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中国におけるサトウキビ作機械化の現状と課題

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最終更新日:2017年10月10日

中国におけるサトウキビ作機械化の現状と課題

2017年10月

沖縄県農業研究センター 主任技師 赤地  徹
琉球大学 名誉教授 上野 正実
沖縄県農林水産部糖業農産課 主任技師 東江 広明
中国蘇州市職業大学 教授 孫  麗亜
株式会社くみき 南部営業所長 大城  学

【要約】

 中国では、近年の急速な経済発展を背景に、農村での労働力不足が顕在化し、サトウキビ作においても収穫作業と植え付け作業を中心に機械化が進んでいる。しかし、そのレベルは全体的に30%程度で、収穫作業ではまだ数%に過ぎない。世界第3位のサトウキビ生産国でありながら、生産農家の零細性や農地などの栽培環境は日本に酷似している部分も多い。加速度的に活発化している研究機関や民間企業での技術開発の取り組みが注目される。

はじめに

 日本のサトウキビ作では、生産者の高齢化や後継者不足などによる労働力の脆弱化の進行と相まって機械化が急速に進展してきた。機械による収穫率は、2015/16製糖年期で鹿児島県87.7%1)、沖縄県67.0%2)と大きく伸びてきている。サトウキビ作においては、植え付けから肥培管理、収穫、株出し管理まで一連の機械化体系がほぼ出来上がっているものの、採苗作業や育苗した1芽苗などの移植作業、補植作業などのいわゆる“隙間作業”が機械化から取り残されている。沖縄県では2015年度から採苗機とセル苗移植機の開発に取り組んでいる。また、土壌踏圧など機械化の進展により新たに発生した課題も多い3)

 一方、近隣のサトウキビ生産国に目を向けると、中国では著しい経済発展を背景に農村地域から都市部への労働力の流出などにより、農業における労働コストや資材コストの上昇が顕在化してきている。サトウキビ作においても機械化の機運が高まっており、収穫作業や植え付け作業を中心に作業機の開発や海外からの導入が積極的に進められている。中国のサトウキビ作機械化に関する紹介や調査を行った日本の文献は泉裕己(1989)の報告4)以外には見当たらない。

 今回、沖縄県で開発を進めている採苗機や移植機に関連する情報を収集する目的で、2017年1月に中国広東省、広西チワン族自治区(以下「広西自治区」という)のサトウキビ産地を訪問し、機械化の取り組みの現状を調査したのでその状況について報告する。

1.サトウキビの生産状況

 中国はブラジル、インドに次ぐ世界第3位のサトウキビ生産国である(収穫面積:182万6700ヘクタール〈図1〉、生産量:1億2652万2000トン〈図2〉)。主な生産地は、広西自治区、雲南省、広東省、海南省の中国南西部となっている(図3)。2015/16年期に収穫面積、生産量ともに減少しているのは、生産コストの増加による国際競争力の低下と、砂糖業界の秩序の混乱によりサトウキビ価格が下がり、農家の生産意欲を失わせたためと考えられている。周期的な増減を繰り返しながらも長期的には増産傾向が続いている。本来、サトウキビは福建省と広東省が主産地であったが、近年の経済発展を背景により労働コストの低い内陸部へ産地が移動しており、広西自治区では中国全体のサトウキビ生産量の70%を、自治区の耕地面積の30%以上をサトウキビが占めるに至って集中化が進んでいる。

図1 主要10カ国のサトウキビ収穫面積

図2 主要10カ国のサトウキビ生産量

図3 中国の主要なサトウキビ生産地

 また、近年の国内の砂糖消費量は毎年2%程度のペースで増え続けており、砂糖の生産量が消費量を下回っていることから輸入量が増えている。中国は、インドに次ぐ世界第2位の砂糖消費国であると同時に、世界最大の輸入国でもある()。国民の所得向上とともに生活様式や食の欧米化が進むと、将来はさらに砂糖消費量が増えることが予想される。

