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運動と砂糖

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最終更新日:2014年2月10日

運動と砂糖

2014年2月

園田学園女子大学 人間健康学部食物栄養学科
准教授 餅 美知子
管理栄養士・公認スポーツ栄養士

 一昔前、夏には麦茶に砂糖を入れ飲んでいたのではないだろうか。現在はスポーツドリンクが主流になっているが、スポーツドリンクの定義はない。これも立派なスポーツドリンクであった。また、疲れたとき、甘いものが欲しくなり、口に入れるとほっとしないだろうか。これは、からだが要求しているからである。からだのエネルギーは糖質が基本である。脳のエネルギーも糖質であり、筋肉のエネルギーも糖質である。エネルギー不足が疲労やだるさ、思考にも影響する。話はそれるが、一昔前のもう一つ、夏にはスイカに塩を振り、食べていたのも熱中症予防の一つになっていたのだろう。今ほど、エビデンスが語られていない頃も必要に応じ、工夫していたのである。

 このように、からだの声に素直に反応して食事を摂っていた時に比べ、現在は食品が豊富になった分、口だけの欲求に応え食事を摂ったり、情報の氾濫に伴い、「これはいい」「これはだめ」など決め付けていないだろうか。砂糖もその一つだと思う。砂糖は摂り過ぎると「悪者」のように誤解されている。その証に、今ではノーシュガーの食品が主流のように市場に出回っている。もちろん摂り過ぎはいけないだろう。しかし、摂り過ぎがいけないのは砂糖にかかわらず、すべての食品に共通して言えることである。

 今回は運動と砂糖の話である。運動時には、砂糖(炭水化物)は重要なエネルギー源である。運動するときにからだは酸素を使ってブドウ糖を分解し、エネルギーを作り出している。ブドウ糖が不足することで低血糖になり、疲労を感じるのである。砂糖は即効性があり、リカバリーに大変役立つ。また、運動直後に砂糖を摂るとブドウ糖を細胞内に取り込ませる働きのあるインスリンの分泌が促され、運動中に失われた筋肉中のグリコーゲンをすばやく補充してくれるので、疲れを早めに回復させることができる。糖質を多く取っておけばパフォーマンスが長続きすると考えられたのが、グルコースローディング(カーボローディング)と言われる手法で、これは持久力を要求される競技者に効果を示すと言われているが、今では試合前日の食事として多くの選手が糖質の多い夕食を食べるようになってきている。しかし、糖質は残念ながら体内で貯蔵される量が少なく、おおよそ900キロカロリーから1,200キロカロリーなどと言われている(図)。これはフルマラソンでは枯渇してしまうので30キロメートル地点くらいで、すべての選手がスペシャルドリンクと称して糖質補給をしている姿を目にすると思う。
 
 糖質補給は「試合中に即効性を求めるのか」「明日への疲労回復のために補給するのか」などタイミングを考えながら行われている。このタイミングに利用されている考え方の一つとして、1990年代より脚光を浴びてきたのがGlycemic Index(グリセミック・インデックス。以下「GI」という)を考慮した摂取法である。GIとは食後血糖値の上昇度を示す指標のことで、食品に含まれる糖質の吸収度合いを示し、摂取2時間までに血液中に入る糖質の量を計ったものである。つまり、GIは、インスリンへの刺激の強さを示す指標であると言える。インスリンは食事や運動によって上昇した血糖を下げて、血中濃度を一定に保つ働きをするため、インスリンを刺激する食品は、筋肉や脂肪組織に取り込まれやすいと言われている。また、GIは一般的には多糖類よりも二糖類や単糖類で高いため、パスタや玄米と比較して、コーンフレークや食パンなどの食品はGIが高く、砂糖が入った飲料は果糖の多い100パーセントジュースよりもGIが高いのである(表)。砂糖は、インスリンを刺激して糖分を筋肉や脂肪組織に取り込みやすいのである。この特性を利用して、運動の活動開始までに時間がない場合や速やかな回復を望む場合には、GIの高い食品を摂取し、開始までに時間が十分にある場合や練習後には、GIの低い食品を摂取し、時間を掛けてエネルギーにするのである。このような工夫で試合前中後の食事の摂取タイミングによる献立作成や食事の摂取が行われている。市販されているスポーツドリンクもこれらの考えを含め、砂糖や果糖を主にしたさまざまな工夫がされている。
 
 われわれは、合宿中に砂糖を含んだスポーツドリンクが、からだにとってどのような影響があるのかと考え、ミネラルウォーターとスポーツドリンクを用い、飲みやすさ、疲労感などの調査(平成23年9月、日本栄養改善学会にて発表)を実施したことがある。アンケートによる主観的な結果では、ミネラルウォーターのみ摂取のグループでは「疲れやすく感じた」「息切れが激しかった」「からだが重く感じた」との回答があった。これはエネルギー不足が考えられた。スポーツドリンクのみ摂取のグループでは疲労感の訴えはなかったが、いつも自分が飲んでいるスポーツドリンクと違ったため「甘すぎて飲みづらい」「すぐのどが乾いた」などの回答であった。この結果を得て、スポーツドリンクが不足分のエネルギー補給はできているものと考えられたが、個人にあった飲み方、飲み物の選択が今後の課題と考えられた。

 次に、砂糖の考え方であるが、もちろん、運動をする上でのエネルギー補給であることは言うまでもないが、合宿帯同などで食事提供をする時に、献立に必ず、一品、甘いものが摂れるようデザートを組み入れている(写真)。特に強化合宿などの時はストレスやトレーニングの強さなどから疲労困憊する選手たちを見てきた。1日目より2日目とどんどん食欲にも差が出てくる。ご飯で多くのエネルギー摂取を期待できなくなったときには疲労回復も含め満腹感、満足感を味わってもらうためのスイーツである。からだに加え、心のリフレッシュも図り、合宿での強化がパフォーマンスの向上につながるサポートができることを目指している。特に本学は女子大学であることから、デザートを出すと笑顔が増える。
 
 甘さへの依存度は、私たちにさまざまな効果を与えてくれる。糖質は運動選手だけが必要なものではなく運動をしていなくても、寝ている間もエネルギーは使われている。適度(1日分のエネルギーの1割)な甘食で生活を豊かに感じるのも良いことではないだろうか。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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