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〜JAさつま日置でん粉原料用甘しょ対策プロジェクト〜

でん粉原料用甘しょの生産拡大に向けた取り組み
〜JAさつま日置でん粉原料用甘しょ対策プロジェクト〜

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最終更新日:2014年3月10日

でん粉原料用甘しょの生産拡大に向けた取り組み
〜JAさつま日置でん粉原料用甘しょ対策プロジェクト〜

2014年3月

さつま日置農業協同組合

【要約】

 JAさつま日置では、県および市と連携し、平成24年5月に「JAさつま日置でん粉原料用甘しょ対策プロジェクト」を設置した。同プロジェクトでは、当JA管内のでん粉原料用甘しょ生産が抱える課題を生産者に対する調査により明らかにし、これらの課題の解決に向けて、生産者に対する普及活動などに取り組んでいる。

はじめに

 JAさつま日置がある日置エリアは鹿児島県の薩摩半島の中西部に位置し、地区の西側は日本三大砂丘のひとつである吹上浜に、東側は鹿児島市に面している。

 管内の西側が東シナ海に面していることから、海洋性の気候条件の下にあり、お茶、早期水稲、甘しょ(でん粉原料用・酒造用)、かんきつ類、野菜などの園芸と共に、肉用牛、肉豚、ブロイラーなどの畜産業も盛んである。台風が多い鹿児島県の防災作物でもある甘しょは、当JA管内でも古くから生産されている。

 当JAでは、でん粉原料用甘しょの生産量の向上と、でん粉工場への原料安定供給を目標に、平成24年5月、「JAさつま日置でん粉原料用甘しょ対策プロジェクト」を設置した。本稿では、同プロジェクトにおけるでん粉原料用甘しょの生産量の向上に向けた取り組みを紹介する。
 

1.JAさつま日置でん粉原料用甘しょ対策プロジェクトの概要

 当JA管内のでん粉原料用甘しょ生産が抱える課題として、 1)生産量の向上(単収向上・面積拡大) 2)工場への安定供給(3)生産者の高齢化・担い手問題−がある。そこで、当JAでは、県(鹿児島地域振興局・南薩地域振興局)の協力を得て、平成24年5月に「JAさつま日置でん粉原料用甘しょ対策プロジェクト」(以下「プロジェクト」という)を設置した。当JA管内に適した甘しょ栽培指針を構築し、生産量(単収)の向上を図ることが工場への原料の安定供給につながるとして、主に栽培技術の改善に向けて取り組んでいる。

(1)構成メンバー
 構成メンバーは、当JAのほか、県(鹿児島地域振興局・南薩地域振興局)と市(いちき串木野市、日置市、南さつま市)である。なお、市は平成25年産からの参加である。

 プロジェクトでは、当JAの常務、参事、営農部長などと県地域振興局、市町村の担当者で構成する「方針・方策決定会議」において、「JAさつま日置地域でん粉原料用甘しょ生産に関する方針・実行策」を決定し、JA営農センターや県地域振興局の普及員などを構成員とする「プロジェクト実践班」において、同方針・実行策を実行する体制となっている(図2)。

(2)活動目標
 活動目標は、「安定的・継続的担い手の確保(生産量の確保・営農の継続性)」「指導方針の周知徹底に向けた組織の育成強化」「計画出荷体系の確立(配分・輸送・作付体系と早進化への対応策)」の3点である。

(3)活動内容

(ア)現状分析による課題の明確化
 当JA管内の甘しょ生産が抱える技術的課題および生産構造的課題の解決に向けて、実態把握を行うため、生産者を対象とした調査を実施する。 

(イ)指導体制の構築
 JA指導員の育成と県機関との連携強化による栽培技術の高位平準化に向けて、生産指導講習を実施する。 

(ウ)面積確保対策
 農地流動化対策として、担い手への農地の集積やJAによる中間管理などを推進する。
 

2.プロジェクトの活動

(1)でん粉原料用甘しょ生産の状況と課題把握
 プロジェクト活動の1つとして、平成24年に、当JA管内におけるでん粉原料用甘しょ生産の状況把握・課題整理を行うため、生産者を対象に「でん粉原料用甘しょ栽培状況調査表」(図3)により調査を行った。

 調査内容は「現品種の導入時期と種イモの更新状況」「育苗の方法(ハウス・トンネル・露地(マルチのみ))」「種イモの伏せ込み時期(1〜3月)」「作式(うね幅・株間)」「マルチ栽培または露地栽培(比率)」「施肥量」「植え付け時期」「病害虫発生状況」であり、管内生産者371件を対象に調査し、318件から回答を得た。