表 国別の砂糖需給

 2015年に中国政府が、広西自治区と雲南省のサトウキビ生産地域に生産基地を建設する計画に着手し、省政府、自治政府も「2次創業計画」など支援事業を展開している5)。サトウキビの生産を活性化し増産への方策が進んでいるものの、中国のサトウキビ単収は世界トップテンの生産国と比較して低く推移し、2016/17年期では、1ヘクタール当たりの生産量は69.3トンでサトウキビ生産29カ国中21位となっている(図4)。また、原料1トン当たりの産糖量は78キログラムと低く29カ国中22位である(図5)。

図4 主要国のサトウキビ単収

図5 主要国のサトウキビ1トン当たりの産糖量

 中国には、砂糖原料用のほか、搾汁用のサトウキビも多く残っており、広西自治区の桂林市内では路上でそのまま販売されている様子が見られた。また、観光地などでは「加熱甘蔗汁」と称して熱湯に浸したサトウキビの茎を小型の搾汁機にかけてジュースとして販売している(写真1)。

写真1 「加熱甘蔗汁」が販売されている様子

2.サトウキビ作機械化の現状

 泉裕己(1989)は、1980年代までの中国について、「農村人口が多いこともあって人力・畜力で対応できる状況にあり、合理化・機械化など生産性の向上はこれからの課題」と報告している4)。しかし、その後の20年有余の間に状況は一変した。主産地は生産コストがより安価な内陸部へ移動しながらも、中国の砂糖は国際競争力を失っている。この間の急速な近代化や経済発展が背景にあることは前述の通りである。中国のサトウキビ生産のプロセスは、図6に示したように他の生産国とほとんど変わりはなく、春植え、夏植えの新植と株出しの3作型がある。区穎剛(Yinggang Ou)ら(2013)によると、中国のサトウキビ生産における機械化のレベルは全体の約30%程度であり、他の主要作物より20%も低い6)

 以下、サトウキビ増産による安定的な砂糖の需給バランスを維持するための打開策として大きく期待されている中国の機械化の推進状況について概説する。

図6 中国のサトウキビ生産プロセス(機械化の視点から)

(1)収穫作業
 機械化推進の中心は、例に漏れず最も重労働である収穫作業であり、1960年代から研究・開発が進められ長い歴史を有している。収穫機は、全茎式と細断式が小型から大型まで種々開発されている。ただ、国内における作業機の製造・販売については、経済的に成功している事例は少ない。今回の訪問調査の目的の一つに「採苗機への活用が可能な全茎式収穫機のモデル機の探索」があったが、残念ながら適当なモデル機を見つけるには至らなかった(注1)

 世界の収穫機開発の流れは、収穫後のハンドリングの課題を解決するため全茎式から細断式へと移行していったが、中国では降雨時の作業への対応を理由に2014年ころまで全茎式収穫機が開発されている(機種:4GL-1-Z92AやHN132GZLなど)。国内で開発された細断式収穫機の多くは、外国製の類似機種をモデルにしており、日本の文明農機(鹿児島県日置市)のHC-50をモデルにした小型収穫機4GZ-56(写真2)、4GQV-1、4GQ-130のほか、AUSTOFT社(現在はCASE社)の中型機AUSTOFT4000を模した4GZQ-180、大型機 TOFT7000をモデルにした4GQ-350(写真3)などが次々に開発されてきた。

写真2 文明農機のHC-50をモデルにした小型収穫機4GZ-56

写真3 大型機TOFT7000をモデルにした4GQ-350

 しかし、これらの国産機種は完成度が低く、現状では生産現場で活用されている収穫機の主力機は、ブラジル(CASE社)、米国(John Deere社)から導入した CASE4000や、CH330などの中型機であり、比較的平たんな大規模農場で稼働している。ただ、中国のサトウキビ栽培は、農家1戸当たりの平均栽培面積が33アール程度で、傾斜地や狭小な圃場が大部分を占めている(小規模分散型栽培)ことから、これらの中型機を活用できるエリアは全体の10%程度であり、現状では小型機のニーズが高いと思われる。今回、稼働状況を確認することはできなかったが、日本の松元機工(鹿児島県南九州市)が製造する小型収穫機MCH-15(60PS級)が導入利用されている事例があり、広西農業機械研究院での意見交換の中で、もう少し大きなMCH-30(100PS級)クラスの機種をライセンス契約による中国での製造・販売も含めて日本から導入したいとの要望があり、日本製の小型機への期待の高さが表明された(注2)

