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スマイルケア食の現状と展望

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最終更新日:2017年5月10日

スマイルケア食の現状と展望

2017年5月

農林水産省食料産業局食品製造課食品第3班
課長補佐 添野 覚

1.スマイルケア食とは

 スマイルケア食とは、新しい「介護食品」の愛称である。
 高齢者のみならず、食機能(かむこと・飲み込むこと)や栄養に関して問題があるという方々に、幅広く「介護食品」を利用していただけるよう、これまでの範囲をより広く捉え直して、普及していくために、公募で選ばれたものである。(図1

 超高齢社会の到来を踏まえ、平成25年2月から、農林水産省が中心となり、厚生労働省、消費者庁などとも連携して、介護食品市場の拡大を通じて、国民の健康寿命の延伸に貢献することについて検討を進めている。医療、介護関係者、食品メーカー、流通などの関係者を交えて意見交換を行う中で、スマイルケア食の普及が位置付けられている。

 スマイルケア食の対象者は、原則、在宅の高齢者や障がい者であって、「かむこと・飲み込むことに問題がある人」「そうした問題はないが栄養状態が悪い人」とされているほか、「このような状態に移行する恐れのある人」も対象としている。

 スマイルケア食の普及に当たっては、配慮すべき点として、栄養状態の改善やQOL(生活の質)の向上だけでなく、おいしさ、見た目の美しさ、食べる楽しみや入手のしやすさなどが挙げられている。また、治療食や病院食、形状がカプセル・錠剤のものは対象からは外されている。
 
 
図1 スマイルケア食普及推進ロゴマーク

2.スマイルケア食の選び方

 多様な介護食品が市場に出回っている中、小売店などで商品を選択する際に、各個人それぞれの状態に応じて「スマイルケア食」を混乱なく選ぶことができるように、医療、介護関係者、食品メーカー、流通などの関係者による検討を経て、選び方の早見表が作成されている。

 早見表は、図2の通り、それぞれの利用者の状態に応じて、問いに答え、矢印に沿って左から右に進んでいくと、適切なスマイルケア食が選べるという構造になっている。かむこと・飲み込むことに問題はないものの、健康維持上栄養補給を必要とする方向けの食品、かむことに問題がある方向けの食品、飲み込むことに問題がある方向けの食品の3種のカテゴリーが設けられ、それぞれ「青」、「黄」、「赤」のマークによって簡単に見分けられるよう表示が提案されている。さらに、「黄」マーク表示の食品群は4段階、「赤」マークは3段階に分けられており、これらを直接の利用者だけでなく、スマイルケア食の選択に関係する誰もが利用しやすいよう配慮された制度が提案されている。
図2 「スマイルケア食の選び方」

3.マーク全体の考え方

 スマイルケア食の分類マークについては、専門家からなるワーキンググループで運用ルールなどについて検討が行われ、平成27年12月に基本的な考え方が取りまとめられた。

 利用者が病院、施設と在宅の間を行き来するような場合にも、混乱なくスマイルケア食を選べることや、日本摂食・(えん)()リハビリテーション学会の嚥下調整食分類2013や日本介護食品協議会の規格などの既存の分類と整合性を持たせることなどを考慮して制度のあり方が整理された結果、「青」マークは農林水産省の要領に基づいて自己適合宣言を行う仕組みの対象とされ、「黄」マーク5、4、3、2はJAS制度(そしゃく配慮食品の日本農林規格)の対象、「赤」マーク2、1、0は消費者庁の特別用途食品の表示許可制度(えん下困難者用食品)の対象として、農林水産省に対してマークの利用許諾を申請することとなっている。
 「青」・「黄」・「赤」それぞれのマークの制度は次の通りである。

(1)【青マーク】かむこと・飲み込むことに問題はないものの、健康維持上栄養補給を必要とする方向けの食品
 事業者の方が、自社商品はスマイルケア食の「青」マーク利用許諾ルールに適合していると「自己適合宣言」をした上で、農林水産省に対してマークの利用を申請する仕組みで、平成28年2月より運用を開始している(図3)。

 対象商品は、市販される加工食品(特別用途食品および機能性表示食品を除く)のうち、経口タイプのもの(形状がカプセル・錠剤のものを除く)で、具体的には、食事の補助(おやつやデザートなど)として利用することを想定した食品や、食事(主食、主菜、副菜)としての食品が想定される。
 栄養素などを基準として、以下の基準が定められている。

(1)エネルギーおよびたんぱく質の基準
 エネルギーおよびたんぱく質の量(食品表示基準〈平成27年内閣府令第10号〉第3条の表に規定する表示の方法に従い表示する場合における熱量およびたんぱく質の量をいう)が、以下の基準を満たすものとする(注)

