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法人経営による生産性向上・経営安定化の取り組み

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最終更新日:2016年10月11日

法人経営による生産性向上・経営安定化の取り組み〜有限会社サザンドリーム(南大東島)〜

2016年10月

那覇事務所 青木 敬太、大田 育子

【要約】

 沖縄県のさとうきび生産は、担い手不足に対応するため、ハーベスタなどの導入による機械化が課題となっている。南大東島の有限会社サザンドリームは、島内でいち早く法人経営に移行し、機械化一貫体系による生産性の向上に加え、作業受託によるさとうきび経営の安定化に取り組んでいる。

はじめに

 さとうきび生産を行う各島では担い手不足に対応するため、機械化と規模拡大が急速に進んでいる。中でも南大東島は、労働力不足の観点からいち早く機械化に取り組んでおり、現在の機械収穫率はほぼ100%、農家1戸当たりの平均生産規模は約5ヘクタールと広大である。同島内で収穫面積がトップクラスである有限会社サザンドリーム(以下「サザンドリーム」という)は、早くから生産法人を立ち上げ、機械化一貫体系を確立した。平成19年度には、同年産の収穫量が1101トンを記録したことで、沖縄県さとうきび競作会(注)の多量生産の部、第1位として独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞を受賞し、その後も補植などの管理作業や作業受託により生産性の向上と経営の安定化に取り組んでいる。

 本稿では、機械化一貫体系を早くから確立した大規模経営法人であるサザンドリームの生産性向上・経営安定化に向けた取り組みについて紹介する。

(注)沖縄県さとうきび競作会(主催:公益社団法人沖縄県糖業振興協会)は、生産技術および経営改善において創意工夫し、高単収、高品質な生産を行ったさとうきび農家を表彰することにより、農家の生産意欲を喚起して沖縄県の糖業発展につなげることを目的として毎年度開催されている。多量生産の部では、生産量、品質、工場搬入シェアの面から地域糖業への貢献度が大きい者として各製糖工場から推薦された農家と生産法人について、審査を行った上で、一般農家の部、生産法人の部における順位が決定される。

1.南大東島の農業の概況

 南大東島は、沖縄本島の東方の海上約360キロメートルに位置する周囲20.8キロメートル、面積30.7平方キロメートルの離島で、島の周囲はせり上がり中央部がくぼんだ地形であることから、お盆を海に浮かべたように見える島である(図1)。

 約100年前に八丈島からの移住によって開拓され、現在の人口は1400人程度である。また、亜熱帯海洋性気候に属し、年平均気温は23.4度と温暖で、年間平均降水量は1500ミリ前後で沖縄本島や宮古島より少なく、年によっては干ばつに悩まされることもある。
 

 図1 南大東島の位置

 南大東島の耕地面積1830ヘクタールのうち、さとうきびの作付面積は約1200ヘクタールと圧倒的に多く、近年では、さとうきびの輪作としてカボチャの栽培が行われるようになった。21年の農業産出額では、さとうきびが12億1000万円、カボチャが4000万円であり、さとうきびが島の基幹産業であることが分かる。

2.南大東島におけるさとうきび生産

 南大東島の農家1戸当たりのさとうきびの平均耕地面積は、県平均と比べ約6倍の約5ヘクタールと、圃場(ほじょう

)
が広大であることが特徴である。沖縄県全体で10ヘクタール以上の耕作面積を有するさとうきび農家42戸のうち、約半数の19戸が南大東島の農家である。

 南大東島のさとうきび栽培は、早くから大規模経営に対応すべく機械化が進んでおり、現在ではハーベスタによる収穫率がほぼ100%と、県平均を大きく上回っている(表1)。

表1 平均耕作面積と機械収穫率(平成27/28年期)

 また、広大な圃場においては、春植えや夏植えは労力がかかることなどを理由に敬遠される傾向があり、株出しが作型の約8割と他地域に比べ高く、その影響により単収が低水準にとどまっている(図2図3)。

図2 作型別収穫面積割合(平成27/28年期)

図3 地域別の10アール当たりの収量(平成27/28年期)(t/10a)

3.サザンドリームの概要

(1)法人の設立の経緯

 サザンドリームは、平成11年に栽培面積約15ヘクタール、構成員4名で設立された生産法人である。構成員の4名は、それぞれの集落のリーダーで年齢も近く、島全体を盛り上げていこうと集まり、金川氏(56歳、写真1)が代表を務めることとなった。また、各構成員が所有する農業機械が耐用年数を超え、買い替えの時期を迎えていたことから、機械を共同購入・共同利用をすることで経営全体のコストを削減したいという思いも設立の動機付けとなった。