(注1)日本の文明農機が分草装置や搬送装置の開発に関わった4GZ-9という歩行型の全茎式収穫機が存在するが現在は製造・販売されていない(写真4)。

写真4 歩行型の全茎式収穫機

(注2)収穫機の小型、中型、大型の分類・呼称については、中国ではおおむね歩行型(耕うん機タイプ)を小型と呼び、日本の小型級を中型、日本の中型以上の機種を大型と呼んでいるようだ。
(2)植え付け作業
 収穫作業に次いで機械化の関心が高まっている作業は植え付け作業である。人力での植え付けは、あらかじめ機械で畦立て・作溝を行い、植え溝に全茎のまま種苗を並べた後、頂芽優勢(注3)を打破するため一定の長さに(なた)で切断して覆土するという手順で行われている。欠株の発生を防ぎ、茎数を確保する目的で苗を2列に並べて植えたり、苗を植え溝と直角方向に置いたり種々の工夫がされている。

 植え付け機の開発も豪州など機械化の進んだ国からの導入とともに、それをモデルに国内開発を行うというスタイルで進められている。全茎式プランタは、2〜4人の補助作業者が搭乗し、苗台に搭載された全茎苗を投入口に入れ、機械的に切断しながら植え付けを行う。大部分がトラクタけん引式で日本のロータリ装着タイプ(注4)に類するようなものは見られなかった。ビレットプランタ(植え付け機)は、あらかじめ細断した茎節苗を補助作業者が植え溝に投入していく小型タイプのほか、細断式収穫機で採苗した苗を搭載し、コンベアで自動的に植え溝に投入する大型タイプが開発されている。近年は2条植え方式(注5)写真5)の開発も進められていたり、覆土装置に小型のロータリを用いたりする中国独自の技術(写真6)など、大小さまざまな機種があるが、まだ研究・開発、実証試験の段階のものが多く、実用化に至った事例は少ないと思われる。人力植え付け、全茎式プランタ、ビレットプランタともほとんど調苗作業を行わないので、日本の植え付け方式と比べると苗の投入量はかなり多いのではないかと思われる。

写真5 2条植え方式のビレットプランタ

写真6 中国独自の技術が導入されたビレットプランタ

 一方、華南農業大学では無育苗の「1芽苗植え付け機(Single Node Planter)」(注6)の研究を進めており、植え付け作業の完全自動化を見据えた先駆的な研究として注目される。広西省農業科学院甘蔗研究所では、セルトレイで育苗した組織培養苗を育種試験や栽培試験に使用している事例(写真7)があったが、セル苗移植機の開発が行われている様子は見受けられなかった。