【エネルギー】
 100グラムまたは100ミリリットル当たり100キロカロリー以上
【たんぱく質】
 100グラム(100ミリリットル)当たりのたんぱく質含有量が8.1グラム(4.1グラム)以上
 または、100キロカロリー当たりのたんぱく質含有量が4.1グラム以上

(2)その他
 アミノ酸組成のバランスに配慮することや、飽和脂肪酸、ナトリウムなどの特定の栄養素の摂取量が、健康増進法(平成14年法律第103号)第16条の2第1項に規定する食事摂取基準で定められている目標量を上回るリスクが高くならないよう配慮することが定められている。

(注)水や牛乳などを加えて、自ら調理して喫食する食品については、容器包装などに記載された調理方法に従って調理した後のエネルギーおよびたんぱく質の量も基準を満たしていることとする。
 
図3 「青」マークの表示例
(2)【黄マーク】かむことに問題がある方向けの食品
 JAS法に基づいて、そしゃく配慮食品の日本農林規格(JAS規格)が定められており、事業者の方が、JAS規格の格付け対象商品であることを示して、農林水産省に対して「黄」マークの利用を申請する仕組みで、平成28年11月より運用を開始している(図4)。

 そしゃく配慮食品とは、通常の食品に比してそしゃくに要する負担が小さい性状、固さその他の品質を備えた加工食品(乳児用のものを除く)をいう。JAS規格では、内容物の固さについて事業者が内部規程を具体的、体系的に定めていることや、測定機器の設置、官能評価担当者の配置などを要求しており、これによって製品の品質管理を実施することとされている。
 また、「黄」マークとJAS規格との対応関係は以下の通りである。

「黄5」容易にかめる食品
 そしゃく配慮食品のうち、その固さが、容易にかみ切り、かみ砕きまたはすりつぶせる程度のもの(適度なかみごたえを有するものに限る)。
「黄4」歯ぐきでつぶせる食品
 そしゃく配慮食品のうち、その固さが、容易にかめる食品と舌でつぶせる食品の中間程度のもの。
「黄3」舌でつぶせる食品
 そしゃく配慮食品のうち、その固さが、舌と口蓋の間で押しつぶせる程度のもの。
「黄2」かまなくてよい食品
 そしゃく配慮食品のうち、その固さが、かまずに飲み込める程度のもの。
図4 「黄」マーク表示例
(3)【赤マーク】飲み込むことに問題がある方向けの食品
 事業者の方が、消費者庁の所管する特別用途食品の「えん下困難者用食品」(えん下を容易ならしめ、かつ、誤えんおよび窒息を防ぐことを目的とするもの)として許可された商品であることを示して、農林水産省に対して、マークの利用を申請する仕組みで、「黄」マークと同様、平成28年11月より運用を開始している(図5)。
図5 「赤」マークの表示例
 えん下困難者用食品たる表示の許可基準は、以下の基準に適合したものであることとされており、「赤」マークとの関係では、許可基準Tが「赤0」、許可基準Uが「赤1」、許可基準Vが「赤2」にそれぞれ対応するものとされている。

ア 基本的許可基準
 (ア)医学的、栄養学的見地から見てえん下困難者が摂取するのに適した食品であること。
 (イ)えん下困難者により摂取されている実績があること。
 (ウ)特別の用途を示す表示が、えん下困難者用の食品としてふさわしいものであること。
 (エ)使用方法が簡明であること。
 (オ)品質が通常の食品に劣らないものであること。
 (カ)適正な試験法によって成分または特性が確認されるものであること。

イ 規格基準  
 に示す規格を満たすものとされている。  
 なお、温めるなどの簡易な調理を要するものにあっては、その指示通りに調理した後の状態で当該規格を満たせばよいものとされている。
表 特別用途食品(えん下困難者用食品)規格基準

4.今後の展開

 スマイルケア食は、青・黄・赤のマークに関する制度が整い、これから普及を本格化させていく段階に入ったところである。

 農林水産省としては、今後、厚生労働省や消費者庁などと連携しつつ、医療、介護関係者、食品メーカー、流通などの関係者の協力を得て、実際にスマイルケア食が選ばれやすいような環境を整備することを通じて、利用者の皆さんが、食を通じたQOLを高められるよう、努めていく予定である。

 読者の皆さんにおかれては、この機会にスマイルケア食の仕組みを知っていただき、青・黄・赤マークの表示がされた商品とスマイルケア食の制度の普及をお願いしたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713