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2012年のCAP見直しにおけるEUのでん粉事情(EU全域)

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最終更新日:2013年11月11日

2012年のCAP見直しにおけるEUのでん粉事情(EU全域)

2013年11月

調査情報部 山ア 博之

【要約】

・EUのでん粉生産は、ばれいしょでん粉の生産が減少するも、小麦でん粉とコーンスターチが増加し、安定して推移している。

・2012年6月をもって、ばれいしょでん粉分野向けの各種支援制度の廃止が決定された。しかし、2013年6月のCAP改革案の合意において、ばれいしょ生産者に対して、生産に連動する直接支払制度(coupled direct aid)が再び導入されることが認められた。今後のばれいしょ生産は、当該直接支払制度による支援が期待できる間は、でん粉製造事業者によるばれいしょ買取価格の動向に影響を受ける状況が続くものと考えられる。

・一方、でん粉生産においては、ばれいしょでん粉製造業者向けの補助金が無くなったことで、小麦でん粉やコーンスターチに対するばれいしょでん粉の価格競争力が低下した。でん粉業界の予測では、2013年から2016年の間に、ばれいしょでん粉利用量の3割が、小麦でん粉およびコーンスターチに移行するものと見られている。

はじめに

 EUのでん粉生産は、主にばれいしょ、小麦およびトウモロコシを原料としている。ばれいしょでん粉の生産量は、世界全体のばれいしょでん粉生産の約3/4を占め、2012年に日本が輸入したばれいしょでん粉(1万4400トン)の99.9%以上がEU産であった。また、EUの化工でん粉は、世界全体の化工でん粉生産量の約1/4を占め、2012年に日本が輸入した化工でん粉(でん粉誘導体およびデキストリン:7万1400トン)の1割強がEU産であった。このように、EU産でん粉は、でん粉の国際需給に大きな影響を及ぼし、日本との関係も深い状況にある。

 2012年6月、EUは共通農業政策(CAP:Common Agricultural Policy:)を見直し、ばれいしょでん粉の生産割当などを廃止した。その結果、製紙産業などにおいては、ばれいしょでん粉から、より安価な小麦でん粉やコーンスターチへの切り換えが進むことが予測されており、EUのばれいしょでん粉生産は減少するものと見込まれている。

 EUのばれいしょでん粉生産量の減少は、今後、日本のばれいしょでん粉の需給に影響を与える可能性がある。このため、本稿では、2012年のCAP見直しにおける、ばれいしょでん粉をはじめとしたEUのでん粉原料作物およびでん粉の需給状況や今後の見通しなどについて、英国の調査会社Agra CEAS Consulting社の報告に基づき紹介する。

 なお、本稿の為替レートは、1ユーロ=133.37円(2013年9月末日TTS相場)を使用した。

注:共通農業政策(CAP:Common Agricultural Policy)
 EU加盟国で共通して講じられている農業政策であり、(ア)農業者の所得を保証するための価格・所得政策、(イ)EU加盟国間・地域間の経済力や生産条件などの格差を是正するための農村開発政策、の二本の柱と、輸出補助金および共通関税などから成り立っている。2008年のヘルスチェック(CAPの実効性を再評価し、CAP政策の合理化・調整を行う取り組み)において、ばれいしょでん粉関連政策が見直され、各種市場支援制度の廃止が決定された。また、2013年6月26日、欧州委員会、欧州議会および欧州理事会の間において、欧州委員会から提出されていたCAP改革案を基に、基本的な規則について合意された。

※・EUの農業政策(農林水産省HP)
 ・2013CAP(共通農業政策:Common Agricultural Policy)改革―主な内容―(ALIC HP)

1.EUのでん粉需給

(1)世界市場におけるEU産でん粉

 2012年の世界のでん粉生産量(でん粉および派生製品)は、全体でおよそ7504万トン(うち、天然でん粉および化工でん粉は約2400万トン)であった。中国やタイといった主要生産国を抱えるアジア地域の生産量が、全体の4割強を占めた。次いで、北アメリカが3割強と続き、EUは1割強となる約1004万トンであった(図1)。
 
