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5. 日本の主要輸入先国の動向(2016年12月時点予測)

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最終更新日:2017年1月10日

5. 日本の主要輸入先国の動向(2016年12月時点予測)

2017年1月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖(HSコード1701.14−110)および甘しゃ糖・その他(同1701.14−200)の合計)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであったが、 2015年の主要輸入先国ごとの割合は、タイが56.0%(前年比1.9ポイント減)、豪州が39.0%(同8.7ポイント増)、グアテマラが4.9%(同3.2ポイント増)と、この3カ国でほぼ全量を占めている(財務省「貿易統計」)。

 タイおよび豪州は毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回はグアテマラを報告する。
タイ
2016/17年度の砂糖生産量は前年度並み、輸出量はかなり減少の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)は、サトウキビ収穫面積は141万ヘクタール(前年度比0.2%減)と前年度並みと見込まれる一方、長引く干ばつの影響により特に新植サトウキビの生育不良が見られるものの単収は前年度ほど低下しないと見込まれることから、生産量は1億436万トン(同11.0%増)と、かなりの増加が見込まれている。

 しかし、サトウキビの生育不良に加え、長雨により例年より約1カ月遅れの12月上旬からの収穫となったことから、製糖歩留まりの低下が予想され、砂糖生産量は、1000万トン(同0.2%減)と前年度並みと見込まれている。輸出量は、中国の輸入減少などに伴い、729万トン(同6.6%減)と、かなりの減少が見込まれている。
表6 タイの砂糖需給の推移
 現地報道によると、タイ政府は、インラック政権時代に担保融資制度に基づき買い取った品質の低下したコメ400万トンを、エタノール原料として市場へ放出する方針を明らかにした。これは、サトウキビの収穫遅延に伴い、エタノールの主原料である糖みつの供給が遅れていることから、エタノール需給のひっ迫化が予想されるためとみられる。

 ブラジル政府により4月にWTOに提訴されている問題(注1)で、タイ政府は11月3日、ブラジルとの2国間協議の場に、10月中旬に閣議承認された砂糖政策の改革案を提出した。この改革案には、砂糖産業全体の収益をサトウキビ生産者と製糖業者で7:3の割合で分配する収益分配方式や販売割当(注2)を廃止するとともに、政府が設定している国内の砂糖価格を変動制に移行することが盛り込まれている。現地報道によると、現在、1キログラム当たり23.5バーツ(76円(11月末日TTS:1バーツ=3.24円)に固定されている砂糖の小売価格には、変動幅が同1〜2バーツ(3〜6円)となるよう値幅制限が設けられるという。タイ政府は、この改革案の来年度からの施行を目指し調整を行っている。

(注1)ブラジル政府は4月初旬、国際砂糖価格の低迷時などに製糖企業を通じて生産者に支払われる補てん金や、砂糖の販売割当制度および国内販売価格の設定は、間接的な輸出補助金に当たり国際貿易協定に違反しているとして、4月初旬にWTOにタイ政府を提訴していた。
(注2)タイ産砂糖は、A割当と呼ばれる国内供給向けとB割当およびC割当と呼ばれる輸出向けなどの販売割当制度に基づき管理されている。
(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移
豪州
2016/17年度の砂糖生産量はやや増加、輸出量はわずかに減少の見込み
 2016/17砂糖年度(7月〜翌6月)は、サトウキビ収穫面積が42万ヘクタール(前年度比5.8%増)、生産量が3443万トン(同4.0%増)と、ともにやや増加が見込まれている。現地報道によると、ニューサウスウェールズ州や主産地であるクイーンズランド(QLD)州の一部の地域で降雨が続いたことから、例年10月で終了するサトウキビの圧搾作業が11月まで行われるなど遅延が生じたものの、製糖作業は、各企業により稼働率を上げて行われている。

 サトウキビの増産に加え、製糖歩留まりの向上も見られることから、砂糖生産量は523万トン(同5.8%増)と、やや増加が見込まれている。一方、中国の輸入減少などに伴い、輸出量は401万トン(同2.5%減)と、わずかな減少が見込まれている。
表7 豪州の砂糖需給の推移
 QLD州砂糖公社(QSL)(注)は12月15日、来年度からQSLを介さず砂糖輸出を行うと表明していた製糖企業3社のうち2社が生産する砂糖の一部について、サトウキビ生産者が希望すれば、QSLを介して輸出できる契約を締結したと発表した。QSLによる輸出を希望する生産者が多いことから、残り1社に対しては10月末以降、連邦政府のジョイス農相が会談の機会を設け、他の2社と同様、生産者の権利の尊重するよう働き掛けたとの報道がある。

 また、11月23日、増加傾向にある肥満対策のため、砂糖を含む清涼飲料水に対する課税導入を推奨する報告書が、連邦議会に提出された。この報告書では、非アルコール飲料に含まれる砂糖100グラム当たり0.4豪ドル(34円(11月末日TTS:1豪ドル=86円))の課税により、約5億豪ドル(430億円)の税収が見込まれ、砂糖を含む飲料の消費は約15%減少し肥満防止につながるとしている。一方で、豪州コンビニエンスストア協会は、同報告書には同税の導入が肥満を抑制するという証拠がなく、小規模経営に打撃を与えかねないとして非難している。また、連邦政府のジョイス農相は、同税の導入を否定する姿勢を示している。

(注)QLD州産砂糖の輸出を担う公社。1999年に施行された同州砂糖産業法に基づき、同州産砂糖の輸出は同公社に一元化されていたが、2006年の法改正により一元化は廃止となった。その後も利便性などから同公社の輸出量が同州産砂糖の9割を占めていたものの、同州の砂糖産業への外資系企業参入に伴い、その割合が減少している。
グアテマラ
2016/17年度は砂糖生産量、輸出量ともにわずかに増加の見込み
 2016/17砂糖年度(11月〜翌10月)のサトウキビ収穫面積は、26万ヘクタール(前年度比1.5%増)、生産量は2415万トン(同1.3%増)と、ともにわずかな増加が見込まれている。砂糖生産量は、製糖歩留まりの向上が予想されることから、305万トン(同2.8%増)とわずかな増加が見込まれている。

 また、主要国の減産による世界の砂糖需給ひっ迫化を受けて、国際砂糖相場が高値にあることから、輸出量は、215万トン(同2.8%増)とわずかな増加が見込まれている。
表8 グアテマラの砂糖需給の推移
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