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砂糖の栄養

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最終更新日:2016年7月11日

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砂糖の栄養

2016年7月

女子栄養大学短期大学部 食物栄養学科
教授 松田 早苗

はじめに

 2015年、WHO(世界保健機関)は、「成人及び児童の糖類摂取量」の新ガイドラインを発表した。2002年以来、1日当たりの糖類摂取量について、総エネルギー摂取量の10%未満に減らすことを推奨してきたが、新ガイドラインでは5%(成人で1日25グラム)未満に減らすこととした。策定の背景には、生活習慣病の引き金となる肥満の増加があるという。肥満とは、摂取エネルギー量が、消費エネルギー量を上回り、余ったエネルギーが脂肪となって蓄積した状態をいう。原因は、過食による摂取エネルギー量の増加と運動不足による消費エネルギー量の減少であり、砂糖が肥満の元凶のように思われがちだが、砂糖だけが肥満を招いているわけではない。砂糖について正しい理解が必要であり、栄養学的、調理学的視点から考えたいと思う。
 

脳と砂糖

 砂糖の主成分は、ショ糖である。ショ糖は、ブドウ糖と果糖が結合した二糖類で、摂取したショ糖は、口腔、胃、十二指腸では消化されず、小腸粘膜上皮細胞の微絨毛で、消化酵素スクラーゼがショ糖に作用し、ブドウ糖と果糖に分解される。ブドウ糖は、血糖として、血液を移送し、各組織に取り込まれ、エネルギー源となる。多くの組織では、エネルギー源として、ブドウ糖だけでなく脂質やたんぱく質も利用されるが、脳は、ブドウ糖が主なエネルギー源である。また、肝臓や筋肉では、ブドウ糖からグリコーゲンを合成し蓄積して、必要に応じグリコーゲンを分解しブドウ糖を得ることができるが、脳は、ブドウ糖をほとんど蓄積することができない。そのため、常にブドウ糖を補給する必要性がある。ブドウ糖は、米、パン、芋類などに含まれるでん粉からも得られるが、消化過程が、口腔、十二指腸、小腸粘膜上皮細胞微絨毛と、砂糖に比べ多いため、エネルギー供給に時間を要する。砂糖は、消化過程が少ないため、速効性のある効率の良いエネルギー供給源といえる。

 砂糖は、セロトニンの作用に関係している。セロトニンは、精神的安定をもたらす神経伝達物質だが、学習能力、記憶能力の向上効果も報告されている。セロトニンは、脳において必須アミノ酸の一つであるトリプトファンから合成されるが、脳内にトリプトファンが取り込まれる際、ブドウ糖が存在することで、他のアミノ酸より優先的に取り込むことができる。夜遅くまでの勉強や仕事で疲れた脳のリラックスには、トリプトファンを含む卵や牛乳を使った砂糖入りのホットミルクや、ミルクゼリー、プリンがお勧めである。
 

小児と砂糖

 小児における間食は、栄養補給、気分転換、水分補給のために必要とされている。成長期である小児は、体重当たりのエネルギー量や栄養素量が成人に比べ多い。しかし、消化・吸収機能が未熟であるため、1日に必要なエネルギー量や栄養素量を朝・昼・夕の3食では摂取しきれない。そのため、3食で摂取しきれない栄養を間食で補う。エネルギー補給として速効性のある砂糖を間食に利用することで効率良くエネルギーを得ることができる。甘味は、舌の()(らい)にある味細胞でキャッチされると、味神経に伝達され、脳の中枢神経を刺激し、エンドルフィンというホルモンを分泌する。エンドルフィンは、気持ちをゆったりさせる効果がある。また、脳と砂糖で述べたように、砂糖は、感情にブレーキをかけ、リラックス効果のあるセロトニンの分泌を促す。子供達が気分転換を図るには砂糖を利用した間食が良い。しかし、甘い食べ物は、だらだら食いや、虫歯になりやすいので、時間を決めて食べさせること、歯磨きの習慣を身につけさせることなど配慮が必要である。
 

