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〜素材提供型の農業から高付加価値型農業の展開を目指して〜

大隅加工技術研究センターのオープン
〜素材提供型の農業から高付加価値型農業の展開を目指して〜

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最終更新日:2015年5月11日

大隅加工技術研究センターのオープン
〜素材提供型の農業から高付加価値型農業の展開を目指して〜

2015年5月

鹿児島県大隅加工技術研究センター
所長 岩元 睦夫

はじめに

 鹿児島県は、豊かな自然環境の下、わが国の食料供給基地として良質で豊富な農林水産物を産出してきている。

 特に農業は、南北600キロメートルに広がる県土において、畜産、園芸を中心に多彩な生産活動を展開しており、食品関連産業や観光産業と密接に結び付いた県経済を支える基幹産業となっている。

 国内の人口減少と少子高齢化が進行している中、当県の農業が将来に向けて、持続的に発展していくためには、国内市場はもとより、世界市場も視野に入れた高い生産能力と農産物の付加価値を高める戦略的な展開が不可欠であり、そのためには研究・開発の一層の強化が重要である。

 本稿で紹介する「大隅加工技術研究センター(以下「研究センター」という)」は、素材提供型の農業から一次加工などによる高付加価値型農業への展開を図っていく当県独自のプロジェクトを推進する拠点として、平成27年4月にオープンした。
 

1. 大隅加工技術研究センターとは

 研究センターは、鹿児島県の試験・研究機関として、「 1)加工ライン実験施設」「 2)加工開発実験施設」「 3)流通技術実証施設」「 4)企画・支援施設」の4つの実験・実証施設などで構成されている(図1)。
 
 主な事業として、実需者ニーズに対応した新たな加工・流通技術に関する「研究・開発」と、加工事業者による加工品の開発・試作や販路拡大を後押しする「企画・支援」に取り組むこととしている。

 その中で、県産農産物の付加価値向上に向けて、意欲的に加工・流通に取り組む県内の農業者や加工事業者に施設を開放し、県の研究員などの指導・助言のもと、試験的販売を目的とした加工品の試作などを支援することとしている。これは、加工事業者を対象に実施したヒアリング時における「商品開発などに当たって、必要な加工機器を整備するには新たな投資が必要であり、先行投資せずに試作品づくりに取り組める施設がほしい」といった声などに応える形で整備したものである(図2)。

図2を大きく表示
 

2. 施設の概要

研究センターを構成する4つの実験・実証施設などの概要は以下の通りである。

1) 加工ライン実験施設
 この施設は、一次加工品の製品開発などに限定した施設である。その特長は、加工事業者が日量最大300キログラム程度の野菜などを原料に、実用規模で一次加工品の試作品づくりに取り組め、保健所の許可などを得れば、試作した加工品の試験販売ができる点である。なお、試作する一次加工品の性質から、カット、ペースト、水煮、冷凍を扱う「ウエットライン」と、乾燥物、粉末、フレークを扱う「ドライライン」の2ラインを設けている(図3)。
 
2) 加工開発実験施設
 この施設は、一次加工品と高次加工品の両方の製品開発などができる施設である。その特長は、加工事業者が日量最大10キログラム程度の野菜などを原料に、加工機器を自由に組み合わせ、多様な試作品づくりに取り組める点である。また、加工ライン実験施設と同様、試作した加工品の試験販売ができる「製品開発試作室」を設けている(図4)。
 
3) 流通技術実証施設
 この施設は、予冷庫や貯蔵庫などを配置し、主に県産農産物の品質保持などに関する研究を行う施設である(図5)。
 
4) 企画・支援施設
 この施設は、主に県の研究員が行う基礎研究のための実験室や分析・測定室が整備されているとともに、各種相談・セミナーなどを行う施設である。また、加工事業者が県の研究員の助言・指導を受けながら、加工品の品質検査などができる開放検査室などを設けている(図6)。
 

3. 研究・開発テーマなどの概要

 研究センターでは、県産農産物の付加価値の向上に向けて、 1)加工しても素材が本来有する「色」「風味」「食感」「機能性成分」などを保持し高める加工技術、 2)製造過程で加熱殺菌できない加工食品の汚染微生物を制御する品質保持技術、 3)加工・業務用野菜を含む青果物の長時間貯蔵、長距離流通における鮮度を保持する流通貯蔵技術、などの研究・開発に取り組むこととしている(図7)。

 これらテーマの選定に当たっては、 1)当県農業の振興を図る上で不可欠・重要なものであること、 2)加工事業者や農業者の要請に応えるものであること、 3)次世代を切り拓く、需要拡大や汎用性の見込めるものであること、 4)サプライチェーンの各段階に連動したものであること、などを基本に、当県の「農業」や「食品産業」に関してSWOT分析(企業や事業の現状分析の手法)などを行うとともに、専門家や学識経験者からの指導・助言を受けたところである。

 なお、研究センターでは、加工事業者との共同研究・開発に積極的に取り組み、時宜の課題に対応した技術開発期間の短縮と成果の早期普及に努めることとしている。
 

4. さつまいもの用途拡大に向けた研究・開発

 全国一の生産量を誇る当県のさつまいもは、畑作の基幹作物であるとともに、でん粉産業や焼酎産業と密接に結び付きながら、地域経済を支えている。

 このため、当県では、食物繊維やビタミンなどを豊富に含むさつまいもの用途拡大に向けて、ペースト、ダイス、パウダーなどの一次加工品をはじめ、油加工品、洋菓子、和菓子などの製造技術の研究・開発に取り組んでいる。

 最近では、低温糊化特性を有するでん粉原料用品種や貯蔵性に優れ醸造適性の高い焼酎用品種、食味や加工適性に優れた食用品種などが新たに開発・育成されてきており、商品の付加価値を高めたいと望む関係者の期待も大きい。

 このような状況を踏まえ、研究センターでは、さつまいもの加工処理の中で、素材の特長を保持・向上させる技術の開発に力を入れることとしている。さらには、さつまいもでん粉の食品用途の拡大に向けて、一次加工品と組み合わせた食品の製造技術の開発も進めることとしている。

おわりに

 鹿児島県は、明治初期に8年間にわたりフランスで農業経済を学び、帰国後は農商務省などに勤め、「興業意見」を編さんするなど地方在来産業の育成と振興に尽力した「殖産興業の父」といわれる前田正名(まさな)の出身地である。

 研究センターでは、「技術を生み出し、人を育てる」を合い言葉に、食品企業や大学、公的研究機関などとの共同研究を積極的に進めながら、県産農産物の付加価値向上に向けて、応用範囲の広い、業界をリードする新しい技術の開発などに取り組んでいくこととしている。

 このような取り組みの中で、先人たちが育んできた当県の基幹産業である「農業」と「食品産業」の役割を浮き彫りにし、地域経済の発展に貢献していきたいと考えている。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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