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種子島におけるでん粉原料用かんしょのバイオ苗普及の取り組み

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最終更新日:2014年6月10日

種子島におけるでん粉原料用かんしょのバイオ苗普及の取り組み

2014年6月

鹿児島事務所 谷 貴規

【要約】

 種子島では生産者数および作付面積の減少に伴い、でん粉原料用かんしょの生産量が減少している。このような中、JA種子屋久では関係機関と連携し、収量面でメリットの大きいバイオ苗を生産者に供給することで、健全な種いもによる健苗育成を支援し、でん粉原料用かんしょの生産性向上を図るため、育苗施設の整備や生産者に対する購入助成を行うなど、バイオ苗の普及に取り組んでいる。

はじめに

 種子島におけるでん粉原料用かんしょは、台風などの気象災害に強く、輪作体系や防災営農上欠かせない作物である。しかしながら、近年、生産者数および作付面積の減少により、でん粉原料用かんしょの生産量は、平年作となった平成25年産では 3万4031トンと、不作であった19年産の 3万9347トンと比べても14.5%減少しており、生産性の向上などによる増産が課題となっている。

 本稿では、JA種子屋久などが中種子町において実施しているバイオ苗(注)普及の取り組みを紹介する。

(注)本稿では、メリクロン技術(茎頂培養)により培養し、育苗および増殖された苗を「バイオ苗」(茎頂培養苗)とし、バイオ苗から生産された種いもを利用して増殖した苗を「バイオ苗など」という。

1.中種子町の概要

 中種子町は、鹿児島県大隅半島南端から約40キロメートル南の種子島の中南部に位置する。北は西之表市、南は南種子町に隣接し、東西7キロメートル、南北22キロメートルで、総面積137.78平方キロメートルである。地勢は一般に穏やかな丘陵地で、北部には山林地帯が広がり、町中央部から南部にかけて比較的平たんな耕地が多く、総人口(国勢調査、推計人口調査(平成24年10月1日現在))は8556人である。平均気温は19.2度で、温暖な気象条件を利用してかんしょ、サトウキビ栽培が盛んである。農家人口が3049人(平成22年農林業センサス)と総人口の35.6%を占める農業の町である。
 

2.中種子町のでん粉原料用かんしょ生産の状況

 中種子町におけるでん粉原料用かんしょの交付金交付対象生産者数の推移を見ると、生産者交付金制度開始初年産の平成19年産には1109名であったが、年々減少を続け、25年産では651名となり、19年産比で41.3%減少している(図2)。また、作付面積は19年産には795ヘクタールであったが、25年産では544ヘクタールとなり、19年産比で31.6%減少している。中種子町の減少率は、鹿児島県の減少率(交付金交付対象生産者数40.6%、作付面積15.2%)と比較しても高い値であり、特に作付面積は大きく減少している。この要因としては、高齢化による離農や担い手不足に加え、青果用かんしょへの転換が進んだことなどが挙げられる。

 こうしたことから、単収が10アール当たり約3.1トンと、平年並みに回復した平成25年産においても、生産量は1万6737トンにとどまっており、平成19年産の1万9537トンと比べ、14.3%の減少となっている(図3)。このため、さらなる単収向上により生産量を確保することが求められている。
 
 

3.バイオ苗の普及の取り組み

 JA種子屋久および関係機関は、こうしたでん粉原料用かんしょの生産量減少に伴うでん粉工場の操業率低迷という厳しい状況を改善するため、土壌酸性化対策に加え、慣行苗と比べ2割程度増収するバイオ苗の普及による健苗育成など、基本的栽培技術の励行を推進することによる単収の向上に取り組んでいる。

(1)取り組みの概要

ア. バイオ苗育苗施設の整備
 JA種子屋久は、平成22年度に国の経営体育成交付金を活用して、中種子町内にかんしょの育苗施設(ビニールハウス)19棟(4932平方メートル)を整備した。事業費4698万円で国2分の1、同町4分の1の助成により整備されている。

 JA種子屋久では既存施設を含め、年間20万本のでん粉原料用かんしょのバイオ苗を供給することを目標に掲げ、生産者の育苗作業の軽減および優良種苗の供給などを推進している(バイオ苗の育苗・増殖の流れは巻末の「JA種子屋久におけるバイオ苗の育苗・増殖の流れ」を参照)。
 
イ. 生産者に対する購入助成
 生産者のバイオ苗購入に対しては、行政、JA種子屋久およびでん粉製造事業者の3者が経費補助などの支援を行っている。中種子町では、町の農林水産業の振興を図るため「でん粉用さつまいも増産対策事業」を措置し、JA種子屋久が実施しているバイオ苗の育苗・増殖に要した経費の一部を補助している。また、JA種子屋久も同経費の一部(1本当たり約10円)を負担することにより、生産者への販売価格を1本当たり10円に減額している。

 さらに、平成24年度からは、島内のでん粉製造事業者が原料を安定的に確保するため、1本当たり4円の補助を行っており、生産者は、1本当たり6円でバイオ苗を入手することができるようになっている。

ウ. 普及啓発
 JA種子屋久および関係機関では、各種研修会や各地区の生産者大会で、普及啓発資料の配布を行うなど、バイオ苗の普及啓発に取り組んでいる(図4)。
 

(2)バイオ苗の販売状況

 JA種子屋久におけるバイオ苗の販売本数は、年々増加している。特に、平成25年度は、関係機関の普及の取り組みが浸透したことなどで、 17万4000本と大幅に増加しており(図5)、JA種子屋久が目標としている販売本数の20万本に近づいている。

