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平成28年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会の概要

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最終更新日:2017年1月10日

平成28年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会の概要
〜地域の実情に合致したさとうきび増産体制の取り組み〜

2017年1月

鹿児島事務所、那覇事務所

【要約】

 平成28年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会では、さとうきび増産に向けて、鹿児島県および沖縄県の各地域で、それぞれの地域実情に合わせて実施されている、人材育成・確保や地力増進に関する取り組みについて生産者代表からの報告が行われた。

はじめに

 当機構では、鹿児島県および沖縄県の基幹作物の 1つであるさとうきびの生産に関するさまざまな課題を、両県の関係者が一丸となって解決していくことを目的として、毎年「さとうきび・甘蔗糖関係検 討会」を開催している。

 第15回目の開催となる今回は、「地域の実情に合致したさとうきび増産体制の確立について」をテーマに、鹿児島県の種子島において、11月9、10日の2日間にわたって開催した。

 検討会1日目は、両県各地域の生産者代表などによる報告、意見交換を行ったほか、東京大学の菊池康紀特任准教授より「サトウキビで形作るスマートシステムの在り方」と題し、新光糖業株式会社における使用エネルギーの効率化や、さとうきびの未利用部分を用いたエタノール生産などの取り組みについて講演があった。午後は、島内の精脱葉せいだつよう施設や試験圃場ほじょうなどを見学した。  

 検討会2日目は、さとうきびの栽培技術などに関する研究成果発表として、各地域に適した品種の栽培方法などについて議論が行われた。加えて、当機構調査情報部から、砂糖の主要輸入先の一つであるタイ国におけるさとうきび生産状況についての発表も行った。

 その中から本稿では、生産者代表による報告、意見交換の内容について紹介する。 

1.さとうきび生産構造の変化

 鹿児島県および沖縄県におけるさとうきび生産者 (甘味資源作物交付金交付対象者)への交付金交付が始まった平成19年と27年とを比較すると、鹿児島県では約9200人から約7900人へ、沖縄県では約1万6900人から約1万3900人へと両県合わせて約4400人減少している。加えて、対象者のうち60歳以上の割合は、鹿児島県で51%から62%へ、 沖縄県では57%から69%へといずれも増加しており、高齢化が進んでいる状況にある(図1)。

図1 さとうきび生産者および60歳以上の構成割合の推移

 ハーベスタ収穫率は両県とも年々上昇している一 方で(図2)、生産者の減少や高齢化の影響により、 ハーベスタ収穫従事者すなわち担い手への作業負担は増大しており、作業受託を行う生産者においては自身が所有する圃場の適期管理が難しくなっているという事態が生じている。そのため、これからのさとうきび増産体制構築には、生産に携わる人材の育成・確保が重要課題となっている。

図2 ハーベスタ収穫率の推移

 また、ハーベスタ収穫などが増加する一方で、圃場の単収は低下傾向にある(図3)。こうした状況下、 生産地では、単収を向上させるための土づくり、地力増進が求められており、さとうきび副産物の活用や堆肥の利用など各島の実情に応じた対策が実践されているところである。

 これらの内容について、当日発表いただいた両県合わせて13名の生産者代表からの報告をテーマ別に分けて紹介する。

図3 10アール当たりの収量(単収)の推移

検討会の様子(写真)

2.生産者代表による報告

(1)さとうきび生産に係る担い手育成および労働力の確保

 さとうきび生産に係る担い手育成および労働力の確保に関するテーマについては表1の方々から報告していただいた。

表1 さとうきび生産に係る担い手育成および労働力の確保の報告者

ア.担い手育成
(ア)地域のバックアップによるハーベスタ導入
   (宮古島:砂川友作氏)

砂川友作氏(写真)

 ハーベスタの導入を機に平成24年に株式会社農業生産法人比嘉産業を立ち上げ、自身の住む比嘉原料区内の株出管理、収穫作業などの受託を行っており、専業農家として約3ヘクタールの圃場でさとうきびを栽培している。

