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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2017年1月時点予測)

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最終更新日:2017年2月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2017年1月時点予測)

2017年2月

ブラジル2016/17年度(4月〜翌3月)の見通し

2016/17年度の砂糖生産量、輸出量はともにかなり増加の見込み
 2016/17砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、収穫期の天候不順などにより前年度に収穫しなかったものも含まれるため、911万ヘクタール(前年度比5.3%増)とやや増加が見込まれるものの、サトウキビの新植が進まず単収の低下が見込まれることから、生産量は6億8195万トン(同2.5%増)と、わずかな増加にとどまると見込まれている。
 


 

 一方、国際砂糖価格の上昇により、企業がサトウキビの砂糖への仕向け割合を増やしていることや製糖歩留まりが向上していることなどから、砂糖生産量は、4030万トン(同14.5%増)とかなりの増加が見込まれている。さらに、連邦政府が、エタノール販売に係る社会負担税(エタノール1リットル当たり0.12レアル(4円(12月末日TTS:1レアル=36円))を2017年1月より再導入する方針であることから、今後、企業がサトウキビの砂糖への仕向け割合をさらに増加させる可能性も考えられる。砂糖の増産に伴い、輸出量も、2805万トン(同11.6%増)とかなりの増加が見込まれている。

 他方、ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)(注1)が12月中旬に公表したサトウキビなどの2016/17年度生産見通しによると、サトウキビ栽培面積は911万ヘクタール(同5.3%増)とやや増加した。生産量も6億9454万トン(同4.4%増)と、やや増加が見込まれているが、これには、収穫期の天候不順などにより前年度に収穫しなかった分も考慮されていると考えられる。また、砂糖生産量は3981万トン(同18.9%増)と大幅な増加が見込まれるのに対し、エタノール生産量は2786万キロリットル(同8.5%減)と、かなりの減少が見込まれている。

 また、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注2)が発表した2016年4〜12月の生産実績報告によると、同国中南部地域のサトウキビ圧搾量は、5億9200万トン(前年同期比0.6%増)と前年度並みであったものの、砂糖生産量は3520万トン(同15.7%増)とかなり増加した。これは、サトウキビ1トン当たりの産糖量が59.5キログラム(同15.0%増)とかなり増加していることや、企業が砂糖への仕向け割合を増やしているためとみられる。

 なお、同報告によると、エタノール生産量は、2491万キロリットル(同7.6%減)とかなり減少した。また、輸出量も含めたエタノールの販売量は、2037万キロリットル(同11.0%減)となった。このうち、含水エタノール(注3)の国内販売量は、在庫量の減少に伴い、エタノール価格が高騰したため、1152万キロリットル(同17.0%減)となった。石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)によると、12月の含水エタノール小売価格(サンパウロ州)は、1リットル当たり2.69レアル(97円)と、ガソリン小売価格の同3.57レアル(129円)の70%(注4)を上回っている。このため、含水エタノールのガソリンに対する優位性は低下していると考えられる。

 (注1)主要作物の生産状況報告や予測などを行っているブラジル農務省直轄の機関。
 (注2)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
 (注3)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。

 (注4)一般的なフレックス車のエタノール燃料効率がガソリンの70%程度とされていることから、消費者の購入判断の基準となっている。

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2016/17年度の砂糖生産量はかなり減少、輸出量は大幅減の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)は、サトウキビ収穫面積は474万ヘクタール(前年度比6.2%減)、生産量は3億3193万トン(同7.5%減)と、ともに干ばつの影響によりかなりの減少が見込まれている。このため、砂糖生産量も、2450万トン(同10.5%減)とかなりの減少が見込まれている。
 


 

 しかしながら、インド砂糖製造協会(ISMA)が発表した2016年10〜12月の生産実績報告によると、砂糖生産量は、精製糖換算で809万トン(前年同期比0.4%増)となった。このうち、サトウキビ栽培面積が拡大し、最大の生産州になると見込まれているウッタルプラデシュ州では274万トン(同52.5%増)と大幅に増加した一方で、干ばつの影響により、マハラシュトラ州では253万トン(同25.1%減)、グジャラート州では35万トン(同24.1%減)と大幅に減少し、カルナタカ州では156万トン(同2.1%減)とわずかに減少した(図3)。

 現地報道によると、サトウキビの減産に伴い、例年11月〜翌4月にかけて操業を行うマハラシュトラ州では、製糖工場のうち25工場が、12月までに操業を終えており、他工場も2月までの操業終了が見込まれる。