スポーツと砂糖

 強度の高い運動は、エネルギー源として大量のブドウ糖を必要とする。肝臓や筋肉に貯蔵されたグリコーゲンをブドウ糖に分解して利用するが、さらに、エネルギーを必要とする場合は、筋肉のたんぱく質を分解し、アミノ酸からブドウ糖を合成したり、脂肪組織の脂肪を分解し、グリセロールからブドウ糖を合成する。筋肉や肝臓のグリコーゲン量は、スポーツ選手のスタミナと相関する。筋肉や肝臓のグリコーゲンが枯渇すると、スタミナ切れが生じ、運動の継続が厳しくなる。試合での最高のパフォーマンスのためには、試合前の筋肉へのグリコーゲンの蓄積、試合当日・試合中のエネルギー補給、試合後の筋肉のグリコーゲンやたんぱく質の回復が重要となる。試合前の筋肉のグリコーゲン蓄積を目的としたグリコーゲン・ローディング法という食事療法がある。試合の3〜4日前にご飯、パン、麺類、砂糖などの高炭水化物食を摂取することによってグリコーゲンの蓄積量を増加させる。試合当日の朝食は、甘い菓子パンなどを、試合1時間前は、血糖値の上昇と脱水予防のため、エネルギー補給に速効性のある砂糖を含むジュースやスポーツ飲料などを200〜500ミリリットル程度摂取する。試合直前は、砂糖を大量に摂取すると、疲労物質である乳酸を増加させてしまい、運動能力の低下を招くため、砂糖の多い飲料は控える。試合中は、エネルギー、電解質、水分補給のため糖度5%程度のスポーツ飲料をこまめに摂取する。強度の高い運動では、筋肉のたんぱく質の損傷も著しい。試合後は、試合で消耗したグリコーゲンや、損傷した筋肉のたんぱく質を回復させるため、試合後、なるべく早い段階で、砂糖と良質たんぱく質を摂取しなければならない。砂糖を摂取することで、膵臓からのインスリン分泌を促進する。インスリンは、筋肉へのブドウ糖の取り込みを促し、グリコーゲンの合成を促進する。また、筋肉へのアミノ酸の取り込みも促し、たんぱく質の合成を促進し、分解を抑制する。砂糖は、筋肉のグリコーゲンの補充と筋肉のたんぱく質の回復に関わり、アスリートのパフォーマンスに欠かせない食品の一つといえる。
 

調理と砂糖

 砂糖ほど科学的な食品はない。熱を加えていくと、103〜105度でシロップ、107〜115度でフォンダン、140度でタフィー、165度でべっこうあめ、165〜180度でカラメルソースなど、さまざまな形に変わり料理の幅を広げている。

 砂糖には、親水性がある。親水性とは、水と結合しやすい性質で、食品の水分を取って抱え込もうとする脱水性や、一度抱え込んだ水分を離さない保水性を呈する。親水性によって、食品の腐敗を防止したり、肉を軟らかくしたり、ホイップクリームやメレンゲの泡立ちを安定化させたり、すし飯や餅菓子など糊化したでん粉の老化を防止している。

 砂糖は、たんぱく質の熱凝固にも影響を与える。プリンのおいしさは、滑らかな口当たりにある。プリンは、卵と牛乳に砂糖を加えて加熱して作るが、砂糖を加えることで、卵と牛乳の凝固温度が高くなり、固まりにくくなるため、軟らかい、滑らかな口当たりの良さが生まれている。

 砂糖は、発酵も活発にする。パンを作る際、イーストに砂糖を加えて発酵させるが、砂糖を加えることで、発酵が活発になり、炭酸ガスが発生し、ふっくらとしたおいしいパンになる。
 

おわりに

 近年、砂糖に代わる甘味料が生産、販売されているが、砂糖は、調理性に優れ、また、栄養学的にも重要な食品である。日本には、和三盆など伝統的な砂糖もあり、食文化的にも意義のある食品である。砂糖を大量に摂取するのは良くないが、食生活に上手く取り入れることで、心豊かな日々を過ごしたいものである。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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