 調査結果から当JA管内の状況として、 1)5月以降の定植が中心であること 2)無マルチ栽培が多いこと 3)種イモ更新の状況(4)病害虫の被害状況−などが分かった。
 
(2)生産者への普及活動
 プロジェクトでは、 1)早期定植 2)マルチ栽培 3)種イモの更新 4)適期の防除−の推進を生産者へ普及することが生産量の向上につながると考え、このうち 1)〜 3)を「甘しょ収量アップ3つのポイント」と位置付け、プロジェクト活動の中心に据えて、生産者に対する普及活動の取り組みを行っている。

(ア)早期定植
 調査の結果、当JA管内における定植の時期は、5月以降が中心であることが分かった(表1)。甘しょは、植え付け後3カ月から肥大が本格的に始まるが、肥大に大きく関係する日射量は、9月以降下降する。よって、植え付けが遅くなるほど、肥大の条件も悪くなり、同じ150日栽培しても4月植えと5月植えでは収量に大きな差がある。

  4月から5月上旬の定植に取り組む生産者を拡大するため、早期定植の利点を伝える栽培管理チラシを作成するとともに、でん粉原料用甘しょ要件審査申請手続き説明会などで、栽培の注意点などを説明するための講習会などを開催し、早期定植を推進している。
 
 
(イ)マルチ栽培
 マルチ栽培は、資材コストが発生するなどの理由から、当JA管内では全体面積の約3割にとどまっている。甘しょの1株当たりの個数は、植え付け30日以内に決定する。地温が高いと根張りも良く、甘しょの個数も多い傾向にあることから、マルチを張り、地温を確保することが多収につながる。

 早期定植・単収向上を実現するためにはマルチ栽培は欠かせず、生産者の負担を解消するため、資材購入助成を行い、導入の後押しを行った。また、栽培管理チラシにてマルチ資材活用の有利性について生産者へ説明し、継続して導入・普及活動を行っている。
 
(ウ)種イモ更新
 調査の結果、ほとんどの生産者で種イモの更新がなされておらず、約9割の生産者が自家育苗を行っていることが分かった(表2)。このことから、種イモ用のウィルスフリー苗の供給・導入助成に取り組んでいる。

 ウィルスフリー苗は病害対策・単収向上という利点はあるが導入経費が掛かるため、普及が進んでいなかったものを、通常の苗と同等で購入できるように購入助成を実施し、当JA育苗センターで培養した苗を供給している。生産者には種イモ用として植え付けてもらい、数年を掛けて種イモの更新を拡大していく計画である。
 
(エ)分かりやすく、タイムリーな栽培注意喚起
 生産者への普及啓発に当たっては、写真や図を活用した分かりやすい資料を心掛けて、 1)防除の時期には、害虫の発生予察に基づく防除適期情報 2)梅雨明け時期の土寄せ情報 3)種イモ採取の注意点−など、タイムリーな注意喚起のための情報チラシ(図4)を作成して、生産者へ配布している。

 プロジェクトでは、 1)生産者・JA・関係機関が一体となった甘しょ生産の情報共有 2)栽培注意チラシでの分かりやすく、タイムリーな情報提供 3)各種助成による資材導入コストの生産者負担の軽減−などに取り組んでいる。

 生産者からは「いろいろな助成があり導入しやすくなった」「チラシを見て適期に対応ができる」との意見もいただいている。しかしながら、プロジェクトの一番の狙いである生産量の向上については、「前年より収量が増えた」との声がマルチの活用やウィルスフリー苗を導入した生産者からは聞くものの、地域全体の改善までは至っていない。早急に結果が出ることではないが、今後継続した取り組みによって改善を図りたいと考えている。
 

おわりに

 平成25年産からは、本プロジェクトに各市の担当者にも参加をいただいており、今後は生産者の高齢化や担い手問題・農地の問題など、より一層地域が一体となって、でん粉原料用甘しょ生産の課題解決へ向けて取り組んでいく必要がある。

 鹿児島では昔から、「カライモと相撲は取ってみないと分からない」との言葉を聞くが、地域に適した栽培方法を確立することで「多収量を確保し、生産者が安心して継続的にでん粉原料用甘しょを生産できる環境づくり」が実現するよう、本プロジェクトの取り組みを進めていきたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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