 法人運営に当たっては、これまで培ってきた互いのノウハウや作業スタイルなどを尊重することが大切であるという考えから、細かなルールやマニュアルはあえて定めていない。

写真1 有限会社サザンドリーム代表 金川 均氏

(2)機械の保有状況

 サザンドリームは、法人化することのメリットの1つとして、1台7000万円を超えるような個人では購入することが難しい高性能な機械を所有することができるようになったことを挙げた。購入に際しては、法人を設立したことで信用度が高まり、各補助事業や金融機関の融資が利用しやすくなった。現在、サザンドリームは、ハーベスタを2台所有しており、1台目は平成14年、2台目は23年に購入した。ハーベスタは2台ともキャタピラー式を採用しており、圃場での踏圧を軽減するよう配慮されたものである(表2)。

表2 保有機械一覧

写真2 ハーベスタ

写真3 大型トラクタ

(3)さとうきび生産の概要

 収穫面積は13.8ヘクタールと、島内でもトップクラスの面積を誇っており、単収は年によってばらつきはあるものの、平成27年産は6.4トンと県の平均を大きく上回っている(表3)。

表3 サザンドリームの収穫面積、収量、単収の推移

4.生産性向上と経営安定化の取り組み

(1)得意分野を生かした作業分担

 圃場が広大であるほど単収を上げるためには適正な時期に株出しや防除などの管理作業に労力がかかる。そこで、サザンドリームでは、機械を共同利用するとともに、それぞれが得意な分野を生かすことで、作業効率の向上を図っている。

 金川氏は、現在、主に経営全般に係る事務を担当しているが、設立当初は会計や法律に関する知識は素人同然であったと言う。そのため、県やJAの担当者から指導を仰ぎながら、経営に必要な知識を学んだ。その経験を経た今、経営に必要な手続きに加え、作業管理やスケジュール管理などの細かい事務手続きなども金川氏が一手に引き受けており、豊富な知識に基づいた冷静な判断と的確な助言は構成員から厚い信頼を得ている。

 他方、離島であるが故に機械が壊れた場合、修理業者が島に到着するまで数日を要して農作業ができないことがあるため、機械のメンテナンスは、機械に詳しい構成員が担当している。そのため、機械の選定・調達に関しては、メンテナンスを担当する構成員に一任している。

 また、ある構成員は、誰もが一目置くような高い技能を持っており、地理的条件や土壌条件により真っ直ぐ植え付けることが難しい圃場では、その構成員が率先して作業を請け負っている。

 このようにサザンドリームでは、法人の運営・管理などに関するルールや方針を細かく定めていないものの、役割や得意分野を互いに認識し合い、まさに阿吽の呼吸とも言えるチームワーク・分業体制により法人としの組織力、能力を最大限に発揮している。

 一方で、構成員は、構成員名義の圃場も残しており、その圃場では互いに生産性を競い合っており、構成員は同法人のパートナーであり良きライバルでもある。

写真4 一度に4畦に農薬散布できるように改良した機械

(2)単収向上の取り組み

 サザンドリームは、平成27年産南大東村さとうきび競作会で、収穫面積10ヘクタール以上の部門における単収で、3位という好成績を収めた。金川氏も自身が所有する圃場で6トンを超える単収を実現し、8〜10ヘクタールの部門で2位入賞を果たしている。

 金川氏は、「機械化一貫体系により大規模経営を行う場合にあっても単収の維持は可能であり、そのコツは基本作業の励行である」と語る。そのために、機械化に頼りすぎず、補植などの手作業による管理作業をおろそかにしないことを心掛けている。

  高い単収を維持する秘訣として、まずは地力の維持・増進が挙げられる。島には畜産農家が存在せず、堆肥を十分に確保できる環境ではないことから、緑肥を植えて地力の維持・増進に努めている。そして、先述の通り南大東島は干ばつが起こりやすい地域であるため、点滴チューブを利用して灌水を実施している。圃場が広大であるため、チューブの敷設・管理には多大な手間と時間がかかるものの、収量は土壌水分の影響を強く受けるため、点滴チューブによる栽培管理は単収向上に欠かせない技術であると考えている。


 さらに、着実な単収の増加を図るため、補植にも力を入れている。バックホウで土壌に穴を開けなければ補植することができないほど島の土質は硬い粘土質であるが、その手間を惜しまず欠株の補植は必ず行っている。



