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国内産いもでん粉の生産・販売状況等について

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最終更新日:2013年4月10日

国内産いもでん粉の生産・販売状況等について

2013年4月

全国農業協同組合連合会 園芸農産部 でん粉・食品原料課

T.生産状況

1.国内産いもでん粉の生産量: 
(1)平成23年産
ア.かんしょでん粉:生産量4万5000トン(内、商系2万8000トン)
 原料かんしょの収穫量は、春先の低温や長雨により初期成育が遅れたこと等により収量が伸びず、不作年であった前年と同水準の生産量にとどまった。

イ.ばれいしょでん粉:生産量17万4000トン(内、商系1万トン)
 北海道のばれいしょの作付面積は微減であり、収穫量は播種期の低温や降雨により初期成育が遅れ、その後の好天で回復傾向にはあったものの、前年を若干上回る水準にとどまった。

(2)平成24年産(速報値)
ア.かんしょでん粉:生産量3万8000トン(うち、商系2万5000トン)
 生育状況は、低温により平年をやや下回ったと見られる。焼酎用途との競合が依然として激しく、前年を約6600トン下回る見込みである。

イ.ばれいしょでん粉:生産量18万トン(うち、商系9000トン) でん粉専用品種の作付面積は増加に転じたが、春先の降雨による播種遅れと収穫時期の高温により収量が伸びず、生産量は前年より増加したものの依然として低い水準となった。
 

U.販売状況

 国産でん粉の販売は、平成19年10月から仕組みが変更となり、コーンスターチ用輸入とうもろこし等との抱き合わせ措置から調整金徴収と交付金交付による価格調整制度となった。調整金は、でん粉糖(糖化製品)・コーンスターチ・化工でん粉メーカーが外国から購入するコーンスターチ用とうもろこし、タピオカ(マニオカ)でん粉、ばれいしょでん粉、サゴでん粉等を対象として徴収され、その調整金を使用してでん粉原料用いも生産者および国内産いもでん粉製造事業者への政策支援が実施されている。かんしょでん粉、ばれいしょでん粉の販売状況は次のとおりである。

1.かんしょでん粉の販売量
 (平成23年10月〜平成24年9月販売量)
でん粉糖用販売量 3万460トン  (対前年比91.5%)
その他販売量    1万3459トン (同78.0%)
合計          4万3919トン (同86.9%)

ア.かんしょでん粉は、全量政策支援の対象となっており、用途はでん粉糖用、化工でん粉用、菓子用、春雨用、接着剤用等である。

イ.糖化用向け販売量は、平成19年の制度変更当時は年間4万トン程度であったが、生産量の減少もあり平成23でん粉年度の販売量は、同3万トン程度となっている。

ウ.その他用途向け販売の主な用途は、菓子、春雨、接着剤等である。
  かんしょでん粉は従来から、ゲル化した際にくずでん粉、わらびでん粉に近い物性を示すなどの製品特性と、国内産いもでん粉としては比較的低価格で流通していることから、さまざまな用途に使用されているが、近年は、末端製品の需要低迷と加工タピオカでん粉との競合により、徐々に需要が減少する傾向にある。

エ.平成21年および23年に農協系の2工場が相次いで新設され、従来と比較して高品質なかんしょでん粉の生産を開始しており、食品用の需要拡大が期待されているところである。

2.ばれいしょでん粉の販売量
 (平成23年10月〜平成24年9月販売量)
政策支援対象用途        10万トン   (対前年比147.1%)
(内訳)でん粉糖用販売量  3万1548トン (同86.1%)
    化工でん粉用販売量 2万9259トン (同134.4%)
    その他用販売量    3万9193トン (同408.0%)
政策支援対象外用途     6万8068トン (同61.6%)
合計                16万8068トン (同 94.1%)

ア.政策支援対象の用途は、でん粉糖用、化工でん粉用、その他用(菓子、めん類、水産練製品、冷凍調理食品、食肉製品、調味料、水産養殖用餌料、板紙(層間接着用)向け等となっている。

イ.政策支援対象用途向け販売量は、前年より大きく増加しているが、これは平成23年10月から、従来の政策支援対象用途に菓子、即席めん以外のめん類、水産練製品、冷凍調理食品、食肉製品、調味料が加わり、支援対象が拡大したことによる。

ウ.販売合計からでん粉糖用および加工でん粉用を除く一般用(いわゆる固有用途(注))向け販売の数量は、前年比89%と、1300トン程度減少している。減少の要因としては、末端商品の需要低迷以外に、平成22年以降、ばれいしょでん粉の生産量が急激に減少し、需要量に対して十分に供給できなかったことがあげられる。

