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加工でん粉の液体調味料の増粘剤としての利用

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最終更新日:2013年5月10日

加工でん粉の液体調味料の増粘剤としての利用

2013年5月

ヤマキ株式会社 取締役上席執行役員 朝田 仁 

【要約】

 食品産業において、たれやソース類などの液体調味料に粘度を付与する増粘剤としてはでん粉、加工でん粉、多糖類(ガム類)が一般的である。増粘剤は、単に粘度を発現するだけでなく、液体調味料にレオロジー特性の機能を付与する目的もある。この機能付与には加工でん粉が、その種類の豊富さから適しているために、本稿では、加工でん粉を液体調味料の増粘剤として利用する場合のポイントを説明した。 

1.はじめに

 近年、コンビニエンスストアの弁当や、スーパーマーケット惣菜などの中食業界の進展により、たれ・ソース類などの液体調味料の需要が伸展するとともに、その種類も多様化してきている。その理由として、中食(惣菜)に関与する液体調味料類が、味付けや風味などの調味特性だけでなく機能特性が付加されているからである。この機能特性は、つゆ、たれ、ソース類などの粘度に関わるレオロジー特性(粘度と粘弾性)を示している。 

2.液体調味料類の粘度と増粘剤

 たれ・ソース類などの液体調味料を粘度で大まかに分類し、その粘度で要求されるレオロジー特性と増粘剤について表1に示す。

 表1より低粘度たれは、食品素材を食する直前の味付けを目的としているために各種スパイス類を多く含んだ濃い味付けになっているものが多い。そのため、これらのたれ・ソース類に要求されるレオロジー特性は、スパイス類の調味料中への均一な分散性や懸濁安定性が重視される。さらにはこの低粘度たれが食品にしっかりと広範囲に付着するような伸展性、付着性が最重要の機能特性となる。

 さらに、中粘度たれには、ベシャメル、ドミグラスなどの洋風ソース類や、酢豚、八宝菜などの中華あんかけ類が多く含まれており、これらは料理と一緒に食されることから舌ざわりや舌に残る濃厚感・ボディ感が重視され、でん粉やでん粉と多糖類の併用で増粘される場合が多い。さらに、たれ・ソース自身の保水性、離水防止性が要求される。

 高粘度たれは、食品素材に味付けすると同時にその見栄えも重視したコーティング用の調味料である場合が多い。すなわち、焼鳥や肉団子などの食品素材の全面を覆うように均一に広がる伸展性と付着性、さらに付着した調味料が時間経過しても食品素材から流れ落ちることのない、たれ落ち防止性の機能特性が要求される。この粘度機能を満足させるための増粘剤として、加工でん粉が用いられている。

 この高粘度たれの機能特性を利用した実際例を、図1に示す。これは、惣菜売場でパック販売されている焼鳥串の写真である。この焼鳥に使用しているたれ(焼鳥のたれ)のレオロジー特性を加工でん粉で改良すると、たれ付けした後に時間が経過してもたれがパックに落ちることもなくなる。すなわち、たれ・ソースとしての味付けよりも見栄えを重視した使い方である。本稿ではこれら液体調味料の増粘剤として利用されている加工でん粉について、さらに詳細に述べてみる。 
表1
図1

3.液体調味料の増粘剤としての加工でん粉

 食品加工で利用されるでん粉は、原料植物から精製されただけのでん粉だけではなく、でん粉に化学修飾したり、架橋処理した加工でん粉も含まれている。この化学的処理された加工でん粉で食品用として利用できるものを表2に示す。表2の加工でん粉は、日本では2008年10月の食品衛生法施行規則の一部改正で、11品目の化学的処理による加工でん粉が食品添加物指定されている。

 液体調味料の増粘剤に加工でん粉を利用する場合には、その種類の選択が重要となる。日本国内では先の表2の11種類の化学的処理した加工でん粉が認められているが、化学変性処理による組み合わせだけでなく、その処理を施される元のでん粉の種類も由来植物によって様々であるために、この化学変性処理と由来でん粉種を組み合わせた非常に多くの加工でん粉の種類がある。すなわち、食品加工に利用されているでん粉は、穀類由来の米、小麦、トウモロコシのでん粉があり、地下茎由来ではばれいしょ、かんしょ、キャッサバのでん粉がある。特に、食品用加工でん粉のベースとしてよく利用されるものは、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカでん粉とばれいしょでん粉である。その理由としては、量的に安定供給が安価で可能なこと、でん粉を食品に利用する時の最大の欠点であるでん粉の老化現象が起こりにくいことなどが挙げられる。