 購入生産者数も年々増加し、平成25年産では257人と、交付金交付対象者数の約4割を占めるに至っており、バイオ苗が生産現場に定着しつつある。
 

(3)今後の見通し

 JA種子屋久は、目標販売本数を20万本とし、幅広く普及するため生産者1人当たりに500本を上限に販売する予定である。

  JA種子屋久では、販売したバイオ苗の全てを次年産の種いも用として使用するよう生産者を指導している。バイオ苗1本から取れる種いもが約3個であることから、バイオ苗を種いも用として使用することにより、500本のバイオ苗から50アールのほ場分の苗が賄えることとなる(図6)。  

 他方、現在の供給体制では、採苗を行う作業員の確保が難しく、一度に大量の注文が入ったときなど適期採苗ができないという課題がある。このため、注文前に採苗しても枯れないよう採苗後の苗の保管方法の改善などにより、適期植え付けに健苗を供給できる体制を整える予定であるという。
 

4.バイオ苗を使用している生産者の声

 中種子町の専業農家である寺田洋一郎さん(79歳)は、夫婦でバイオ苗などを使用したでん粉原料用かんしょやサトウキビなどを栽培している。

 寺田さんの平成25年産のでん粉原料用かんしょの作付面積は、1.9ヘクタールである(表)。これは、中種子町(0.8ヘクタール)および県(0.9ヘクタール)の平均作付面積の2倍以上となっている。

 寺田さんは、単収向上および作業労力の軽減から作付け品種の切り替えを行おうとしたところ、JA種子屋久がその品種を取り扱っていたことがきっかけで、バイオ苗を使用するようになった。バイオ苗は、前年の8月頃JA種子屋久から購入し、病害を抑制する観点から水稲の収穫後の田に植え付けをして種いもを準備する。2月上旬から露地栽培による種いもの伏せ込みを始め、1ヘクタールのほ場にバイオ苗などを植え付けし、当年産として収穫している。

 「バイオ苗などを使用し始めてからは目に見えて発育が良く、単収が上がった。特に、不作年でも減収幅が慣行苗よりも少ないと感じる」と話し、今後も継続してバイオ苗を使用する意向であった。寺田さんの単収は、中種子町の平均と比べて上回っており(図7)、これについては、寺田さん自身のほ場管理技術が優れていることはもちろんであるが、寺田さんは「バイオ苗などを使用していることが大きな要因」と語っていた。
 
 

おわりに

 種子島におけるでん粉原料用かんしょは、島の経済を支えるとともに、サトウキビとの輪作や防災営農上欠かせない重要な作物である。でん粉原料用かんしょを取り巻く情勢は、ここ3年の不作により厳しいものとなっているが、JA種子屋久および関係機関のバイオ苗普及の取り組みが浸透したことなどで平成25年産の単収が平年並みに回復し、生産回復の兆しが見えてきた。昔から「苗半作」という言葉があるとおり、でん粉原料用かんしょの生産には健苗育成が必要不可欠なことから、バイオ苗普及の取り組みが島外にも広がり、でん粉原料用かんしょの安定確保、ひいては国内産かんしょでん粉の増産が図られるよう期待したい。

 最後にお忙しい中、本取材に当たりご協力いただいた関係者の皆さまに心から厚く御礼申し上げます。
参考文献
谷貴規(2013)「でん粉原料用かんしょ栽培におけるバイオ苗の民間企業などの取り組み」『砂糖類・でん粉情報』(2013年 8月号).(独)農畜産業振興機構
遠藤秀治(2014)「種子島におけるでん粉原料用かんしょの単収向上に向けた取り組み」『砂糖類・でん粉情報』(2014年
1月号).(独)農畜産業振興機構

 
〜JA種子屋久におけるバイオ苗の育苗・増殖の流れ〜

 JA種子屋久は、バイオ苗を毎年9月に鹿児島県経済農業協同組合連合会野菜花き優良種苗増殖センターからセルトレイで1500本購入している。


 バイオ苗は、セルトレイからポットに移植して育苗する。購入時の9月頃は、台風が襲来する恐れがあるため、初期段階の育苗・増殖期間はガラスハウスで管理し、徐々にビニールハウスに移行し定植する。ハウス内は、生産本数を多くするため、生育適温の25〜30度より高めの30〜35度とし、2〜3月の低温期は、トンネル被覆資材などを利用して朝晩においても15度程度に維持できるように管理されている。

 ポット苗に移植してから約1カ月経過(40センチに成長)したところで2〜3節残し採苗する。採苗した苗は、殺菌のため水和剤に20〜30分漬け込んで成長点が残るようさらに2〜3節ずつ切り、ポット移植した苗をガラスハウス内に搬入またはビニールハウス内に定植し育苗・増殖する工程を繰り返し行う。採苗頻度は、1〜3月は3週、4月は2週、5月は10日に1回程度である。販売形態は、5〜8月にかけて慣行苗と同様に長さ25〜30センチメートル、節数7〜8節、重さ20グラム以上のものを100本1束で生産者に販売している。

 育苗・増殖に用いる肥料は、ポット段階では野菜用にも使用するリン、窒素、カリウムが主成分となる2種類、定植では10アール当たり2トンの堆肥などを利用する。加えて、定植では、トンネルを張りその中に保水・保湿およびバイオ苗を活着促進させるためシートをかぶせる工夫をしている。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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