写真7 セルトレイで育苗した組織培養苗

(注3)サトウキビは全茎のまま植え付けると、頂部(梢頭部)に近い芽から順に発芽していく性質がある。細断することによって発芽をそろえる効果がある。
(注4)日本の南西諸島には重粘土壌が広く分布しており、特に春植えの時期は土壌が湿潤な状態で植え付け作業を行うため、けん引タイプの植え付け機では覆土がうまくできなかったりして不都合が多い。これを解決するため、植え付け部の前にロータリを装着し、土壌を耕うんしながら植え付けを行うタイプの植え付け機が多く普及している。
(注5)収穫時の茎数を確保する目的で、畦幅を150センチメートル以上に拡大し、そこに30センチメートル程度の間隔で2列植え付けを行う方式。
(注6)サトウキビの節の部分を切断した1芽苗を、育苗しないでダイレクトに植え付けを行う方式で、2節苗や育苗した苗と比べて対象物が小さいため完全自動化技術を開発する上で有利になる。植え付け後の発芽率の確保が技術開発のポイントとなる。
(3)その他の肥培管理作業など
 植え付け準備の耕うん整地作業には、日本では一般的となっているボトムプラウやトラクタのPTO軸動力が必要なロータリよりも、ディスクプラウやディスクハローが使われている事例が多いように見受けられた。かつての人力や畜力による作業から機械作業に変わり、現在では80%以上が機械化されている。中国のサトウキビ作のプロセスの中で最も機械化が進んでいる作業である。

 中耕・培土の管理作業は、畦をまたぐ作業機(中耕ロータリ)で行うと効率的だが、サトウキビの生育状況によっては作業機のクリアランスが不十分な場合もあり制約が多い。中国では低出力の歩行型トラクタを使用して行う場合が多く、労働強度の軽減にはあまり繋がっていない6)

 追肥に使用する施肥機やブームスプレーヤなどの防除機も一部で使用されているが、本格的な普及には至っていないようである。

 日本では、収穫後の株出し管理作業を徹底し、株出し後の収量を確保することがサトウキビ作の経営上重要とされ、種々の株出し管理作業機が開発され普及している。一方中国では、株出し管理に関する作業機はほとんど見受けられず、今回訪問した大学や研究機関での交流セミナーの中でも話題に上がらなかった。機械収穫がまだ数%程度であることなどが要因だと考えられるが、今後は収穫機の普及に伴って大きな課題になっていくことが予想される。

 日本では、種々の管理作業にPTO軸動力を必要とする回転系の作業機が多いが、中国では動力を必要としないけん引タイプの作業機(写真8)が多いようである。南西諸島のような重粘土壌地域では、回転系作業機が有利とされているが、今後の中国における管理作業機の動向を注視する必要があると感じた。

写真8 動力を必要としないけん引タイプの作業機

3.機械化技術の研究開発や普及への取り組み

(1)大学、公的機関での研究開発
 サトウキビ用機械の研究開発を扱っている大学および公的機関として、広東省広州市にある華南農業大学、広東省生物工程研究所・甘蔗糖業研究所、広西自治区南寧市にある広西省農業科学院甘蔗研究所、広西農業機械研究所を訪問した。国レベルでは華南農業大学を中心とした国家重点プロジェクトによって各機関が協力して研究開発に当たり、一方で、それぞれの省レベルで独自の活動を行っている。わが国と異なり、大学や公的機関(現在では民営化)でも本格的な経済活動が可能で、民間企業との交流も含めてさまざまな形態のビジネスを展開している。これらでの聞き取り調査、見学および情報交換(交流セミナー)で得た資料に基づいて、華南農業大学を中心に研究開発の概況を述べる。

 華南農業大学は、1909年に広東省と農業部(日本の農林水産省)が広東全省農事試験場をベースに創立したものである。当初はその名の通り農学中心の大学であったが、現在では「211工程」全国重点大学として、26学部を中心とする総合大学に発展している。訪問したのは工程学院農業工程系にある「サトウキビ機械化および加工」分野で、劉慶庭(Qingting Liu)教授率いる研究室である(写真9)。ここはサトウキビの機械化に関する国家重点プロジェクトを統括しており、大型予算が投入され、公的機関などと連携して、基礎から実用化までの研究開発が行われている。大学の生い立ちからも行政とのつながりが強く、糖業振興に関する政策課題が取り上げられている。前任の区頴剛(Yinggang Ou)名誉教授は、本稿でも文献を引用しているが、機械化分野の第一人者として有名で、劉教授はその後任として中国全体の機械研究をけん引している。主な研究範囲は、植え付け、栽培管理、収穫および運搬の機械化である。これらの中でも収穫機械と植え付け機械が最も重要な課題となっている。

