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2. 日本の品目別主要輸入先国の動向

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最終更新日:2016年11月10日

2. 日本の品目別主要輸入先国の動向

2016年11月

 本稿中の為替レートは9月末日TTS相場の値であり、1米ドル=103円(102.98円)、1タイバーツ=3.02円、1ユーロ=115円(114.86円)である。
 

トウモロコシ・コーンスターチ

米国

【需給動向:トウモロコシ】
生産量は下方修正の一方、総消費量は上方修正

 2016年10月時点のUSDA(米国農務省)による2016/17穀物年度(9月〜翌8月)のトウモロコシ需給予測によると、9月時点に比べ作付面積は上方修正された一方、単収が下方修正された結果、生産量は150億5700万ブッシェル(3億8245万トン、前年度比10.7%増)と、2カ月連続で下方修正されたものの、引き続き、記録的な数量となる見込みである。一方、総消費量は、堅調な輸出需要を反映して輸出量が上方修正された結果、145億2500万ブッシェル(3億6894万トン、同6.3%増)となった。

【価格動向:トウモロコシ】
生産者価格は、2カ月連続でわずかに上方修正

 同じく2016/17穀物年度のトウモロコシ生産者平均販売価格は、生産量の下方修正および総消費量の上方修正見込みを受けて、1ブッシェル当たり2.95〜3.55米ドル(304円〜366円)と、2カ月連続でわずかに上方修正された(表2)。
 

表2 米国のトウモロコシの需給見通し

【貿易動向:トウモロコシ】
8月の輸出量は、3カ月連続で前年比増

 2016年8月のトウモロコシ輸出量は、566万9700トン(前年同月比40.5%増、前月比4.1%減)と、3カ月連続で前年同月を上回った(図3)。米国の全国トウモロコシ生産者協会によると、競合国であるブラジルやアルゼンチンの生産が気象条件の悪化による影響を受ける中、日本や韓国の調達が、これまで以上に米国にシフトしていることが背景にあるとしている。一方、国内の在庫が高水準にあるとされる中国向けは、前年同月比、前月比ともに大幅に減少している。同月の国別輸出量は、次の通り。

メキシコ  122万129トン
 (前年同月比10.6%増、前月比9.2%増)
日本   121万9235トン
 (同14.1%増、同15.4%減)
韓国   56万4892トン
 (同62.3%増、同21.9%減)
中国   306トン
 (同92.6%減、同99.5%減)

 なお、同月の輸出価格(FAS(注))は、1トン当たり174.93米ドル(1万8018円、前年同月比4.8%安、前月比4.7%安)と、前年同月を下回った。

(注)Free Alongside Shipの略。貨物を船側に付けた段階で支払われる価格。FOB価格と異なり、横持ち料(倉庫間の移動費)、積み込み料などは含まれていない。
 

図3 米国のトウモロコシ輸出量および輸出価格の推移

【貿易動向:コーンスターチ】
8月の輸出量は、2カ月連続で前年比減

 2016年8月のコーンスターチ輸出量は、6993トン(前年同月比5.6%減、前月比16.0%増)と、2カ月連続で前年同月を下回った(図4)。同月の国別輸出量は、次の通り。

カナダ   3200トン
 (前年同月比5.9%増、前月比18.4%増)
メキシコ  1660トン
 (同44.9%増、同49.8%増)
ドイツ   48トン
 (同83.8%減、同37.1%増)
日本   10トン
 (前年同月輸出実績なし、同64.3%減)

 なお、同月の中西部市場のコーンスターチ価格は、1ポンド当たり3.82セント(3.9円、前年同月比22.7%安、前月比5.7%安)と、2カ月連続で前年同月を下回った。
 

図4 米国のコーンスターチ輸出量および市場価格の推移

タピオカでん粉

タイ

【生産動向】
政府が支援策の拡充を計画

 タイタピオカ取引協会によると、9月下旬のキャッサバの取引数量は、産地の降雨の影響から、低水準で推移している。その一方、現地報道によると、キャッサバ農家価格も、最大の輸出先である中国の需要が一時期に比べ減少していることや、これまでの干ばつに伴いでん粉含有率の低下が見られることから、低水準で推移している。このため、生産者は、さらなる支援策の実施を政府に求めており、政府も厳しい市場環境を考慮して、融資額の増額など、支援策の拡充を計画している。

【価格動向】
国内価格は、下落傾向

 タイタピオカでん粉協会(TTSA)によると、2016年9月第3週のタピオカでん粉の国内価格は、1キログラム当たり11.1バーツ(34円、前年同期比22.4%安、前週同)と、8月に比べ下落している(図5)。
 また、キャッサバ農家価格も、1キログラム当たり1.13バーツ(3.4円)(表1)と、前年同月比、前月比ともに下落している。
 