 でん粉の割合を地域別で見ると、アジアと南アメリカはコーンスターチとタピオカでん粉が、北アメリカはコーンスターチが主体であるのに対し、EUはコーンスターチが5割弱(約470万トン)のほか、小麦でん粉が4割弱(約390万トン)、ばれいしょでん粉が1割強(約140万トン)であった。このように、EUのでん粉生産は、EUの気象条件が小麦やばれいしょ生産に適していることなどから、トウモロコシなどの特定の品目に依存せず、でん粉原料作物に多様性があることが特色として挙げられる。このことから、EU産でん粉の国際シェアは、コーンスターチが9パーセントであるのに対し、小麦でん粉が78パーセント、ばれいしょでん粉が82パーセントと、それぞれEU産でん粉が主体となっていることも、EUでん粉生産の特色といえる(図2)。
 

(2)EUのでん粉原料作物の供給

ア.でん粉原料作物の生産
 EUのでん粉製造におけるEU産でん粉原料作物のシェアは、95パーセント以上を占め、全体の生産量は、緩やかに増加している。2012年のEUのでん粉原料作物生産を見ると、ばれいしょが680万トン、小麦が760万トン、トウモロコシが770万トンであった。小麦とトウモロコシの生産は増加基調であったが、ばれいしょは減産基調であった(表1)。
 
 
 ばれいしょの減産の背景には、ばれいしょでん粉の生産割当制度(注)により、ばれいしょでん粉の生産が制約されていたことが挙げられる。小麦でん粉とコーンスターチは、ばれいしょでん粉と同様の生産割当が設定されておらず、国際的なでん粉需要の高まりを背景に、原料である小麦とトウモロコシが増産された。EU新加盟国(EU旧加盟15カ国以外の新規加盟国)では、小麦やトウモロコシの生産コストが、旧加盟国に比べ低いこともあり、小麦でん粉やコーンスターチの生産能力に対する新規投資による増強が進んでいる。

注:ばれいしょでん粉の生産割当制度
 EU Regulation 1868/94(以下「EU規則1868/94」という。)において、ばれいしょでん粉の生産量は、各国ごとに割当数量が設定されていた(EU加盟国合計:194万8761トン)。ばれいしょ生産者およびでん粉製造事業者は、割当数量内で生産されたばれいしょおよびばれいしょでん粉に対する補助金(※1)を受けることができたが、割当数量を超過したでん粉には、輸出還付金(※2)が支給されないことから、割当数量以内での生産を行う状況となった。当該割当制度は、2012年6月末で廃止され、生産者補助金(※1)は、2012年7月以降、生産に連動する直接支払制度(※3)に移行し、ばれいしょ生産者に対する支援が継続されることとなった。

 ※1 割当数量内で生産されたばれいしょおよびばれいしょでん粉に対する補助金
・ばれいしょ生産者向け(生産者補助金):ばれいしょ1トン当たり66.32ユーロ(8,845円)
・でん粉製造事業者向け(プレミアム):でん粉1トン当たり22.255ユーロ(2,967円)

  ※2 輸出還付金
 でん粉のほか、農産物全般に幅広く適用されているもの。欧州委員会は、当該還付金制度について、WTOドーハラウンドが決着した際には廃止するとし、でん粉については、2007年12月から交付実績がない状況にある。

  ※3 直接支払制度(coupled direct aid)
 生産者補助金の代替支援として、2012年7月からばれいしょ生産者に対して実施された。2003年のCAP改革において、ばれいしょでん粉1トン相当当たり110.54ユーロ(1万4743円)のうち、60パーセント分(66.32ユーロ:8,845円)が直接支払制度として維持され、残りの40パーセント分(44.22ユーロ:5,898円)は、生産と切り離し(デカップリング)、品目に拠らずに、各農家への過去の重量実績に応じて支払額が決定される単一支払制度(Single Payment Scheme)に移行した。なお、2013年6月のCAP改革案の合意において、ばれいしょ生産者に対する直接支払制度の再導入が正式に認められた。


イ.作付面積および単収
 EUのでん粉原料作物の過去5年平均(2008〜2012年。以下同じ。)の作付面積(ヘクタール)は、ばれいしょが21万786、小麦が131万4758、トウモロコシが106万1804となった。また、過去5年平均の平均単収(トン/ヘクタール)は、ばれいしょで33.9、小麦で5.6、トウモロコシで7.0であった(表2)。

 一般的にばれいしょは、気象変化や害虫や疾病の影響を受けやすく、生産量が不安定である。2008年から2010年のばれいしょの単収は、天候に恵まれ作柄は良好であったことから増加したが、2011年は、乾燥した天候および害虫・疾病の発生により単収が減少した。小麦とトウモロコシの単収は増加傾向にあるが、2012年は、ヨーロッパ地域の天候不順による生育不良が影響し減少した。
 