 導入にあたっては、宮古製糖株式会社など関係者のバックアップがあり、導入前の1年間は島内の他法人で研修し、操作技術のほか、補助員への作業の割り振り、作業スケジュールの組み方など、オペレーターとして必要なことを一通り学ぶことができた。

 また、宮古島では、宮古地区ハーベスター運営協議会、製糖会社、各地区原料員、オペレーターの間で収穫作業の計画策定・作業割り当てが行われるため、収穫受託作業量がオペレーター間である程度均一化されている。そのため、ハーベスタ導入後は、一定の作業量、収入の確保を実現できた。

 現在、小型ハーベスタ、複合株出管理機、大型トラクター、プラソイラーなどを所有し、収穫作業のほか、株出管理や、整地・深耕の作業なども受託している。

 高齢化が進む島内事情を考慮すると、作業受委託による高齢生産者の作業負担軽減は必要不可欠だが、生産者の委託料負担が大きくなると手取り収入が減少し、生産意欲が衰退してしまうおそれがある。一方で、作業を受託する立場としては、法人の安定的な運営のためには受託料を安易に下げることは難しく、悩みの種である。

(イ)作業の平準化で機械稼働率が向上
   (石垣島:當銘悟氏)

 約30ヘクタール規模でさとうきび栽培を行っており、加えて耕起・整地、植え付け作業の受託を約25ヘクタール行っている。中型ハーベスタのほか、農薬散布機や株揃機などを導入することで機械化を推進し、適期肥培管理体制を整えている。自作地では春植えと株出し作型を中心とし、夏季に夏植えの作業受託を行うことで作業の平準化を図るなど、機械の効率利用に努めている。


(ウ)兼業農家などへのサポートに注力
   (与論島:藤田克仁氏)

 平成18年に島にUターンし、昨年までは兼業農家として知人の生産組合のハーベスタオペレーターなどに従事していたが、今年から専業として本格的に自作地での栽培を開始した。加えて、与論町糖業振興会が今年度より開始した調苗班活動のメインメンバーの1人として、島内の生産者に供給する夏植え用の優良苗栽培を手掛けている。この活動などを通じて、高齢農家や兼業農家に対するサポートの輪を広げていきたい。

(エ)島内の円滑な作業受委託体制を構築
   (沖永良部島:前田睦也氏)

 公益財団法人沖永良部農業開発組合では今年度、農作業受委託を支援する取り組みを新たに始めた。具体的には、委託者から作業受け付けおよび作業料金徴収を行い、受託者に対して作業依頼、料金支払いを行っている。第三者である同組合が仲介することで、委託者からは「作業が迅速に行われた」「人付き合いなどを考慮せずに作業依頼を行えるようになった」、また受託者からも「受託面積拡大が比較的スムーズになった」といった声が出てきている。

(オ)優先すべきは農地集積
   (久米島:宮里太郎氏)

 久米島では、(1)小規模の圃場が点在している、(2)作業受託組織を立ち上げる資金が不足している −などといった要因により、担い手による法人設立が進んでおらず、作業受委託体制が整っていないことが課題となっている。このため、まずは、農地中間管理事業の活用などで農地を集積し、受委託体制の構築を目指すこととしている。


イ.労働力の確保
(ア)精脱葉施設(注)を通じて雇用を確保
   (種子島:梶屋良幸氏)

 アグリエイト株式会社は、中種子町管内で収穫作業を受託していた6つの生産組合が中心となって平成26年に設立され、精脱葉施設を運営している。以前は、各生産組合のハーベスタ収穫時には、6〜7名の作業員が梢頭部の葉落とし作業などに従事していたが、地域住民の高齢化により作業員の確保が年々困難な状況となっていた。そこで、同じ悩みを持つ生産組合同士が課題解決に向けて話し合い、精脱葉施設を導入することを決めた。

 精脱葉施設は収穫時期にはほぼ連日稼働しており、梢頭部の除去などを常時16名が8時から17時までのシフト制で行っている。直営農場に加え、ほかの生産組合が収穫したさとうきびについても作業を請け負っており、年間処理量は約9600トン(約160ヘクタール規模)である。