図5 タイのタピオカでん粉価格の推移

【貿易動向】
8月の輸出量は、2カ月連続で前年比増

 2016年8月のタピオカでん粉輸出量は、24万7158トン(前年同月比32.9%増、前月比53.5%増)と、2カ月連続で前年同月を上回った(図6)。同月の国別輸出量は、次の通り。

中国   12万4538トン
 (前年同月比30.3%増、前月比76.8%増)
インドネシア     3万5915トン
 (同3.3倍、同48.6%増)
台湾   2万1723トン
 (同4.8%減、同1.2%減)
マレーシア      1万6041トン
 (同17.4%減、同10.5%増)
日本   1万2646トン
 (同0.4%減、同2.2倍)

 また、同月の輸出価格(FOB・バンコク)は、1トン当たり357米ドル(3万6771円、前年同月比20.7%安、前月比5.1%安)と、引き続き前年同月を下回って推移している(図6)。
 

図6 タイのタピオカでん粉輸出量および輸出価格の推移

ベトナム

【生産動向】
8月の作付面積は、前年比減少も上方修正の可能性

 ベトナム農業農村開発省によると、2016年8月の調査では、キャッサバの作付面積は、45万719ヘクタール(前年同月比4.7%減)と、北部を中心に前年同月を下回った(表3)。ただし、一部地域は、データ集計が終了しておらず推計値であり、タピオカでん粉製造企業との契約状況を考慮すると、最終的には北部でも前年同月をわずかに上回ると見込まれている。一方、南部では、主要生産地域を中心に、現在、トウモロコシよりも収益性の高いキャッサバの作付けを拡大させる動きが広がっている。しかしながら、サトウキビ価格が上昇していることから、今後は、キャッサバからサトウキビへの転換により、作付面積が減少する可能性も指摘されている。

 8月のタピオカでん粉の生産動向を見ると、主要生産地域である南東地域のタイニンでは、例年より暑季(注)が長く、キャッサバに病害の影響が広がり、単収が減少している。そのため、タピオカでん粉製造工場の稼働率も例年より低くなっている。

(注)1年で暑さの最も厳しい季節。地域により差があるものの、通常4月〜6月。
 

表3 ベトナムのキャッサバ作付面積

【貿易動向】
8月のタピオカでん粉輸出量は、2カ月ぶりに前年比減

 ベトナム税関総局によると、2016年8月のタピオカでん粉輸出量は、16万556トン(前年同月比7.3%減、前月比16.7%増)と、2カ月ぶりに前年同月を下回った(図7)。

 最大の輸出先である中国の需要減少を反映しており、東南アジアの主要輸出先向けも、インドネシアを除き前年同月を下回っている。また、競合するタイから中国や東南アジアへの輸出の増加も、減少傾向の一因とみられている。

 一方、2016年8月のキャッサバチップの輸出量は、12万5353トン(前年同月比9.7倍、前月比2.2倍)と、平年に比べ少なかった過去2カ月の反動から、大幅な増加となった。ベトナムのキャッサバ栽培暦は、地域ごとに差があるものの、おおむね10月頃から収穫が本格化するため、それ以前に、在庫を処理する思惑が働いたためとみられる。しかしながら、最大の輸出先である中国向けは、タイが安価で大量に輸出しており、ベトナムも同様の価格帯での輸出を余儀なくされている。
 

図7  ベトナムのタピオカでん粉輸出量および輸出価格の推移

ばれいしょでん粉

EU

【貿易動向】
8月の輸出量は、2カ月連続で前年比減

 2016年8月のばれいしょでん粉輸出量は、1万6384トン(前年同月比37.8%減、前月比30.3%減)と、2カ月連続で前年同月を下回った(図8)。同月の国別輸出量は、次の通り。

米国   3619トン
 (前年同月比9.4%減、前月比40.4%減)
韓国   2937トン
 (同35.1%減、同52.0%減)
中国   648トン
 (同83.2%減、同59.9%減)
日本   324トン
 (同6.1倍、同47.7%減)

 2016年8月の輸出価格(FOB)は、1トン当たり642ユーロ(7万3830円、前年同月比13.4%高、前月比0.5%高)と前年同月を上回った。
 

図8  EUのばれいしょでん粉輸出量および輸出価格の推移

コラム EU・カナダ包括的経済貿易協定

 欧州委員会のユンカー委員長、欧州理事会のトゥスク議長、カナダのトルドー首相らは10月30日、EU・カナダ包括的経済貿易協定(CETA:Comprehensive Economic and Trade Agreement)署名を発表した。同協定は、2009年に交渉が開始され、2014年に大筋で合意されたものであり、2017年早期の発効を目指している。これを受けて、本稿では、両国(地域)間のでん粉の貿易動向や同協定の内容について紹介する。