 

写真5 28年産の生育も順調である(平成28年6月撮影)

写真6 硬い土壌に補植用の穴を開けるバックホウ

写真7 欠株部分の補植

 また、苗の移植方法にも特徴があり、ビレットプランタでの植え付けが主流である南大東島において、サザンドリームでは、全茎式プランタにより植え付けを行っている。苗として利用できない梢頭部などがある程度混ざってしまうビレットプランタに対し、苗を適切な長さに裁断して植え付けできる全茎式プランタは、植え付け後の生育不良による苗のロスが減り、比較的発芽揃いも良いことから、単収向上に加え、品質向上、低コスト化の面でも効果を実感している。

(3)作業受託の拡大

 サザンドリームでは、数年前から他の農家から作業を請け負うようになった。昨年からは、受託面積拡大の足掛かりとするため、常勤で従業員2名を雇っている。2名の従業員は、閑散期には補植などの管理作業、繁忙期には収穫したさとうきびの工場までの運搬作業に従事させることで、従業員の通年雇用が可能となり、地域の雇用にも貢献している。


 今後、高齢化がさらに進み、遊休圃場の拡大も懸念されていることから、遊休圃場の活用と雇用の安定を図るという観点から、作業受託を増やしていきたいと考えている。

5.今後の目標

 金川氏は、労働力不足に対応するためには、機械の導入というハード面の整備に加え、担い手確保に真剣に向き合わなければならないと考えており、「島では新たに農業を始めようと思っても親が畑を保有していなければ、農地を確保することは難しい。しかし、会社組織にすれば、就農希望者に対し、雇用を通じて営農に必要な技術やノウハウを習得させるための実践的な研修の場を提供することができる。やる気や興味・関心のある者が容易に農業に参入できる場所をつくりたい。外から新しい風を吹き込むことで、全く新しいアイデアも出てくるはず」と語る。


 また、「島にはさとうきび以外の作物がほとんどない。裏を返せば、さとうきび生産によって私たちの生活・地域が守られ、維持されている。今があるのはさとうきびのおかげ」と語り、次はわれわれがさとうきび生産を守り、地域を支える番であるとし、ゼロから法人設立に携わってきた経験を生かし、島の内外で自身の体験談を踏まえた講演を行うなど、新たに法人設立を目指す農家を支援している。現在は外国人研修生の受け入れも積極的に行っており、「今後は、農業関係の大学などこれからの農業を支えていく若年層にも情報を発信し、気概のある人材を育成していきたい」と、意気込みを見せる。


 さらに同氏は、平成27年度に沖縄県さとうきび生産法人連絡協議会(以下「協議会」という)の会長に就任するとともに、サザンドリームを含む南大東島の生産法人を会員とする南大東支部を立ち上げた。これには、島のさとうきび生産を強固にしていくため、島の風土や風習、事情などに合わせたきめ細かな活動を推進していかなければならないという決意がうかがわれる。


 そして、島の大きな課題である担い手不足を解消するためには、これからのさとうきび生産は個々の経営を組織化する必要があるとし、今後も法人化や機械・農作業の共同化の推進に精力的に取り組む意向を示した。


 南大東島の製糖工場である大東糖業株式会社も、サザンドリームの取り組みに期待を寄せている。同社の担当者は、「南大東島のさとうきび生産は圃場が広大で株出しが多く、単収が低いと指摘されることもあるが、サザンドリームは、10ヘクタール以上の圃場を経営していても、管理作業などの基本をしっかり行えば、単収は維持できるというお手本のような法人である。また、島の課題である高齢化による労働力不足を解消する受託組織としての役割にも多いに期待している」と話す。

写真8 外国人研修生と並ぶ金川氏

おわりに

 さとうきび生産においては、労働力不足を解消する手段として機械化が進んできたものの、農業従事者の高齢化の進行に伴い機械化一貫体系を実践する法人であっても労働力不足が顕在化してきているのが実態である。

 このことから、サザンドリームの取り組み・成果が周辺の法人・島にも波及し、新規就農者の呼び水となることやこれからのさとうきび生産を盛り上げていくことを期待したい。

 今回の事例は、機械の共同購入・共同利用の実現を目指す生産者、法人化を目指す生産者、労働力不足を解消しようとする生産者などにとって参考になると思われる。

 最後にお忙しい中、今回の取材に当たりご協力いただい金川均様および大東糖業株式会社など関係者の皆さまに感謝申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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