 以上のことから、加工でん粉には、(1)変性処理の種類、(2)変性の程度、(3)由来でん粉種の組み合わせによって無数の選択肢が存在する。そのため、これらの加工でん粉をたれ・ソースの増粘剤として利用するには使用用途を理解し、化学変性、由来でん粉種とその粘度発現を把握した上でレオロジー特性の設計と選択が必須となる。これらの設計と選択ができれば組み合わせの種類が豊富な加工でん粉は、非常に有効な液体調味料の増粘剤になりえる。 
表2

4.液体調味料の増粘剤としての加工でん粉の選択

 ここまで、たれ・ソースなどの液体調味料に利用する加工でん粉について述べてきたが、ここからは多種類の加工でん粉を、たれ・ソースの増粘剤として利用する時のポイントについて述べてみる。

 まず、実際のたれ・ソースの製造工程を図2に示した。一般的なたれ・ソースは、ニーダーと呼ばれるスチームジャケットの付いた掻き取り攪拌のできる混練機に、液体・粉体原料と、多糖類(ガム類)やでん粉、加工でん粉などの増粘剤を投入し、混合・攪拌しながら90℃以上まで昇温、加熱される。この時に加工でん粉は糊化温度以上まで加熱、攪拌されることで粘度を発現し、多糖類は高速攪拌されることで粘度を発現する。さらに、昇温、加熱が終了すると、品質チェックを受けてニーダーからポンプによってチューブを通って殺菌、容器充填されて商品として出来上がっていく。この製造工程では、たれ・ソースに加熱・殺菌による熱がかかるだけでなく、攪拌やチューブ輸送において力(応力)が負荷されて、たれ・ソース自身が変形(ずり)することにもなる。こうした製造工程を理解した上で、加工でん粉を含めたたれ・ソースの増粘剤の選択のポイントとして以下の7項目が挙げられる。
 
(1)発現する粘度の高低と、その液体調味料のレオロジー特性
(2)液体調味料中の共存成分への化学的耐性(溶解性、耐塩性、耐酸性、耐糖性など)
(3)液体調味料製造時の物理的影響に対する耐性(耐熱性、耐凍性、耐ずり性など)
(4)液体調味料の原料に含まれる共存物の酵素に対する耐性
(5)使用する時の作業性(溶解性、粉塵など)
(6)溶解、膨潤、糊化した時の色や濁りとたれ・ソースにおける透明性
(7)利用コストを含めた経済性
 
 これらの項目の中で(1)〜(4)のポイントを、加工でん粉を増粘剤として利用する場合の注意点として次項に説明する。 
図2

5.加工でん粉を増粘剤として利用する場合の注意

 図2での製造工程を踏まえて上記のポイントを考えると、でん粉、加工でん粉を増粘剤として利用する場合に3つの要因を考慮する必要がある。ひとつめは化学的要因、2つめは物理的要因、3つめとして酵素的要因の影響がある。こうした、液体調味料の増粘剤に加工でん粉を利用する場合の長所とその種類を表3に示した。 
表3

5.1.化学的要因

 たれ・ソースの配合は、醤油、液糖、味醂、食酢、食塩、砂糖、香辛料など様々な原料がブレンドされるために、その化学成分のpH、塩分・糖分濃度、酸度も広範囲となる。このことは、たれ・ソースの共存化学成分によってでん粉、加工でん粉粒子の膨潤促進・抑制、分解などが起こり増粘効果を発揮できない可能性があることを示している。こうした課題に対応するために、各でん粉メーカーでノウハウを備えた様々なタイプの化学変性加工でん粉が発売されている。表3から、上記のような化学成分耐性や老化、透明性に関しては、でん粉に酢酸基を付加した酢酸でん粉、リン酸を付加したリン酸でん粉やヒドロキシプロピルを付加したヒドロキシプロピルでん粉などで、耐酸性、耐老化性に対応している。 

5.2.物理的要因

 たれ・ソースでも高粘度になると、高粘度ゆえに成分の均一分散が起こりにくく、図2での製造工程中での攪拌、混合は非常に強くなり、大きな物理的ずり応力がかかる。そのため、増粘剤としての加工でん粉には、表3のように架橋型でん粉が利用される。具体的にはでん粉を架橋処理することで、でん粉粒子の膨潤を制御して製造工程中の熱やずり応力に対する物理的耐性を持たせている。さらに、架橋処理だけでなく、先の官能基を付加したものも組み合わせて利用されている。