ウ.農場出荷価格
 ばれいしょの農場出荷価格は、EU規則1868/94に基づき、でん粉含有率に応じて、買取価格(最低価格保証制度:)が設定されていたが、当該保証制度も生産割当制度と同様、2012年6月末で廃止された。近年の買取価格は、でん粉含有率が高かったことから、標準含有率とされている17パーセントの最低買取価格35.56ユーロ(4,756円)を超える状況が続いた。2007/08年(7月〜翌6月)から2011/12年の変動幅は、1.14ユーロ(152円)と大きな変動がなく推移し、2012年の平均出荷価格は、42.56ユーロ(5,676円)となった(表3)。

注:最低価格保証制度
 生産割当制度に基づくプレミアムを受ける条件として、でん粉製造事業者は、ばれいしょ生産者と毎年栽培契約を交わし、当該制度にて設定された最低価格を上回る価格で、ばれいしょ生産者から買い上げなければならないというもの。
 
 小麦およびトウモロコシの農場出荷価格は、ばれいしょと同様の最低保証価格制度が無いことから、2008年から2012年の間の変動幅は、小麦で141.77ユーロ(1万8908円)、トウモロコシで130.07ユーロ(1万7347円)と、ばれいしょに比べて大きなものとなった。国際価格高騰による作付面積の増加や良好な天候などを背景に、下落基調に転じた2008年の農場出荷価格は、2009年から2010年前半まで、天候に恵まれ、作柄も良好であったことから大きな変動はなかった。しかし、2010年後半には、天候不順による作柄不良や、ロシアでの小麦やトウモロコシなどの輸出禁止措置(2010年8月)を受けて上昇基調に転じ、その後一旦、下落基調となったものの、2012年には米国での高温・乾燥の影響などから、国際相場の高騰とともにトウモロコシ価格は高騰し、小麦価格もトウモロコシに追随する動きとなった(図4)。
 

(3)EUのでん粉需給

ア.でん粉生産量
 EUのでん粉生産は、ばれいしょでん粉が減少傾向となるなか、小麦でん粉とコーンスターチが増加し、2010年には全体で前年比6.5パーセント増の990万トン、2011年以降は1000万トンを超えた(表4)。
 
 図3のでん粉原料作物生産割合と図5のでん粉別生産割合とで比較すると、2012年では、原料作物生産割合(パーセント)が、ばれいしょ30.8、小麦34.8、トウモロコシ34.4であるのに対し(図3)、でん粉別生産割合(パーセント)では、ばれいしょでん粉14.0、小麦でん粉47.0、コーンスターチ39.0となった(図5)。このばれいしょの歩留まりの低さは、ばれいしょでん粉の生産コストが高い要因となっているが、ばれいしょでん粉製造事業者へのプレミアムが廃止されたことにより、小麦やトウモロコシとの価格競争力が弱まり、ばれいしょでん粉の減産要因の一つとなっている。
 
イ.でん粉消費量
 EUのでん粉消費は、過去5年平均で、天然でん粉が210万トン、化工でん粉が180万トン、糖化製品が510万トンと、近年、全体で900万トン弱で推移している。EUでは、糖化製品での利用が過半を占め、そのうち、ブドウ糖シロップが420万トン、ポリオール(低カロリー甘味料)および粉末ブドウ糖がそれぞれ40万トン、マルトデキストリンが20万トンとなった。用途別の消費について見ると、菓子・飲料向け3割強、加工食品向け3割弱、製紙・段ボール向け3割弱、その他1割強となった(表5、6)。

(主な用途)
・菓子・飲料: ベーカリー製品、飲料、菓子(チョコレート、デザート類)など
・加工食品: ジャム、ゼリー、冷凍食品、インスタントスープ・ソースなど
・薬剤・化粧品: 歯磨粉、錠剤、液体薬、乳液、クリーム、化粧品など
・製紙・段ボール: 紙袋、ティッシュ、包装紙、段ボール、文房具など
・その他非食品: 発酵食品添加物、粘着剤、接着剤など
 
 
ウ.でん粉卸売価格
 天然でん粉の卸売価格は、原料作物価格に連動する傾向にある。2008年後半以降、卸売価格は下落基調に転じたあと、2009年および2010年は、大きな変動がなく推移した。その後、原料作物価格の上昇に併せて、天然でん粉も上昇基調に転じた。