 


  学科の建物の一階は実験室で、雑然と各種の機械類とその残骸が残っていて歴史の重みを感じる。その中央には20メートルほどの土槽実験装置のレールが敷設され、ハーベスタのベースカッターからチョッパーまでを模した実験装置が設置されていた(写真10)。この装置がレール上を移動しながら土槽に固定された茎を刈り取る構造である。各部の諸元を自在に変えて、刈取メカニズムを解明して、最適な設計値を模索できるので、実機ではできない基礎研究が可能となる。




 ここでは、中国における全茎式収穫機および細断式収穫機の研究をそれぞれ3段階に分けて説明し、続いて華南農業大学独自の研究について述べる。

ア.全茎式収穫機の研究開発
(ア)第1(早期)ステージ(1959〜2009年):文明農機の歩行型刈取機と脱葉機を模した収穫機械を製作し、さらに、トラクタ装着型を開発したが、倒伏茎の収穫はできなかった。
(イ)第2(中間)ステージ(2000〜2013年):刈倒し、脱葉、積み込みと搬出(もしくは排出)を1台の機械で行う全茎式コンバイン収穫機で、倒伏茎にも適応できたが、性能が低かった。
(ウ)第3(現)ステージ(2014年〜現在):少数のメーカーによって全茎式コンバイン収穫機の改良を行っている。

イ.細断式収穫機の研究開発
(ア)第1(早期)ステージ(1982〜1999年):広西農業機械研究院がパイオニアとして、AUSTOFT4000をモデルとする細断式収穫機4GZ-90を開発した。
(イ)第2(中間)ステージ(2000〜2007年):広西農業機械研究院でCASE7000とCASE4000をモデルとして、4GZ250と4GZ-180を開発した。
(ウ)第3(現)ステージ(2008年〜):いくつかの機関でCASE7000とCASE4000をモデルとする大型収穫機、HC50-NN(文明)をモデルに小型収穫機、CLASS 3300をモデルとする中型収穫機を開発している。広西農業機械研究院は収穫機などの本格的な製造・販売を行うために、本格的な製造ラインを建設中とのことであった。

ウ.華南農業大学における独自イノベーション研究
(ア)チョッパー位置の検討:通常は引き込み・送りローラトレインの末端に装着され、細断された茎は風選部に放出される。これに対して、ベースカッターの直後、および、ローラトレインの中央部にチョッパーを設置した3通りについて実験を行った。
(イ)トラッシュ選別装置:ローラトレイン、第1ファン、第2ファンおよび両ファン間の送りコンベアにトラッシュ選別を改善する仕組みを設けた。
(ウ)小型ハーベスタの開発:これらの結果を踏まえて、2機種の小型ハーベスタを開発し、性能試験を行っている。
(エ)1芽苗プランタ開発:2〜3節に切断した苗を植え付けるビレットプランタをベースに、5センチメートル程度の1芽苗用に改造したプランタの開発を行っている。ビレットプランタでは苗を均一に繰り出すのが難しいが、球形に近い苗にして均一化を図るものである。コンピュータシミュレーションおよび高速度カメラを用いて苗ホッパ内の苗の基本的な動きの解析を行っている。2017年1月時点ではまだ開発の最中とのことであった。

(2)民間での開発
 今回の調査では、代表的な民間企業である広東科利亜現代農業装備有限公司(広東省広州市)および広西柳工農業機械装備有限公司(広西自治区柳州市)、半官半民の広西農業機械研究院を訪問する機会を得た。わが国の感覚では巨大とも言える新しい工場が設立され、今後の機械化の展開に対する備えが進められている印象を受けた。特に、以前とは異なり、製造されている機械が外国製と見劣りしない外観になっており、製造能力の向上がうかがえた。