 施設の作業は数日間の経験により習得できる内容であることから、地域内住民が中心となって、比較的容易に人材を確保できるようになった。

 また、通年でも3名を雇用しており、精脱葉施設の操業と直営農場での生産管理とを組み合わせて、年間作業に空きが出ないように工夫している。直営農場、精脱葉作業の受託業務ともに拡大したい意向で、それに伴い雇用者もさらに増員したい。

(注)ハーベスタ収穫された原料からトラッシュ(夾雑物:梢頭部、枯葉、土砂など)を除去する施設。種子島では、製糖工場へ搬入する原料について、トラッシュ低減の取り組みが浸透した結果、ハーベスタ収穫原料は当該施設を通してから工場へ出荷することが通例である(参考:新光糖業株式会社 農務部 林 隆夫「種子島のトラッシュ率低下・耕畜連携に向けた取組について」『砂糖類情報』(2008年6月号))。

(イ)法人設立に伴う規模拡大で雇用創出
   (南大東島:金川均氏)

 機械の効率的利用を目的として、平成11年に生産者4名で有限会社サザンドリームを設立した。自作地および作業受託面積を拡大させることで、昨年から2名の従業員を通年で雇用している。また、将来の担い手育成のために、法人設立ノウハウに係る講演や海外研修生の受け入れなどを行っている。

(ウ)法人化を契機に雇用拡大を目指す
   (喜界島:栄常光氏)

 さとうきび生産と和牛繁殖との複合経営を行っている。現在は1名を期間雇用しているが、福利厚生を充実させることができる法人の設立に向けて準備中である。また、畜産関連作業などと組み合わせることで、新たにもう1人の雇用を計画している。

(エ)担い手育成と労働力確保との両立
   (奄美大島:榮一樹氏)

 父、兄とともにさとうきび生産に従事しているが、同年代の新規就農者2名を雇用し、基本技術の習得の場、実践力を高める場として作業を一緒に行っており、経営主である父は雇用労働力確保と担い手の育成を両立させていると感じている。共に働く新規就農者の2人とは、今後のさとうきび生産について、意見交換する機会が多く、良い刺激を受けている。 

 なお、當銘氏、金川氏、榮氏の経営については、当誌バックナンバーにて紹介記事を掲載しているので、各氏の取り組み詳細はそちらを参照されたい(注)

(注)札幌事務所、鹿児島事務所、那覇事務所「甘味資源作物生産の安定化に向けた取り組み」『砂糖類・でん粉情報』(2015年12月号)
   那覇事務所 青木 敬太、大田 育子「法人経営による生産性向上・経営安定化の取り組み〜有限会社サザンドリーム(南大東島)〜」
   『砂糖類・でん粉情報』(2016月10月号)
   札幌事務所、鹿児島事務所、那覇事務所「甘味資源作物の安定生産の確保に向けて」『砂糖類・でん粉情報』(2016月11月号)

(2)地力増進の取り組み

 地力増進に関するテーマでは、かん水の推進と堆肥の導入について表2の4名に報告いただいた。

表2 地力増進の取り組みの報告者

ア.かん水の推進
(ア)自作地を展示実証圃場に提供
   (徳之島:谷村清次氏)

谷村清次氏(写真)

 徳之島では、平成27年に完成した徳之島ダムの一部通水が、今年に入って始まっている。同ダムは島の畑面積の約半分にあたる3450ヘクタール分の水730万トンを貯めることが可能であり、これを契機に、ダムの受益地域となる生産者へのかん水を推進するため、畑かんマイスター(注)の委嘱を受けた。自作地に展示実証圃場を設定し、かん水施設の導入を予定する生産者などを対象に研修を実施している。実証圃場における比較検証では、かん水の有無だけでも生育に差が生じるが、かん水に加えて堆肥を投入すると生育状況が目に見えて良くなる。このことから、かん水と施肥の両方を実施することが非常に重要である。