エ.固有用途ユーザーは、ばれいしょでん粉の供給不足に対して、輸入化工でん粉への切り替えや、ばれいしょでん粉使用商品の販売量制限、商品へのでん粉配合率の縮小等により対応している。
 
3.ばれいしょでん粉固有用途販売情勢(全農販売分)
ア.販売実績
 (平成23年10月〜平成24年9月)
 固有用途向け販売量10万7000トンのうち、全農販売量は92%にあたる約9万9000トンであった。
 全農推計による用途別販売量は以下のとおり。
 
イ.主要用途の情勢
(ア)片栗粉
 ばれいしょでん粉の供給不足に対して、商品の少量化や販売制限、外国産化工でん粉への切替を進めた結果、片栗粉需要のうち8割を占める家庭用片栗粉販売量は対前年比91%、業務向けは同70%の実績となった。家庭用は、原材料の表示問題や量販店の抵抗により、外国産化工でん粉への切替が遅れたことが影響して、業務用に比べて、前年からの減少割合が小幅にとどまったが、逆に、今後、ばれいしょでん粉の供給量が増えた場合においても、実需者が供給安定性を見極めるまで需要の回復には一定の時間を要すると推定される。

(イ)菓子
 菓子用途のうち5割を占め、最大の需要先であるえびせんが主に贈答用の消費低迷により前年比80%と低迷している。菓子業界においても国産の不足感を嫌気し、外国産化工でん粉等への切替を検討するユーザーが徐々に出始めているようである。

(ウ)水産練製品・食肉製品
 食肉製品(ハム・ソーセージ)が前年比90%を維持したのに対し、水産練製品が市況の低迷および他でん粉とのミックスでん粉やタピオカ化工でん粉へ切り替わったことにより、対前年比76%まで落ち込んだ。
  ばれいしょでん粉の不足をうけて、国内化工でん粉メーカー数社が、タピオカ化工でん粉に油脂加工をおこない、ばれいしょでん粉に近い物性を持たせたでん粉の販売を推進する動きも見られた。

(エ)麺類
 大手ユーザーが新商品への国内産いもでん粉の使用を控えたことや消費低迷により、前年比85%と減少した。
 また、小麦粉の品質向上にともない生めんの食感に近い製品の開発・販売に各社とも取組んでおり、市場でも評価を受け販売を伸ばしていることから、競合するでん粉を使用する商品の販売が低迷し、でん粉使用量が低迷すると見込まれている。

(オ)春雨
 前年比92%で推移したが、春雨メーカー間で需要格差が大きい。海外(タイ)に製造拠点を置き、タピオカでん粉を原料とした春雨を日本に供給していたメーカーが洪水の影響などで撤退したことにより、代替需要(原料ベースで1400〜1500トン)を狙う動きがあったが、流通していた商品が安価であったことや消費の低迷から、代替の動きは限定的と見込まれている。

(カ)その他食品用(スープ、ミックス粉、レトルト食品、冷凍食品等)
 から揚げ粉等のミックス粉は、他でん粉への切り替えにより、前年比76%まで数量を落としている。レトルト食品・冷凍食品では、保水性や粘度保持など物性上の課題から、タピオカ化工でん粉に切り替わるなど、減少傾向にある。

(キ)工業用等(板紙、機械、医薬品、ペットフード、水産餌料等)
 板紙用販売実績が1000トン強あるが、輸入化工でん粉に切り替わり、前年比77%の実績となった。その他の用途について、他でん粉への切替が容易な用途はいずれも減少しているが、機械用など切替が困難な特殊用途は逆に増加し、全体としてはほぼ前年並みで推移した。

(ク)その他
 ユーザー・用途を特定しないざら場向け販売。多くは中小の水産練製品や食肉製品、外食・業務用片栗粉用途と推定される。

V.今後の課題

 かんしょでん粉については、でん粉原料用甘しょの安定生産につなげていくためにも、今後でん粉糖用向け販売に加え、食品用途の拡大の推進が必要となっている。現時点においては、かんしょでん粉の市場における知名度は高いとはいえないため、今後、さまざまな業界に提案・周知することにより、かんしょでん粉の粘度特性を生かした用途を創出することが重要である。

 ばれいしょでん粉は、平成22年以降、大幅に生産量が減少し、それにより相当な需要を失った。需要回復には、一定期間を要するとみられるが、そのためには、供給量の安定化が必須である。そのため、生産者手取りを維持し、でん粉原料用ばれいしょ生産の維持・拡大を図ることが重要と考えている。
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