ア.広東科利亜現代農業装備有限公司
 1998年にクボタ(大阪市)との合弁企業として創立され、2009年12月に国家級企業として発展している。水田稲作用機械、サトウキビ用作業機械、ピーナツハーベスタなどを製造販売している。工場敷地13.5ヘクタール、従業員500人程度、資本金5億9000万元(約100億円)である。研究開発には日本人専門家を含む62人が従事し、華南農業大学、東北農業大学、中国科学研究所、他8大学などと連携している。工場の建屋は大規模で長大な製造ラインが並んでおり、工場の近代化に驚かされた(写真11)。オフシーズンのせいか、製造ライン上で組み立て中の機械はまばらで、作業員はわずかしかいなかった。サトウキビ収穫機は、日本の機械(文明型)と類似の背負い式(作業能率1ヘクタール当たり10トン、収納袋1トン)がメインで、コンベア式収穫機はタイで実験中とのことであった。この会社の彭社長は育種の専門家で、機械化向け品種の育種(海南島で実施)、育苗および苗販売も行っている。苗製造用に種苗カッターの製造も行っている。これは1本の回転軸に16枚の丸鋸刃を60ミリメートル間隔で配置したもので、1本のサトウキビを丸ごと切断し、苗質の良好な上部とそうでない下部を混合して販売している。春植えは苗用のサトウキビを収穫した後、30日間冷蔵し、切断・混合している。夏植え(秋植え)に関しては、冷蔵期間を90日間に設定している。
 


 

イ.広西柳工農業機械装備有限公司
 この会社は、広西自治区の南寧市と桂林市の中間にある柳州市に設立され、上記の科利亜に勝るとも劣らない規模の新設大型工場である。2016年2月に、広西柳工集団有限公司と柳州市汎森機械製造有限公司の合弁で設立されたばかりである。それ以前は柳工集団で農業機械の製造を行っていた。われわれの到着時間は終業時に近かったが、唐社長はじめ、若い幹部陣に工場内を案内・説明してもらった。

 ここは畦幅調整可能な作溝機、2条植3トン積みビレットプランタ、防除機、株出管理機、ハーベスタなどサトウキビ用機械全般を製造している。ハーベスタは、350PSの大型機械(CASEモデル)および180PSの中型機械を製造し、2016年3月までに25台を販売している(写真12)。広西農業機械研究院とは独自に機械開発を行っており、国内の企業や研究機関およびキューバなど海外企業との共同研究を行っており、多くの成果を上げている。中型ハーベスタ16台をキューバに輸出する計画であるが、合弁による工場移転後は、機械化要求の高まりを受けて国内販売に重点が移っている。時間が差し迫っていたため、詳細な話は聞けなかったが、研究開発、製造、品質管理、マーケティング、国際競争力の向上に高度な技術を駆使し、機械化が求められている今後の状況を見据えた企業活動を行っているとの印象を受けた。
 


ウ.広西農業機械研究院
 ここは純粋な民間企業ではないが、試験研究で開発した機械の販売も行っている。ハーベスタの製造も行っており、見学した国立金光農場に2台導入されていた。本来は研究機関だけに、華南農業大学などとの共同研究も行っている。1956年設立と歴史は古く、農林業の機械化を先導してきた。2000年には、わが国の独立法人化に相当する民営化が行われ、それに伴って業務が拡大し、研究に加えて設計・製造・販売および不動産業務を行っている。現在、本格的な製造ラインの設置を計画中とのことであった(写真13)。




(3)行政の取り組みや普及体制
 先述の通り、中国は世界第3位のサトウキビ生産国であるにもかかわらず、有数の砂糖輸入国となっている。中国政府はこの状況を受け、できる限り自国生産で砂糖の需要を賄うことを政策目標の一つに掲げてサトウキビの増産に力を入れており、特に基幹作業の機械化をその鍵と位置付けており、広東省農業機械化技術普及センターの展示室の壁には機械化の重要性を説いた毛沢東の言葉が掲げてあった(写真14)。現在、政府農業部の指導により省の各機関が、試験研究やフォーラム・現地検討会などさまざまな取り組みを行い、機械化の推進に当たっている。