(注)生産者のかん水への意識啓発や、かん水を利用した営農の先導的役割を担う生産者として徳之島地域総合営農推進本部が認定する者のこと。

(イ)増産のためにはかん水が第一
   (沖縄本島:島袋正樹氏)

 沖縄県においては土壌深度が浅い地域が多い中、まずもって増産のために最も効果が表れやすいのはかん水の実施であり、水資源の確保と圃場におけるかん水施設の整備を並行して行うことが重要である。かん水は干ばつ時のみならず、植え付けや中耕培土後でも効果が大きいため、継続的な実施が望ましい。

イ.堆肥導入
(ア)島を挙げて土づくりを推進
   (伊是名島:名嘉清光氏)

名嘉清光氏

 伊是名島では、かつてはさとうきびと畜産の複合経営が一定戸数存在していたが、土地基盤整備や子牛価格の下落などの影響で畜産が衰退し、島内のみでは十分な牛ふんを確保できなくなった。

 そこで、JAおきなわや伊是名村が主体となって、平成22年から堆肥の元となる牛ふんを沖縄本島から導入するようになった。JAおきなわが運営する島内の堆肥センターは、現在、沖縄本島から搬入した牛ふん約2000トンに、製糖工場の精脱葉施設から出たトラッシュや糖みつなどを混ぜ、約3000トンの堆肥を製造している。堆肥の製造経費は伊是名村が全額助成しており、生産者の負担はない。また、散布作業は堆肥センターが1トン当たり1000円で実施している。土地基盤整備やダムによるかん水整備はある程度達成されていることから、今後は施肥による土づくりを、島を挙げて推進していく。

(イ)製糖会社などの協力により堆肥を確保
   (北大東島:上地勝也氏)

上地勝也氏

 北大東島では、大型ハーベスタの踏圧による土の硬化や地盤の沈下、さとうきび連作による地力低下が課題となっており、堆肥導入による土壌改良が求められてきた。しかしながら、島内に畜産経営が存在しないため、堆肥は島外から導入するしかないが、島への輸送コストが高額なため、なかなか実現には至らず、個人で島外から堆肥を購入する生産者もいなかった。

 そこで、北大東製糖株式会社は平成27年3月、26年度さとうきび増産緊急対策事業を活用し、鶏ふん堆肥および牛ふん堆肥を島外から導入した。その後、27年度さとうきび増産推進支援事業によっても導入が行われた。

 この2度の事業実施で、鶏ふん堆肥約290トンが春植え・株出し圃場に、牛ふんなど約3230トンが夏植え圃場に散布され、実施に要する経費のうちの5%程度が生産者の負担となったものの、希望者の全圃場に行き渡った。特に、牛ふん堆肥が投入された夏植え圃場の28年産の単収は、天候に恵まれたこともあって、投入前と比べて1.5トン程度増え、8.5トンに達するのではないかと期待されている。

  ただし、長年にわたって有機物が不足してきたため、十分な地力回復に至ったとはいえない。事業終了後も継続して堆肥を投入するには、依然として輸送コストが大きな課題である。今回の事業で導入したクロタラリアなどの種子を活用した緑肥の普及も推進する必要がある。

(3)まとめ

 最後に、両県の担当者から、これまでの報告を総括した上での県内概況や作業受委託整備の支援などについて説明があった。また、会場からは、砂川氏の報告にあった宮古地区ハーベスター運営協議会の支援内容の詳細や金川氏の海外研修生受け入れ体制に関する質問が出るなど、報告者の特色ある経営、支援内容に関心が示されていた。

おわりに

 鹿児島県および沖縄県では平成27年度に、28年度から37年度までのさとうきび増産計画をそれぞれ策定し、両県ともに、今回紹介したような担い手の育成や地力の増進などを、目標達成に向けた取り組み項目として定めている。

  各島の置かれたさとうきび生産環境はさまざまであるが、今回の検討会において見いだされた地域間の類似点、相違点などが生産現場においてさらに検討されることにより、今後のさとうきび増産の一助となることを期待したい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構  調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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