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−てん菜とさとうきびを対象に−

食料・農業・農村基本計画における甘味資源作物の生産振興目標
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最終更新日:2015年12月10日

食料・農業・農村基本計画における甘味資源作物の生産振興目標
−てん菜とさとうきびを対象に−

2015年12月

東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授 中嶋 康博
(食料・農業・農村政策審議会企画部会 部会長)

はじめに

 本年3月に食料・農業・農村基本計画(以下「基本計画」という)が閣議決定された。基本計画は、食料・農業・農村基本法(以下「基本法」という)の定めに従って、5年ごとに策定されるもので、中長期的な食料・農業・農村をめぐる情勢の変化を見通しつつ、今後10年程度先までの施策の方向等を示す。今回は4回目の基本計画の策定であり、基準年度が平成25年度、目標年度が37年度となっている。

 基本法は食料・農業・農村に関する施策の基本的指針として平成11年に制定されたものであり、そこでは4つの基本理念、すなわち、食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、農業の持続的発展及び農村の振興を掲げている。その基本理念を具体化するため、「食料の安定供給の確保に関する施策」「農業の持続的な発展に関する施策」「農村の振興に関する施策」が用意されている。この「農業の持続的な発展に関する施策」において、「効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するため、営農の類型及び地域の特性に応じ、農業生産の基盤の整備の推進、農業経営の規模の拡大その他農業経営基盤の強化の促進に必要な施策を講ずる」(基本法第21条)とされている。

 今回の基本計画では、超高齢化、人口減少、グローバル化、情報化等の面で、わが国はいまだ経験したことのない経済社会の構造の変化に直面し、大きな転換点を迎えているという認識を示した。その上で持続可能で活力ある地域経済社会を構築していくため、あらゆる分野において既存の仕組みの抜本的な改革を進めなければならないとしている。各分野においてこのような改革を進める姿勢が貫かれていると言えよう。

1. 食料自給率

 基本計画では、10年後の食料自給率の目標を定めることとされている(基本法第15条2項)。そこでは品目ごとに、食料消費に関する課題が解決された場合の目標年度における食料消費の見通し、農業生産に関する課題が解決された場合に実現可能な国内の農業生産の水準としての目標年度における生産努力目標が示されている。それらを集約して供給熱量ベース及び生産額ベースの総合食料自給率が定められることとなる。

 今回の基本計画において、基準年度が39%であった供給熱量ベースの総合食料自給率は、目標年度には45%にすることを目標と定めた。また生産額ベースの総合食料自給率については、基準年度65%のところ目標年度73%と定めた。

 食料自給率において砂糖の国内生産は重要な役割を果たしている。基準年度の供給熱量ベースの総合食料自給率39%は、1人・1日当たり国産供給熱量939キロカロリー÷1人・1日当たり総供給熱量2424キロカロリーから計算される。砂糖の1人・1日当たり国産供給熱量は58キロカロリーであり、全体の6.2%を占めている。これを上回る品目は、米が538キロカロリー(57.3%)と圧倒的に大きな割合を占めているが、その次に大きいのは畜産物の64キロカロリー(6.8%)、魚介類の62キロカロリー(6.6%)である。ちなみに砂糖類に続くのは、野菜の55キロカロリー(5.9%)、小麦の40キロカロリー(4.2%)である。

 砂糖の生産努力目標は精糖換算値で、基準年度は69万トンのところ、目標年度は1.14倍となる79万トンと定められた。過去の基本計画について、基準年度の実績値と目標年度の生産努力目標の倍率を振り返ってみると、第1回は1.12倍、第2回は0.93倍、第3回は0.89倍であった。今回の基本計画では前2回で示された生産減少の計画を転換し、第1回を上回る生産振興を計画している。

2. 生産努力目標

 は、てん菜及びさとうきびの生産努力目標がどのように設定されてきたかを、これまでの実績の推移と基本計画の数値を参照しながら図示したものである。
 
 第2回及び第3回基本計画では砂糖の生産努力目標値を引き下げたのだが、それはてん菜の減産によるものであった。計画期間はそれを下回るほど生産が減退しており、今回の基本計画では下がり過ぎた生産量の回復を目指している。さとうきびについても同様に減産した分を回復する計画となっている。過去4回の基本計画では、いずれもほぼ同水準の生産量の生産努力目標を設定している。

