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サイクロデキストリンの特性と利用について

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最終更新日:2014年4月10日

サイクロデキストリンの特性と利用について

2014年4月

塩水港精糖株式会社 バイオ事業部長 石川 正樹

【要約】

 サイクロデキストリンは、ばれいしょやトウモロコシなどのでん粉類を原料として製造される食品素材である。サイクロデキストリンは物質を包接することにより、その物質の性質を変えることができ、食品への利用をはじめ、医薬品・化粧品さらには工業製品に至るまで幅広く利用されている。

はじめに

 精糖メーカーである当社は事業多角化の取り組みとして、糖質研究所の基礎研究を礎として糖質ファインケミカル分野の事業化を進めている。その中でも「サイクロデキストリン」(以下「CD」という)は最も早くから取り組んでいる素材で、食品への利用をはじめとし、医薬品・化粧品さらには衣料繊維・塗料などの工業製品に至るまで幅広く利用されている。本稿では、サイクロデキストリンの特性などについて紹介する。

1.サイクロデキストリンとは

 砂糖は生活する上で不可欠な調味料であるが、CDは食品の付加価値を高める素材であり、私たちの食生活をより豊かにする機能性素材である。

 CDは、発見当初「魔法の粉」とも呼ばれ、ブドウ糖が環状に結合したドーナツ状の構造を持ち、極めてユニークな性質や機能を示すことから大変注目を集めた。当社では30年前から本素材の研究開発を開始し、その後、製糖技術をベースに量産化に成功し事業化に結び付けている。

 CDは別名「環状オリゴ糖」ともいい、一般消費者にはなじみの薄い名前であるが、ばれいしょやトウモロコシなどのでん粉類を原料として製造される安全な食品素材である。CDは 1)変質しやすい食品素材を安定化させる 2)苦味や異臭を抑えて食べやすくする−などの機能を有していることから、食品分野では幅広く使われている。飲料、菓子類や漬物、総菜食品などのほか、香辛料などの調味料関係にも使用されているが、特に健康食品分野では、機能性素材を生かす上で欠かせない素材となっている。食品の原材料に「環状オリゴ糖」と書かれた商品は、CDが何らかの目的で使用されている商品である。

 CDは、でん粉に酵素(CD生成酵素)を作用させ、酵素の転移反応によりブドウ糖が環状に結合したオリゴ糖である。工業的に製造されているCDとしては、6個のブドウ糖を結合したα−CD、7個のブドウ糖を結合したβ−CD、8個のブドウ糖を結合したγ−CDがある(図1)。近年は各ブドウ糖の水酸基の一部を、メチル基やヒドロキシプロピル基に置換した化学修飾CD、CDの環状構造に酵素の作用でマルトースの枝を加えた分岐CDなどの誘導品も工業生産されるようになっている。
 

2.サイクロデキストリンの特性

 CDは、環状構造の内側が親油性、外側が親水性を持ち、空洞内に各種のゲスト分子を取り込むことから、包接性を持っている。CDは、種類に応じて0.5〜1ナノメートルの内径を持ち、取り込むゲスト分子の大きさに応じて、強固に、あるいは、ゆるやかに、さまざまな結び付きを示す。通常、水と油が混ざり合うことはないが、CDを加えることで、CDが油の分子を包接し、水に溶け込ませることができる(図2、3)。
 
 
 当社では、純度98パーセント以上のα、β、γ−各種CD高純度品から、用途に応じて各CD含有量を変えたCDミックス品、溶解性を飛躍的に向上させて飲料などへの利用を高めた分岐CDなどの商品を総合展開している。さらに、これらのCDにさまざまな成分(ワサビ・マスタード・抹茶・レモン・アーモンドなど)を事前に包接し、粉末化することで使いやすくしたCD包接品(図4)も幅広く取りそろえている。
 

3.サイクロデキストリンを利用した商品開発

 当社は、CDを開発型商材と位置付け、ユーザーの要望に応え、時にはユーザーと協力しながらCDを利用した商品開発を進めている。最近では、溶解力と包接力が格段に優れた高純度の分岐CD(マルトシル−β−CD)が大手化粧品会社の液状デオドラント(体臭や汗の臭いを抑える薬剤)に採用され、いい香りが長時間持続できるという機能を加えたり、香料の包接品をリップクリームに添加し、ベースの香りにさらに別の香りが後からふわっと香るような機能性も実現している。

 CDは健康食品分野でも素材を包接することにより、安定性と吸収性を高めることができることから、コエンザイムQ10、α−リポ酸、アスタキサンチン、各種ビタミン類などさまざまな機能性素材に応用されている。

 当社でも、血糖値上昇抑制、脂肪の蓄積抑制、腸内環境改善などの効能を持つサラシア属植物抽出エキスをCDに包接した製品を展開している。サラシア属植物は、インドやスリランカなどの亜熱帯地域に自生するつる性の植物で、現地では古くから貴重な植物として健康維持のために利用されている。この植物にCDを利用することにより、味質を改善した上、溶解性を高め、飲みやすい製品を実現していることから、商品設計の幅を広げ、利用商品のリピーター顧客も増やしている。

 さらには、これまで蓄積した糖・CD製造の技術を生かして、「CDラップ技術」も開発している。例を挙げると脂溶性成分・素材をCDで包み込んで、酸化や、紫外線による色素成分の変色、熱による栄養成分の崩壊を防ぐ技術である。アスタキサンチンや抹茶の色素安定効果、ちくわの焼成工程におけるDHAの耐熱性向上などが確かめられており、食品、機能性食品、化粧品などの分野で市場開拓を進めている。

おわりに

 当社では、今後も糖質研究所と営業部隊の連携により、CDに対する幅広い分野のユーザーの要望に応えるとともに、CDの利用開発に努め、CD事業をオリゴ糖事業とともに当社の糖質ファインケミカル事業の核に育成してまいりたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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