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北海道におけるてん菜の種子生産

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最終更新日:2013年5月10日

北海道におけるてん菜の種子生産

2013年5月

ホクレン農業協同組合連合会 てん菜生産部 原料課

1.はじめに

 北海道で利用される製糖原料用のてん菜の種子は、ヨーロッパ産が約7割、国内産が約3割となっている。ヨーロッパ産は主に現地種苗会社が生産したもので、それを国内製糖会社が輸入している。

 ここでは、優良品種の認定から国産てん菜種子生産事例について紹介する。

2.優良品種の認定

 優良品種の認定には、長い年数を要する。多くの品種の中から選抜され、成績が優秀なものだけ認定される仕組みとなっているため、数多くの能力試験を実施することとなる。

 優良品種認定のための試験(品種検定試験、特定検定試験、現地検定試験)は4年以上を要し、その前の選抜などの試験(予備試験)を含めると、優良品種の誕生までには非常に長い年月数がかかっている。

(1)予備試験

 有望とみられる系統を選抜する試験である。この試験を経て成績の良いものが品種検定試験に入ることになる。

ア. 産品種

 国内では北海道農業研究センターが、いろいろな系統を組み合わせて、てん菜の新しい品種を開発している。その中から予備選抜して有望なものを振り分ける。

イ. 輸入品種

 世界各国で育成されている優れた品種を各製糖会社(日本甜菜製糖(株)、ホクレン農業協同組合連合会、北海道糖業(株))が、ドイツ、ベルギー、スウェーデンから輸入し、北海道の気候、土壌に対する適応性を予備検定する。この中から成績の良い有望品種を選抜する。

(2)品種検定試験

 予備試験で選ばれた有望品種の収量、糖分、特有の能力、性質などを従来の優良品種と比較し、優劣を判定する試験である。

 この試験は北海道立総合研究機構の農業試験場が中心となって3年以上実施するが、成績は1年ごとに厳しくチェックされる。優れていることが確認されない場合は、試験年次の途中で試験を中止したり、3年の期限を経た後でも認定とならない品種もある。
 
(3)特性検定試験

 品種検定試験を1年経て成績の良いものは品質や耐病性などの特性について検定試験が行われる。品質の良否や抽苔(とうだち)(注)の有無、病害抵抗性(そう根病、褐斑病、黒根病など)の強弱などを検定する。

(注)花をつけるための茎が立つこと

(4)現地検定試験

 品種検定試験を1年経て成績の良いものは、各地域の気象や土壌条件などに対する適応性を判断するため、代表的な道内地域3カ所の現地圃場で、その地区の農業改良普及センターが中心となり検定試験が行われる。

(5)優良品種認定

 各種試験を経た品種は、農試研究職員・専門技術員、道の担当職員で構成する北海道農業試験会議で試験成績の内容が検討される。

 その結果、収量や糖分、品質その他の特性などについて総合的に成績が優秀と判断された品種はてん菜の優良品種候補として北海道農産物優良品種認定委員会に提案され、同委員会の決議を経て正式に優良品種として認定される。
 

3.大空町における種子生産

 大空町におけるてん菜種子生産は昭和35年に開始された。

 風媒作物であるてん菜は、開花期から収穫期までの降雨が収穫種子の品質に大きく影響する。このことから、年間降水量の少ない大空町が採種地として選定されたという経緯がある。

 大空町での採種については、種子生産者に生産を委託しており、本会が取り扱っているてん菜種子については、大部分が大空町で生産されたものとなっている。

4.種子生産方法

(1)増殖方法

 現在のてん菜種子は雄性不稔系統単胚種子親と多胚花粉親の交配による単胚一代雑種の利用が主流となっている。

 てん菜は2年生草本であるため、種子増殖には2年の期間を必要とする。

 1年目に原種を播種し栄養生長させ収穫した菜根(母根)を翌年に定植し生殖生長させ種子を収穫する。

 原種についてはヨーロッパの品種育成国の種苗会社にて採種されたものを輸入し使用しており、原種の生産期間を加えると、てん菜種子の生産には合計6年を要することになる。

(2)母根養成

 原種は4月下旬から5月上旬に専用播種機で播種し密植栽培(約10万本/10a)で母根を養成する。
 
 養成された母根は10月に収穫し翌年4月まで低温恒湿条件の貯蔵庫に保管し翌年に向け春化処理を施す。
 
 ヨーロッパなどのてん菜採種は冬期間も温暖なフランス南部などで行っており、母根は圃場で不織布などの資材で簡易被覆し越冬させ、春に収穫・植え替えをしている。

 しかし冬期に圃場凍結する北海道では母根が凍結・腐敗してしまうことから収穫・貯蔵管理の作業が必要となる。
 
(3)採種

 貯蔵・春化処理された母根は4月下旬〜5月上旬に採種圃場に定植する。

 花粉親1畦に対し種子親5畦の割合で約3000本/10aを定植する。
 
 定植された母根は抽苔期から急速に草丈が伸長しその後約1カ月開花を続け受粉する。

 受粉後の花粉親は不要となるため、圃場に鋤込み種子親だけを残す。

 8月下旬〜9月上旬に成熟期を迎えた種子は刈取・乾燥・脱穀・調整後工場に集荷する。
 
 
 
(4)製品種子の加工

 集荷した種子は受入検査後、下記の工程を経て高発芽率種子のみを選別・加工・包装し出荷する。

1)粗選別→2)乾燥→3)研磨→4)粒径選別→5)比重選別→6)ペレット加工→7)包装

(5)品質管理

 種子受入から出荷まで多くの品質調査を実施しており、特に発芽率については、各工程において、ろ紙法・砂法・ペーパーポット法などの手法により調査している。
 

4.てん菜種子の種類

(1)単胚種子

 現在栽培されている品種は種子1粒に1つの胚の「単胚種子」であり、出芽数が少なくなることにより間引作業が容易になったことから、てん菜栽培の省力化に大きく貢献した。
 
(2)ペレット種子

 単胚種子を各種資材で球形に被覆加工したもので、元々非常に不整形であるてん菜種子においては播種時の取り扱いが容易となり、完全な1粒播種が可能で間引きが不要となった。

 また直播栽培・移植栽培の両方に使用可能であるため、現在使用されているてん菜種子は大部分がペレット種子となっている。

5.おわりに

 てん菜種子の開発・生産については、多くの労力と時間を要するが、今後のてん菜の安定生産のためには、従来の防除、湿害回避等の技術対策と併せて、褐斑病、黒根病などの耐病性品種の開発・普及が重要な課題と考えられる。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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