 
一方、同国では、砂糖の減産により2015年末から国内の砂糖価格が高騰しており、中央政府は、国内市場での砂糖の流通量を増やし、価格の安定化を図ることとしている。このため、同政府は6月中旬以降、粗糖を輸入して6カ月以内に再輸出する精製糖や2500トンのオーガニックシュガーを除いた砂糖の輸出に対し、輸出関税(20%)を導入している。さらに、製糖企業に対する砂糖在庫量の上限(注)2017年4月まで設定することとしている。これらにより、砂糖輸出量は、130万トン(前年度比67.9%減)と大幅な減少が見込まれている。

 
また、1月上旬の現地報道によると、実施が予想されていた砂糖の輸入関税の撤廃もしくは引き下げについて、中央政府は直ちに実施する意向はないものとみられる。これは、複数の州が選挙を控えていることが背景にあると考えられる。仮に、砂糖の輸入関税が撤廃もしくは引き下げられることとなれば、海外産砂糖の需要が高まり、製糖企業の収入減が見込まれるため、製糖企業から生産者へのサトウキビ代金支払いの遅延が懸念されるとして、ISMAは反発している。
 

(注)中央政府は、貿易業者に限定していた砂糖在庫量の上限設定を製糖企業にも適用することとし、各製糖企業が保持できる在庫量は、9月末時点では2015/16年度の砂糖生産量の37%10月末時点では同24%を上限と設定していた。

図3 インドの地域別甘しゃ糖生産実績(10 〜 12月の生産量)

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2016/17年度の砂糖生産量はかなり増加、輸入量は大幅減の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)は、サトウキビについては、収穫面積が183万ヘクタール(前年度比10.0%増)、生産量が1億2652万トン(同7.9%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている。これは、広西チワン族自治区や海南省における栽培面積の増加に加えて、良好な生育状況が要因である。

 てん菜についても、収穫面積は15万ヘクタール(同10.0%増)とかなり増加し、生産量は771万トン(同5.0%増)とやや増加が予想されている。これは、主要生産地である内モンゴル自治区の増加などが要因である。これらにより、砂糖生産量は、1087万トン(同14.9%増)とかなりの増加が見込まれている。
 


 

 また、中国砂糖協会(CSA)が発表した2016年10〜12月の生産実績報告によると、砂糖生産量は精製糖換算で230万トン(前年同期比19.9%増)と大幅に増加した(図4)。これは、サトウキビおよびてん菜の栽培面積拡大により、甘しゃ糖が152万トン(同26.6%増)と大幅に増加し、てん菜糖も77万トン(同8.4%増)とかなり増加したことによる。

 なお、CSAが発表した先に2016/17年度の砂糖生産見通しによると、精製糖換算で、甘しゃ糖が896万トン(前年度比14.1%増)、てん菜糖が104万トン(同22.4%増)とともに増加し、全体で1000万トン(同15.1%増)とかなりの増加が見込まれている。特に、最大生産地域である広西チワン族自治区の甘しゃ糖生産量は600万トン(同17.4%増)、内モンゴル自治区のてん菜糖生産量が47万トン(同65.5%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。

 
さらに、中央政府による備蓄砂糖の国内企業への売り渡しが開始され、12月末までの3回の入札で合計398000トンが売り渡された。CSA2016/17年度に200万トン程度、2017/18年度も同程度の備蓄砂糖の放出を見込んでいる。このため、砂糖輸入量は、355万トン(同42.8%減)と大幅な減少が見込まれている。

図4 中国の砂糖生産実績(10 〜 12月の生産量)

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2016/17年度の砂糖生産量は大幅増、輸入量はかなり減少の見込み
 2016/17砂糖年度(10月〜翌9月)は、てん菜収穫面積が159万ヘクタール(前年度比10.8%増)、生産量は1億1218万トン(同6.7%増)と、ともにかなりの増加が予想されている。2017年10月以降の生産割当の廃止を目前に、生産量上位国であるフランスやドイツでは、在庫増への懸念から栽培面積の拡大に慎重になっているとみられる一方、ポーランドやオランダなどでは栽培面積を前年度から約2割増加させるなど、積極的に増産する動きも見られている。記録的な生産量となった2014/15年度に比べ、春先の低温や降雨のため単収が低下すると見込まれているものの、前年度と比べて産糖量の増加が見込まれていることなどから、砂糖生産量は、1752万トン(同18.8%増)と大幅な増加が予想されている。
 砂糖の増産に伴い、砂糖輸入量は、339万トン(同9.0%減)とかなりの減少が予想されている。

 一方、欧州委員会が12月下旬に公表した2016/17年度の生産予測によると、砂糖生産量は精製糖換算で1666万トン(同11.6%増)とかなり増加し、砂糖輸入量は350万トン(同0.3%増)と前年度並みにとどまると見込まれる。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見込みおよび生産割合

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