 


 

 広東省農業機械化技術普及センターでは、省の検定を通った農業機械について本体およびパネルなどを展示し、生産者への紹介・普及に努めている(写真15)。収穫機や大型トラクタなどは農家にとって高価であり、個人よりグループ(農業機械合作社(注7)など)による購入・利用を主に想定しているとのことであった。
 また、国内メーカーの機械を購入する場合、政府より3〜4割の助成があるとのことであった(注8)

 


(注7)農民専業合作社法(2007年7月より実施)に基づく、機械による作業受託コントラクター的協同組合7))。
(注8)広西柳工農業機械での聞き取り。

4.サトウキビ作機械化の課題

 1980年代より、中国ではそれまでの計画経済から開放経済への移行が本格化し、沿海部を中心に急激な経済成長が起きた。今では、世界第2位の経済大国になり、成長速度は減速しているものの、その流れは続いている。この経済成長を支えたのは、農村から出てきた低賃金で働く農民工である。年々、大量の農民が流出したため、農村部は高齢者と子どもだけの社会となり、さまざまなひずみが生じている。その一つが労働力不足である。広大な国土面積ながら利用可能な土地は狭く、膨大な農業人口を抱えた農村社会が大きく様変わりしつつある。経済成長は賃金の上昇をもたらし、より低賃金の内陸部へ工場の移転が進んでいる。これは沿海部と内陸部の経済格差を解消するためにとられた「西部大開発」政策とも符合している。

 このような状況の中で、サトウキビ産地も沿海部から内陸の広西自治区や雲南省へと移っている。一大工業地帯に成長した珠江デルタを擁する広東省は今なお産地であるが、今後の流れによっては減少が加速する可能性が高い。大規模な人口移動に加えて少子高齢化が急速に進みつつあり、農業生産力の低下に拍車がかかっている。このため、今や機械化は喫緊の課題として浮上している。この傾向は東南アジア諸国などでも同じであるが、規模の巨大さからそのインパクトは計り知れない。中国政府は経済成長を維持するために、大量の農民を都市部に移住させる政策を進めており、農業とりわけ土地利用型農業に深刻な事態をもたらすことが懸念される。機械化が、この問題を労働力と経済性の両面からカバーできるか、スピードが間に合うかが最大の課題である。

 この観点から、サトウキビ作の機械化を見ると、多くの課題が浮かび上がってくる。前述のように、中国南部から南西部にかけての産地は丘陵地帯で、大型機械化に不向きな傾斜畑が多い。このため、大型収穫機よりは中・小型収穫機、細断式収穫機よりは全茎式収穫機が要望されているが、これらの機械は開発の途上である。また、国産の小型収穫機は、形は出来上がっているが、性能は要求水準には達していないものと推察される。わが国でも、小型収穫機は高性能化しているが、大型収穫機と比較すると作業能率に大きな差が見られる。経済性や作業能率が何よりも優先される中国社会にあって、小型収穫機の苦戦は想像に難くない。サトウキビの価格と労務者の賃金、機械の価格と経費のバランスをいかにとっていくかがシャープな課題である。

 しかしながら、サトウキビは重要な戦略作物であるので、単なる経済性任せではなく、政策的なテコ入れがあるものと思われる。従って、小型収穫機などの性能向上が当面の課題と言える。今回、民間企業2社と収穫機の製造販売を行う1研究所を見学したが、驚かされるのは工場規模の巨大さである。何もない所に、いきなり日本の大手機械メーカーの工場を上回る規模の工場が建てられている。町工場から少しずつ規模拡大していくわが国の工場を見慣れた者にとっては衝撃であった。このパワーが研究開発・普及活動に生かされることを期待したい。大学、公的研究機関さらにはこれらの民間企業が、機械化の進展にどのように機能していくのか、目を離せない。さらに、わが国との交流の展開にも注目したい。