 化工でん粉の卸売価格は、天然でん粉よりも原料作物価格との関連性は低い。エステルおよびエーテル化でん粉では、緩やかな軌跡を示しているものの、デキストリンでは、価格変動幅も大きく、動きも比較的大きい状況にある。これは、天然でん粉と違い、化工でん粉は、物理的・化学的な処理コストが反映されることで、天然でん粉に比べて高額となるとともに、用途が特化されることから、化工でん粉の需給バランスが価格に反映されやすい傾向にあるためである(表7、図6)。
 
 
エ.でん粉の輸出入

 ① 天然でん粉

 EUの天然でん粉は、年間生産量1000万トンに対して、EU域外からの輸入量が過去5年平均で4万6000トン程度であり、純輸出地域である。しかし、世界のでん粉年間生産量7500万トンに対し、EU域外への輸出量は、過去5年平均で53万6000トンと少なく、国際的な天然でん粉需給におけるEUの影響は、比較的軽微であるといえる(表8)。

 ばれいしょでん粉は、過去5年平均の輸出量が37万8000トンと、EUからの天然でん粉輸出53万6000トンの7割を占めているのが特徴である。輸出先を見ると、韓国と米国がそれぞれ1割程度を占め、4〜5万トン前後の輸出量となった。小麦でん粉の輸出量は、近年、3〜6万トン程度で推移しており、スイスが輸出量の5割弱のシェアを占めた。コーンスターチは、アルジェリア、チュニジア、スイスといったEUの近隣諸国への輸出が中心となっているが、輸出量はそれぞれ5,000トン前後となった。

 輸入は、過去5年平均で4万6000トンとなるが、その6割以上がタピオカでん粉、3割がコーンスターチであった。タピオカでん粉の輸入の9割はタイ産で、コーンスターチの輸入は、米国産、セルビア産、インド産などで、いずれも2,000〜4,000トン程度となった(表9)。

 
 
 ② 化工でん粉
 EUの化工でん粉は、EU域外からの輸入量は天然でん粉よりは多いものの、過去5年平均で12万8000トン、域外輸出量は天然でん粉よりも少なく、過去5年平均で43万9000トンとなっている(表10)。輸出の内訳を見ると、エステルおよびエーテル化でん粉が、全体の3/4のシェアを占めた。輸出先を見ると、中国とロシアがそれぞれ1割強のシェアを占め、4〜5万トン程度の輸出量となった。近年、トルコ向け輸出量が減少傾向にあったなか、2012年は、日本が中国、ロシアに続く4万1000トンと1割のシェアを占めた(表11)。
 

2.EUのでん粉関連政策の動向と今後の生産の見通し

(1)ばれいしょでん粉生産にかかる支援制度の廃止に伴う影響

 2008年のヘルスチェックにおいて、2012年6月をもって、ばれいしょでん粉分野向けの各種支援制度( ①生産割当制度、 ②でん粉原料用ばれいしょの最低保証価格、 ③ばれいしょ生産者に対する生産補助金およびでん粉製造事業者に対するプレミアム)の廃止が決定された。これを受けて、同年7月以降、EUのばれいしょ生産は、割当数量による制約がなくなり、ばれいしょ生産者は生産者補助金を、でん粉製造事業者はプレミアムをそれぞれ受け取ることができなくなった。

 当初、各種支援制度の廃止は、ばれいしょ生産およびばれいしょでん粉製造に多大な影響を与えることが予想されたが、2013年6月のCAP改革案の合意において、生産に連動する直接支払制度の再導入が正式に認められたことで、ばれいしょ生産者は、この直接支払が期待できる間は、でん粉製造事業者の買取価格の動向を見極めて生産を維持する状況が続くものと考えられる。

 一方、でん粉製造は、2012年7月以降、プレミアムが無くなったことで、小麦でん粉やコーンスターチに対するばれいしょでん粉の価格競争力が低下し、ばれいしょでん粉から小麦でん粉やコーンスターチへの移行が懸念される状況にある(業界調べによる製造コストを比較すると、ばれいしょでん粉の製造コストは、小麦でん粉の6割増し、コーンスターチの3割増しの状況)。製紙産業といった各々のでん粉の特性よりも調達価格を重視する産業では、製品価格の変動の影響が顕著に現れ、でん粉業界の予測では、2013年から2016年の間で、ばれいしょでん粉利用量の3割(EUにおけるでん粉利用量全体の5%)が、小麦でん粉およびコーンスターチに移行すると見込み、ばれいしょでん粉生産量の36パーセント相当の削減につながると試算している。この値は、欧州でん粉産業協会が、CAP改革の影響として見込んでいた最大40パーセントの減産に近いレベルとなっている。