(1)てん菜

 てん菜については、作付面積を基準年度の5万8200ヘクタールから、目標年度には6万ヘクタールへ拡大するとされ、また10アール当たりの収量は、基準年度の5.9トンを目標年度には6.12トンにすることを目指している。

 生産面において克服すべき課題として指摘されたのは以下の3点である。

  • 作付の拡大及び生産の安定化に向けた輪作の適切な実施。
  • 直播栽培の収量の向上及び安定化、移植栽培における育苗作業の外部化。
  • 気象条件の変化に対応した耐病性品種の普及。

 

 また、基本計画とともに定められた参考文書である「農業経営等の展望について」で、生産額増大及び生産コストの縮減へ向けて、次の具体的な対応が示されている。

【効率的な生産体制の確立】
 直播栽培を普及・拡大するため、高性能直播機等の導入や直播栽培における収量安定につながる技術(狭畦栽培等)の普及を推進するとともに、移植栽培における労働力外部化のため、共同育苗施設の整備等を推進。

【耐病性品種の開発・導入】
 国内産糖製造事業者と連携しつつ、(独)農業・食品産業技術総合研究機構の有する耐病性品種の効果的な活用等を通じ、耐病性品種の開発・導入を推進。

【生産資材使用の効率化1】
 土壌診断等を通じたそれぞれの土地の栄養分の状況にあわせた適切な量の肥料の投入の取組を推進。

【生産資材使用の効率化2】
 耐病性品種の導入による防除回数の削減の取組を推進。

(2)さとうきび

 さとうきびについては、作付面積を基準年度の2万1900ヘクタールから、目標年度には2万4500ヘクタールへ拡大するとされ、また10アール当たりの収量は、基準年度の5.44トンを目標年度には6.24トンにすることを目指している。

 生産面において克服すべき課題として指摘されたのは以下の3点である。

  • 畑地かんがいの推進、交信かく乱フェロモン剤の活用等による総合防除の推進、島ごとの自然条件等に応じた作型の選択・組合せの実現。
  • 作業受託組織や共同利用組織の育成。
  • 作業効率向上のための機械化一貫体系の確立・普及。


 「農業経営等の展望について」で、生産額増大及び生産コストの縮減へ向けた具体的な対応が示されている。

【機械化一貫体系の確立・普及】
 株出管理機、ハーベスタ等の導入、作業受委託や機械の共同利用組織の育成等を推進。

【自然災害等に強い生産体制の構築】
 畑地かんがいの着実な推進、交信かく乱フェロモン剤の活用等による総合防除等を推進するとともに、島ごとの自然条件等に応じた作型の選択・組合せ(ベストミックス)の実現に向けた取組を推進。

【収穫作業の効率化】
 ハーベスタの導入や共同利用を推進。

おわりに

 生産努力目標を達成するための、確保すべき農地、基準となる技術目標は基本計画に示されている。しかしながら必要とされる労働力についての具体的な人数は必ずしも設定されていない。今後の高齢化、少子化を踏まえると、今まで以上に省力化した生産体系への転換も求められる。そのための機械・投資の計画も検討すべきであろう。

 基本計画の参考資料である「農業構造の展望」には、日本全体での農業就業者の必要数が示されている。それによると土地利用型作物に約30万人、土地利用型作物以外で約60万人が必要であるとされている。土地利用型作物の人数は、担い手が農地の約8割を生産することを目標に定めた政府の計画(日本再興戦略)に従って算定されたものである。担い手1名で10ヘクタールを耕作することを想定している。

 担い手の確保については、生産実態に合わせて計画を立てなければならない。そこでは、基本計画でも指摘しているように、作業受委託も含めた担い手の在り方を考えるべきであろう。てん菜生産でもさとうきび生産でも、すでに収穫作業を中心に作業受委託が広く普及している。作業受委託が有効に活用されれば、ムダな投資を避けながら、生産性の向上を実現できるであろう。家族経営での規模拡大を無理なく進めていくための仕組みとして、作業受託組織をいかに地域の担い手として位置付けて、支援を行っていくかが、これからの政策上の課題なのである。

参考WEBサイト 「食料・農業・農村基本計画」(農林水産省HP)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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