おわりに

 今回の調査の終盤、南寧市から柳州市へ移動する際の車窓から見た高速道路沿いに広がるサトウキビ畑は、カルスト地形の谷間を縫ったような丘陵地が多く、1筆の栽培面積は小さく散在していた(写真16)。土壌は赤色土で南西諸島の石灰岩土壌(島尻マージ)に似ているように見えた。中国は巨大なサトウキビ生産国であるが、生産現場の個々の栽培状況は沖縄の現状に近いものも多いと感じた。中国における砂糖の需給バランスを安定的に維持するためには、国内での増産が喫緊の課題であり、かんがいなどのインフラ整備や優良品種の育成など、さまざまな立場から種々の対策が取り組まれているが、機械化の推進は最も期待されている施策の一つであると思われる。
 


 

 訪問前に機械化に関する多くの断片的な情報を得ていたが、その信ぴょう性や関連性など不明な点も多かった。特に日本企業が開発に関わった収穫機のモデルについては、訪問してみて初めて理解できた部分が多い。「百聞は一見にしかず」を身を持って実感した次第である。

 今回訪問した公設の大学や研究機関では、外国の研究者との交流を非常に重視しており、われわれの訪問への対応もそれぞれが持つ国際交流事業の一環として位置付け、いずれの訪問先でも手厚い歓迎を受けた。特に、航空機の遅れによる深夜(24時前後)の出迎えや数百キロメートルにも及ぶ視察先への案内など、丁寧な対応には頭が下がる思いがした。おかげで4カ所で行った交流セミナーでも、中味の濃い議論ができたと確信している。今回の訪問によってできた中国の関係機関、関係者とのコネクションを大切にし、今後も継続した情報交換を行うことが重要であると考えている。

謝辞

 今回の調査では、計画段階から訪問先との調整や移動ルートなど調査のコーディネートに華南農業大学名誉教授の区穎剛(Yinggang Ou)先生にご尽力いただいた。先生は中国におけるサトウキビ作機械化研究の第一人者である。また、広西自治区での調査では、広西省農業科学院甘蔗研究所の何為中(Wei-Zhong He)主任研究員に3日間つきっきりで対応いただいた。両先生に深く感謝の意を表する。 なお、今回の調査は、沖縄振興特別推進交付金で実施している「さとうきび機械化一貫体系モデル事業」の一環として行ったものである。


引用文献
1)鹿児島県農政部農産園芸課(2016)「平成27年産さとうきび及び甘しゃ糖の生産実績」 http://www.pref.kagoshima.jp/ag06/sangyo-rodo/nogyo/nosanbutu/satokibi/documents/41531_20161003083858-1.pdf

2)沖縄県農林水産部糖業農産課(2016)「平成27/28年期さとうきび収穫機械稼働実績」 http://www.pref.okinawa.jp/site/norin/togyo/kibi/mobile/h27-28seisanjisseki/documents/syuukakukikai.pdf
3)赤地 徹(2015)「日本におけるサトウキビ収穫機とその利用技術 −開発・導入の経緯と今後の展望−」『沖縄県農業研究センター研究報告』(9)pp.1-14.
4)泉 裕己(1989)「中国糖業視察旅行記−かいま見た中国−」『南方資源利用技術研究会誌』5(1)pp.43-55.
5)SankeiBizニュース(2016)「国産砂糖 生産コスト増、価格競争で衰退 サトウキビ栽培面積が大幅減」http://www.sankeibiz.jp/macro/news/160204/mcb1602040500005-n1.htm
6)Ou Yinggang, Malcolm Wegener, Yang Dantong, Liu Qingting, Zheng Dingke, Wang Meimei1, Liu Haochun(2013)「Mechanization technology -The key to sugarcane production in China-」『International Journal of Agricultural and Biological Engineering(IJABE)』6(1)pp.1-27.
7)大島一二(2010)「中国における農民専業合作社の現状と課題 —中国各地での調査事例をもとに−」『中国農業土地問題研究会』
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