 実際に液体調味料に汎用的に使用されているのは、(1)ヒドロキシプロピルリン酸架橋でん粉、(2)アセチル化リン酸架橋でん粉、(3)アセチル化アジピン酸架橋でん粉の3種類になっているのが現状である。その一例として、図3にワキシーコーンスターチのヒドロキシプロピルリン酸架橋でん粉糊化液に各ずり応力を負荷した時のでん粉粒子の顕微鏡写真を示す。図3の(a)では架橋によりでん粉粒子が十分に膨潤してない様子が見られる。負荷ずり応力が大きくなると、一部、粒子が膨潤してくるが、(c)のように、さらに大きなずり応力が負荷されるとでん粉粒子の崩壊が確認できる。 
図3

5.3.酵素的要因

 たれ・ソースを製造する場合には、その原材料には醤油、味醂、味噌などの発酵・醸造物や野菜、香辛料が一緒に使用される場合が多い。野菜ではおろし大根、おろし人参やおろし玉ねぎなどが利用され、香辛料ではすり生姜、おろしにんにくなどがよく用いられる。こうした野菜や香辛料には、必ずアミラーゼを主体とする生体酵素が含まれている。さらに、醤油、味醂、味噌などの発酵・醸造物にも同様にアミラーゼが含まれている場合が多い。そのため、でん粉や加工でん粉を増粘剤として利用するには、こうしたアミラーゼででん粉が酵素分解されて粘度が低下してくることがある。その対策として、事前に酵素を失活させて利用する場合が多いが、微量でも酵素が残存していると、たれ・ソースの製造直後だけでなく賞味期限の間にも徐々に粘度が低下することもあるので注意を要する。

 その一例として、図4にワキシーコーンスターチのヒドロキシプロピルリン酸架橋でん粉糊化液に物理的にずり応力を負荷した場合と酵素影響があった場合のでん粉粒子の顕微鏡写真を示す。(
b)は糊化液にカッターで高ずり応力をかけた場合で、壊れたでん粉粒子が認められる。(c)は未糊化でん粉粒子をアミラーゼ溶液に漬けた後、糊化した場合である。でん粉粒子の状態は輪郭が不明瞭になり、粒子表面から分解している感じを受ける。このような場合だと、低いずり応力でも負荷されると簡単に粒子が崩壊することになる。 

6.たれ・ソースのテクスチャー改良としての加工でん粉の利用

 また、加工でん粉は増粘剤としてだけでなくテクスチャー改良剤としても、たれ・ソースに利用されている。これは、加工でん粉の糊化レオロジー特性(テクスチャー)が、元のでん粉のテクスチャー要素の影響を強く持っているからである。この場合のテクスチャーとは、たれ・ソースを料理と一緒に口の中に入れた時のボディ感や舌ざわりを示しており、糊化でん粉のテクスチャーは古くから調理方法や料理の種類によって使い分けられている。

 例えば、中華料理では、あんかけにおいてかたくりでん粉やばれいしょでん粉が主体で用いられている。これは、中華料理では照り、つや、曳糸性、透明感が要求されるために膨潤力が大きい地下茎のでん粉が適しているからである。また洋風料理では、ベシャメルソース、ドミグラスソースなどで粒子径の小さい穀類でん粉の舌ざわりを生かすために小麦粉、小麦でん粉、コーンスターチがよく用いられる。ただし、でん粉だけでたれ・ソースを増粘すると、たれ・ソースの配合原料などの影響や、たれ・ソース製造時の加熱、攪拌などの影響で粘度発現不足や粘度低下が起こり安定性に乏しくなる。そこで、でん粉に化学的変性を施した加工でん粉を用いることで、でん粉の粒子径、膨潤力に起因するテクスチャー特性に加えて、粘度安定性を持たせることができる。 

7.おわりに

 様々な食品加工に利用されている加工でん粉を、たれ・ソースの増粘剤としての側面から述べてきた。中食(惣菜)市場におけるたれ・ソースなどの液体調味料類は、調味特性だけでなく機能特性を付加価値として持たせていくことで、さらに多様化されてくると考えられる。こうしたたれ・ソースの粘度・レオロジー特性を発現させるには、加工でん粉を上手く利用することが重要である。

 また、最近は加工でん粉が、高齢者や嚥下(えんげ)困難者向けの嚥下補助食品の増粘剤としても利用される場合も増えてきている。そのため、多様化された加工でん粉を化学変性の種類、程度、さらには由来でん粉種の点からその糊化液のレオロジー特性との関係を明らかにしておけば、さらに広範囲の用途開発が目指せると考えられる。 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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