でん粉 でん粉分野の各種業務の情報、情報誌「でん粉情報」の記事、統計資料など

ホーム > でん粉 > 豆知識 > トウモロコシの種類、製品の特性と用途

トウモロコシの種類、製品の特性と用途

印刷ページ

最終更新日:2012年10月10日

トウモロコシの種類、製品の特性と用途

2012年10月

社団法人菓子・食品新素材技術センター 理事長 中久喜 輝夫

1.トウモロコシ(コーン)の種類

 トウモロコシは穀粒の性質及び特徴によって、以下に示すように7つに分類される。

(1)デントコーン
 デントコーンは馬歯種コーンとも呼ばれ、穀粒の側面が固い澱粉層からなり、冠部は柔らかい澱粉層からなる。粒が成熟するにつれて柔らかい部分が収縮して冠部にくぼみ(デント)ができ、馬歯のようになる。デントコーンは主に澱粉(コーンスターチ)製造用、飼料用、さらに近年バイオエタノール生産原料として利用されている。

(2)フリントコーン
 フリントコーン(硬粒種コーン)は硬い澱粉層が穀粒の全体に広がり、粒の冠部にくぼみがない。害虫抵抗性があり、低温でも受粉が可能である。フリントコーンは主に食用として利用される。

(3)ポップコーン
 ポップコーン(爆裂種コーン)は穀粒が小さく、硬いコーンである。加熱により穀粒の水分が膨張してはじけ、ポップコーンになる。ポップコーンはスナック菓子として幅広い人気がある。

(4)スイートコーン
 スイートコーン(甘味種コーン)は澱粉含量が少なく、糖質の含量が高い品種であり、世界的な規模で食用の野菜として栽培されてきた。茹でトウモロコシや焼きトウモロコシとして広く食用に供されている。

(5)フラワーコーン
 フラワーコーン(軟粒種コーン)は穀粒全体が軟質澱粉からなり、粉に挽きやすい品種で、メキシコ、南アメリカのインカ帝国で栽培されていた最も古い栽培種のひとつ。

(6)ワキシーコーン
 ワキシーコーンは粒の外観がワックス様を呈しているため、ワキシー種と呼ばれている。中国南部の雲南地方が発祥の地であり、それが20世紀に米国に渡り、改良されたものが米国や南アフリカで栽培されるようになった。澱粉はアミロペクチンからなり、糯種コーンとも呼ばれ、主に食品用途に用いられる。

(7)ポッドコーン
 ポッドコーンは観賞用として栽培され、有?(ふ)種コーン、またはさやトウモロコシとも呼ばれ、穀粒が一個ずつムギのように小さい穎(えい)に包まれている。

(8)その他
 色彩豊かなインディアンコーン、また育種により、ハイアミロースコーン、ホワイトコーン、ハイリジンコーン、ハイスターチコーンやハイオイルコーンが開発されている。
 
 
 
 

2.トウモロコシの加工方法と生産物

 トウモロコシの工業的加工技術にはドライミリングとウェットミリングの二つがあるが、ここではウェットミリングプロセスについて紹介する。

 ウェットミリングプロセスは19世紀初頭、米国東部で開発されたプロセスであり、本プロセスを適用したシステムの特徴は精製度の高い澱粉を得ることができるとともに、原料であるコーンを余すところなく利用する環境に優しいシステムでもある。まず、精製コーンを浸漬工程で薄い亜硫酸水溶液(SO2濃度0.1-0.3%,pH3-4)に、温度48-50℃で40〜48時間浸漬する。その後、膨潤したコーンを粗粉砕した後、胚芽分離工程(流体サイクロン)で胚芽を分離する。さらに、胚芽を除いたものを磨砕した後、スクリーンで外皮を分離、残りの部分からタンパク質と澱粉を遠心分離機で分ける。浸漬液は濃縮してコーンスチープリカーとして、澱粉はコーンスターチとして製品化される。また、タンパク質はコーングルテンミールとして、外皮はコーングルテンフィードとして製品化され、胚芽からは乾燥後、圧搾方式あるいは溶媒抽出法によりコーンオイルが生産される。

3.コーンから得られる製品の特性と用途

3-1 コーンスターチの特性と用途

 コーンには固形分あたりおよそ70%の澱粉が含まれる。現在、国内ではおよそ300万トンの澱粉が生産されているが、その8割以上はコーンスターチである。その一般成分を表に、また、その走査型電子顕微鏡画像を写真に示す。
 
 
 
 
 コーンスターチは地上澱粉であり、温度及び水分条件の厳しい環境で生育するため、粒形(平均粒径12〜15μm)が角ばっていて、表面構造もスムーズでない。また、白色度が高く、表面構造にピンホールやクレーターが見られるが、これはコーンが収穫された後、貯蔵中に呼吸のエネルギーとして澱粉が消費された結果、形成されたものである。特に、ピンホールは呼吸の場所である胚芽周辺の澱粉粒に多く観察される。粒径はコメ澱粉よりは大きく、バレイショ澱粉やコムギ澱粉より小さい。また、糊化開始温度は64℃前後でバレイショ澱粉やタピオカ澱粉より糊化しにくい澱粉である。

 コーンスターチは、国内では60%以上が糖化用(異性化液糖、ブドウ糖、水飴・粉飴など)として利用されているほか、製紙用途(16.1%)、段ボール用途(4.6%)、ビール用途(4.4%)、さらに建材用途その他(12.3%)に利用されている。

3-2 副産物の特性と用途

 コーンスターチを製造する過程で、副産物としてグルテンミール、グルテンフィード、コーンオイル、及びコーンスチープリカーが得られる。

(1)グルテンミール
 グルテンミールはタンパク質含量が高く、消化性が良いので養鶏飼料として利用されるほか、醸造調味料の原料として利用される。グルテンミール中の70〜80%エタノール可溶性成分はプロラミン(ゼイン)と呼ばれ、グルタミンとロイシン含量が高く、機能性ペプチドや生分解性の素材としての開発が進められている。

(2)グルテンフィード
 グルテンフィードはコーンの外皮である繊維質(アラビノキシラン)を主成分とし、コーンスチープリカーを添加して乾燥した製品であり、乳牛・肉牛用飼料や養鶏の配合飼料に用いられている。

(3)コーンオイル
 胚芽は連続式のオイルエキスペラーによる圧搾法、あるいは溶媒抽出法により搾油され、その後、アルカリ精製、脱臭・脱色処理を経た後、オイルを温度0〜5℃に冷却して高融点成分を凝固・晶出させるウィンタリング法により精製を行ってサラダオイルとなる。コーンオイルはリノール酸が多く、トコフェロールやフェルラ酸などの抗酸化物の含量が高い。そのため、酸化安定性が高く、風味と味質に優れたオイルである。

(4)コーンスチープリカー
 トウモロコシの浸漬液は連続的に真空蒸発缶で固形分約50%まで濃縮され、コーンスチープリカーとして製品化される。本製品には1〜2%のイノシトール及び水溶性のビタミン類・核酸分解物が含まれるほか、アミノ酸としてはグルタミン酸、ロイシンが多い。タンパク源として一部グルテンフィードに混合して飼料として利用されるほか、抗生物質・酵素生産を目的とした微生物培養の窒素源として利用される。

参考資料

・貝沼圭二、中久喜輝夫、大坪研二編、トウモロコシの科学、pp.69-77、朝倉書店、2009年
・原田久也監修、種子生理生化学研究会編、種子の科学とバイオテクノロジー、pp.330-336、学会出版センター、2009年
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713