1. カナダのEUからの輸入
 まず、カナダがEUから輸入するでん粉に対する輸入関税は、ばれいしょでん粉を除き即時撤廃される(表1)。カナダにとって、EUは最大のばれいしょでん粉輸入先であり、国内への影響を一定程度考慮したとみられる(表2)。一方、その他のでん粉については、米国、タイ、中国からの輸入が大半を占めており、影響は限定的とみられることが、即時撤廃の背景にあると考えられる。

 




 ばれいしょでん粉の輸入量を国別に見ると、EU域内では、デンマーク、オランダ、ドイツが主な輸入先となっており、これらは、EUの主要なばれいしょでん粉生産国でもある。EU域外では、米国が主な輸入先である()。


 
2. EUのカナダからの輸入
 EUがカナダから輸入するでん粉に対する輸入関税は、即時撤廃される化工でん粉を除き、いずれも段階的に撤廃される(表3)。ただし、EUのカナダからのでん粉の輸入量は、わずかであり、関税撤廃の影響は限定的とみられる(表4)。
 


化工でん粉

 デキストリンおよびその他の化工でん粉(HSコード:350510、以下「化工でん粉」という)の主要輸出国の、主要仕向け先国別輸出量および輸出価格は以下の通り。なお、データは「Global Trade Atlas」の出典である。
 

タイ

【貿易動向】
8月の輸出量は、3カ月連続で前年比増

 2016年8月の化工でん粉の輸出量は、8万6768トン(前年同月比32.1%増、前月比9.5%増)と、3カ月連続で前年同月を上回った(図9)。同月の国別輸出量は、次の通り。

日本  2万5454トン
 (前年同月比40.7%増、前月比4.5%増)
中国  2万1247トン
 (同13.5%増、同34.2%増)
インドネシア  6975トン
 (同83.9%増、同28.4%減)
韓国  6337トン
 (同56.9%増、同23.0%増)

図9 タイの化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

米国

【貿易動向】
8月の輸出量は、2カ月連続で前年比増

 2016年8月の化工でん粉の輸出量は、2万7403トン(前年同月比8.7%増、前月比3.3%増)と、2カ月連続で前年同月を上回った(図10)。同月の国別輸出量は、次の通り。

カナダ   7512トン
 (前年同月比10.2%増、前月比13.8%増)
中国   4468トン
 (同2.0倍、同51.5%増)
メキシコ  2814トン
 (同8.7%減、同21.1%減)
ドイツ   1402トン
 (同19.3%増、同21.9%増)
日本   721トン
 (同10.4%減、同16.3%増)
 

図10  米国の化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

中国

【貿易動向】
8月の輸出量は、3カ月ぶりに前年比増

 2016年8月の化工でん粉の輸出量は、4482トン(前年同月比38.8%増、前月比7.9%減)と、3カ月ぶりに前年同月を上回った(図11)。同月の国別輸出量は、次の通り。

日本   501トン
 (前年同月比63.2%増、前月比40.4%減)
マレーシア      487トン
 (同75.2%増、同39.9%減)
韓国   484トン
 (同61.0%減、同20.3%減)
インドネシア     39トン
 (同72.3%減、同85.3%減)
 

図11 中国の化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

EU

【貿易動向】
8月の輸出量は、2カ月ぶりに前年比増

 2016年8月の化工でん粉の輸出量は、4万2241トン(前年同月比1.1%増、前月比1.0%減)と、2カ月ぶりに前年同月を上回った(図12)。同月の国別輸出量は、次の通り。

トルコ   8669トン
 (前年同月比7.2%減、前月比2.1%減)
ロシア   4932トン
 (同12.2%増、同1.7%増)
中国   4921トン
 (同13.1%減、同9.5%減)
日本   3061トン
 (同17.4%減、同2.9%増)
 

図12 EUの化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

豪州

【貿易動向】
8月の輸出量は、6カ月連続で前年比増

 2016年8月の化工でん粉の輸出量は、2776トン(前年同月比63.2%増、前月比9.2%増)と、6カ月連続で前年同月を上回った(図13)。同月の国別輸出量は、次の通り。

日本   2243トン
 (前年同月比79.7%増、前月比17.6%増)
ニュージーランド    171トン
 (同17.9%増、同11.8%増)
マレーシア      36トン
 (前年同、同80.0%減)
 

図13 豪州の化工でん粉の輸出量および輸出価格の推移

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