(2)砂糖の生産割当制度の廃止に伴う影響

 EUでは、1968年より砂糖制度()による生産管理が始まり、1977年には異性化糖が新たにその対象に加わった。当初、異性化糖の生産割当数量は、年間30万3015トンであったが、2005年の砂糖制度改革で、69万441トンまで増加した。だが、当該割当量は、砂糖全体の生産割当数量1330万トンの5パーセント程度であった。

 これらの生産割当制度は、2011年のCAP改革案において、2014/15年度末での廃止が提案されたものの、2013年6月のCAP改革案の合意により、2016/17年度末まで延長されることになった。一般的には、EUの異性化糖の製造コストは、その他の砂糖類の製造コストよりも低いとされ、2017年の生産割当制度の廃止以降、異性化糖の生産量は、大幅に増加するものと見込まれている。欧州でん粉産業協会では、小麦でん粉およびコーンスターチ由来の異性化糖の生産量および消費量は、割当数量である69万トンから、200〜300万トンまで増加すると試算している。

注:砂糖制度
 栽培農家と製糖業者の価格維持を目的に、 ①介入制度 ②生産割当制度 ③ACP(アフリカ・カリブ海・太平洋)諸国からの砂糖の再輸出など−を中心に運用されてきたが、2005年11月、従来制度が見直され、てん菜生産者への補償や再構築スキームの創設などの新たな措置が執られることになった。

※・EU砂糖制度改革案の内容とその影響について (ALIC HP)
 ・EUの糖業事情(1)〜砂糖制度改革とその影響について〜 (ALIC HP)

(3)EUのでん粉原料作物の生産およびでん粉生産の見通し

 2012年7月以降、製紙産業などを中心に、ばれいしょでん粉から、より廉価な小麦でん粉などへの移行が見込まれるなか、2015年には、ばれいしょでん粉の生産量は、過去5年平均の生産量140万トンから36パーセント減の90万トンとなることが予測される(国内消費量:30万トン減、純輸出量:20万トン減)(表12)。これは、でん粉用ばれいしょ生産量250万トンの減産に相当し、過去5年の平均単収(33.9トン/ヘクタール)で計算すると、作付面積は7万6700ヘクタールの減少となる。

 このばれいしょでん粉50万トンの減産により、小麦80万トンおよびトウモロコシ100万トンの増加が予測されている。しかし、欧州委員会によれば、短期的には需要の伸びに対して小麦およびトウモロコシ生産の伸びが追い付かず、在庫量が低水準な状態が続き、輸入量は増加するとしている(表13)。
 
 

まとめ

 EUのでん粉生産は、コーンスターチだけでなく、小麦でん粉やばれいしょでん粉もそれぞれ主要な地位を確立している。その製品原料作物の多様性から、EUのでん粉生産の安定性は、他の地域よりも比較的高い。でん粉原料作物が、EU域内で自給自足できていることも強みであるといえよう。

 しかし、2012年にばれいしょでん粉製造事業者への支援(プレミアム)が打ち切られたことにより、ばれいしょでん粉およびでん粉用ばれいしょの生産は不安定な状況となりつつある。2012年以降、でん粉用ばれいしょ生産者に対し、直接支払制度が再導入されたことで、でん粉用ばれいしょ生産者の生産意欲は、持続すると考えられるが、一方、プレミアムなどのでん粉製造事業者への支援は廃止されたことから、ばれいしょでん粉の価格競争力は、今後、弱まっていく傾向にあるとみられている。中長期的には、ばれいしょでん粉の需要の一部が、小麦でん粉やコーンスターチにある程度移行すると推察される。新加盟国では、小麦でん粉やコーンスターチ製造に対する投資が進むことなどにより、小麦でん粉およびコーンスターチ、小麦およびトウモロコシの増産も見込まれている。

 このように、現時点においては、EUのでん粉生産は、CAP見直しに伴うプレミアム廃止によるばれいしょでん粉の競争力の低下により、でん粉用ばれいしょおよびばれいしょでん粉の減産、小麦やトウモロコシ、およびそれら由来のでん粉の増産が見込まれている。EUは、わが国のばれいしょでん粉輸入量のほぼ全量を担っていることから、今後のEUのでん粉生産の動向は、ばれいしょでん粉をはじめとしたわが国のでん粉需給に影響を与えることが予想される。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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