庁の合意に時間がかかるとみられ、実行できるかどうかは不透明であることから、遺伝子組み換え品種の利用による単収増は当面、見込めない状況である。
 
 
イ.国内消費の動向

 前述の通り2000年以降の10年間で、生産量は200万6000トンから460万7000トンへと2.3倍となったのに対し、消費量は2000年の195万8000トンから2010年の580万7000トンへと、約3倍の水準となっており、消費量の伸びが生産量の伸びを上回っている。これは、経済成長を背景とした食肉需要の高まりによる飼料向けが増加しているためである。とうもろこし国内消費量のうち、飼料向けは77%を占める。

 飼料需要の伸びに伴って、輸入量も増加している。2010年のとうもろこし輸入量は120万トンとなった。なお、2010年はとうもろこしの価格高騰もあり、国内飼料向けは国内生産と輸入だけではまかないきれず、小麦、DDGS、破砕米など代替した。
 
 

3.タピオカでん粉の需給動向〜堅調に推移する国内消費〜

 タピオカでん粉は、ベトナム国内において、麺類、パン製品、クラッカー等の食品向けに主に利用される。また、ベトナム北部では、麦芽糖の原料として菓子産業での利用もある。食用に使用されるでん粉は、家族経営の小規模工場で製造されたものが主流である。一方、繊維や製紙産業など工業用向けのタピオカでん粉は、より高品質なものが求められるため、乾燥設備を持った大規模な工場で生産される。

 国内には、大小合わせて60以上のタピオカでん粉製造工場があるとみられる。平均的なでん粉工場の1日当たりのキャッサバの処理能力は、250〜1000トンである。また、カンボジアとの国境近くの工場(概ね50キロメートル圏内)では、カンボジア産のキャッサバを利用する工場もある。最近では、原料確保の面でタピオカチップ工場との競合が激しく、フル稼働できるでん粉工場は多くない。

 2010年のタピオカでん粉生産量は、前年比21.3%減の63万トンであった。2006年以降の生産量は、63〜80万トンの間で推移している。

 注目すべきは消費量の推移である。2000年に10万2000トンであった国内消費量は、堅調に推移している。2010年には47万3000万トンに増加した。この内需拡大の背景には、経済発展に伴うでん粉需要の増加がある。ベトナムはタイに次ぐタピオカでん粉輸出国であるが、国内消費量が増加しているため、輸出量は2006年以降減少傾向にある。2010年の輸出量は、18万7000トンと、前年から52.7%の減少となった。
 
 

4.化工でん粉の需給動向〜輸出量の50%以上は日本向け〜

 化工でん粉生産量は、タピオカでん粉と比較すると小さいが、増加傾向で推移している。2000年に2万トンであった生産量は、2010年には7万5000トンに増加した。消費量も、毎年10.9%と高い割合で伸びており、2000年の1万7000トンから2010年の4万8000トンに増加した。2000年以降の10年における輸出量は、4000トンから4万6000トンまで増加した。2010年における主な輸出先は輸出量の順に、日本2万7000トン、中国8000トン、台湾6000トンであった。

 国内では、製紙などの工業用利用や食品加工で利用されている。製紙業では耐水性向上材として利用され、食品では天然でん粉の代替品として、インスタント麺や缶詰製品、冷凍食品に利用される。
 
 

5.タピオカでん粉および化工でん粉の価格動向
〜中国の需要増が価格を押し上げ〜

 2010年のタピオカでん粉価格は、2000年の約3倍となるトン当たり440米ドルであった。コーンスターチは2000年価格の1.9倍である同470米ドルであった。

 2010年の化工でん粉価格は、トン当たり610米ドルで過去10年間の最安値であった2001年価格の2倍以上となっており、いずれも上昇基調での推移となっている。
 
 
 このような上昇基調の背景には中国の存在がある。東南アジアで生産されるキャッサバ由来製品の最近の価格動向を語る上では、中国の動向は無視できない。ベトナムのタピオカでん粉および化工でん粉輸出量のうち、中国向けが占める割合は、2010年にそれぞれ72.6%、17.6%を占めた。中国のでん粉市場価格は、同国における主要でん粉原料作物であるとうもろこし価格に影響されやすく、その結果、ベトナムを含む東南アジアのキャッサバ製品価格の動きは、中国のとうもろこし由来製品価格の動きに連動する場合が多い。
 
 
 2010年におけるベトナムでのタピオカでん粉の生産コストは、トン当たり391.6米ドルと見込まれ、これは、2000年のトン当たり120.8米ドルの3.2倍である。コスト上昇の要因は、原料となるキャッサバ価格の上昇にほかならない。タピオカでん粉1トン当たりの原料コストは、2000年の73.4米ドルから、2010年には330.7米ドルまで上昇した。タピオカでん粉生産においては、コーンスターチや小麦でん粉と違って高価値な副産物が得られず、原料費の高騰はそのまま生産コストに反映される傾向がある。
 
 

6.まとめ

 ベトナムにおけるキャッサバの作付面積は、農用地の工業化・都市化や、とうもろこしなど他作物との競合により、これ以上の拡大は難しい。単収の増加が、増産に向けた主な取り組みになる。また、タピオカでん粉への仕向けについては、チップやエタノール向けとの競合が見込まれる。こうしたことから、2000年から2008年までにみられたようなキャッサバおよびタピオカでん粉生産量の急激な伸びは見込み難い。一方で、国内経済の成長に伴い、でん粉製品の消費量は上昇基調であり、生産量の伸びを上回っている。

 今後、ベトナム産タピオカでん粉の輸出余力を見通す上では、特に消費の動向について注視していく必要があろう。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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