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ポーランドの砂糖産業の動向

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最終更新日:2018年1月10日

ポーランドの砂糖産業の動向
〜EUの砂糖生産割当廃止の影響を中心に〜

2018年1月

調査情報部 佐々木 由花、丸吉 裕子

【要約】

 EUで第3位のてん菜糖生産国であるポーランドでは、2017年9月末の生産割当廃止を輸出拡大の好機と捉え、栽培面積の増加に加え、製糖工場の集約化や長期操業など生産の効率化に着手し、増産体制を整備してきた。生産割当廃止により国際価格がてん菜価格に与える影響が強まると見込まれる中、てん菜の生産性向上と価格競争力を持った同国産砂糖および砂糖を含む製品のさらなる輸出拡大が期待されている。

はじめに

 ポーランドでは、広大な土地とてん菜の生育に適した気候という好条件の下、てん菜生産が盛んに行われ、砂糖産業は、伝統的な基幹産業として位置付けられてきた。さらに近年、てん菜生産者および製糖企業は、2017年10月の生産割当廃止後の増産を目指し、てん菜生産の規模拡大、製糖工場の集約化を推し進め、EU第3位のてん菜糖生産国となっている(表1)。

 また近年、菓子類の輸出が増加傾向にあり、菓子業界は生産割当廃止に伴う砂糖増産によって、価格競争力の高い商品を輸出できると、期待を寄せている。

 本稿ではこのような状況下での同国の砂糖需給、製糖企業の動向などを、現地調査などに基づき紹介する。

 断りが無い限り、本稿中の年度はポーランドの砂糖年度(10月〜翌9月)であり、砂糖の数量は粗糖換算である。為替レートは1ズロチ=33円(2017年11月末日TTS相場:32.83円)、1ユーロ=134円(同134.31円)を使用した。

表1 EU主要国のてん菜糖生産動向(2015/16年度)

1.てん菜生産の概要

(1)主要生産地域および生産概要
 ポーランドは、ヨーロッパ大陸の中央に位置し、北はロシアのカリーニングラード(飛び地)とリトアニア、東はベラルーシとウクライナ、南はチェコとスロバキア、西はドイツと国境を接している。国土面積は日本の約5分の4で、農用地が5割を占める。旧東欧諸国最大の農業国で、EUには2004年に加盟し、EUにおける重要な農業国の一つである。バルト海に面する北部や西部は比較的温暖な海岸性気候だが、南部や東部は亜寒帯気候に属す。

 てん菜は、中西部や西南部、東南部で生産されており、主にてん菜糖生産に仕向けられているが、一部はエタノール生産などにも仕向けられている(図1)。 てん菜は、小麦やトウモロコシ、菜種、ばれいしょなどとの輪作体系に組み込まれており、3月から5月初旬ごろに()(しゅ)、9月から翌1月にかけて収穫される(図2)。

 ポーランド農業食料経済研究所(IAFE)によると、生産者数は、EUの共通農業政策(CAP) における砂糖政策の2006年改革(注)(以下「2006年改革」という)に伴う生産割当数量の削減により、てん菜生産の抑制が進んだことから、2005年の7万700戸から2016年には3万4071戸まで減少した(表2)。生産者の多くは、依然として、零細農家であり、集団化による規模拡大はあまり進んでいない。これは、社会主義時代のポーランド特有の状況が影響している。当時、ポーランドは他の東側諸国と異なり、集団農場化が進まなかった。それに加え、現在も社会全般に集団化への忌避感があり、農業部門は現在も個人経営が中心となっている。

 こうしたことから、1戸当たりの栽培面積は、この10年間に約2ヘクタール増加したものの、依然としてEU域内平均(約10ヘクタール)よりも小さい。また、製糖企業は、ドイツ資本の企業3社と国内資本の企業1社(Krajowa Spólka Cukrowa〈KSC〉社)があるが、契約生産者1戸当たりの栽培面積は、前者が約6.5ヘクタールであるのに対し、後者は5.0ヘクタールとなっている。

(注)2005年の世界貿易機関(WTO)の裁定により、砂糖の年間輸出量を140万トン程度に制限されたことなどを受け、EU域内の砂糖生産量を2009/10年度までに600万トン削減するとした。この改革以降、生産割当数量を超過した砂糖については、一定の要件を満たさないと余剰課徴金が課せられることとなったほか、生産割当を放棄する製糖企業に対し再構築助成金が支払われたことから、砂糖生産の集約化が進んだ。詳細は、丸吉裕子、根岸淑恵「英国の砂糖産業の動向〜EUの砂糖生産割当廃止の影響を中心に〜」『砂糖類・でん粉情報』(2017年3月号)を参照されたい。

図1 ポーランドにおけるてん菜生産地域分布図

図2 栽培暦

表2 てん菜生産者数と1戸当たりの栽培面積の推移

(2)生産動向
 てん菜収穫面積は、2006年改革に伴う生産割当数量の削減により、2006/07年度から2008/09年度にかけて減少して以降、横ばいで推移してきた。しかし、2016/17年度は前年度比14%増の20万5600ヘクタールとなった(図3)。収穫面積が増加した主な要因は、生産割当廃止に備えて、製糖企業が生産者とのてん菜の栽培契約を増やしたことにある。また、一部地域において菜種の凍害が起こったことから、より寒さに強いてん菜へ転作されたことも要因として挙げられる。

 生産量は、2005/06年度から2007/08年度は、収穫面積が減少したものの、砂糖の生産割当数量の増加や歩留まりが高かったことなどから、1100 万〜1200万トン台で推移した。2008/09年度は、生産割当数量の減少による収穫面積の減少と単収の低下により、800万トン台へ大幅に減少したものの、2009/10年度から2014/15年度にかけては、単収が向上したことにより1100万トン台前後で推移した。2015/16年度は、生産割当数量が実質的に減少(注)し、収穫面積が減少したことに加え、単収が低下したことから大幅に減少したが、2016/17年度以降は、農地の集約化による生産性の向上や単収の向上などから1300万トン台に増加している。

(注)2006年改革以降、生産割当を超過したてん菜糖は、輸出や、エタノール生産など工業用に仕向けられた他、次年度への持ち越しなどの対応がとられることにより余剰課徴金の対象外となっていた。2015/16年度の生産割当数量は約141万トンであったが、過年度からの持ち越し分が約41万トンあった。

図3 てん菜の生産実績

2.砂糖の生産動向

(1)生産動向
 てん菜糖の生産量は、てん菜の生産量により変動するが、2014/15年度は198万トンと、生産割当の140万トンを58万トン上回った。2015/16年度は、てん菜生産量の大幅な減少に伴い、142万トンに減少した。生産割当の最終年となった2016/17年度は196万トン(前年度比37.6%増)まで増加すると見込まれている(図4)。これは、収穫面積の増加に加え、生育期および収穫期に天候に恵まれたことにより、てん菜の生産量が増加し、かつ、製糖歩留まりも向上したためである。同国の製糖工場の平均操業期間は2015/16年度に81日であったが、2016/17年度は112日に長期化した。

図4 てん菜糖の生産量の推移

(2)製糖企業の動向
 ポーランドでは、現在、四つの製糖企業がてん菜糖を生産しており、18工場が稼働している。1工場・1日当たりの平均生産能力は、約6000トンである。

 社会主義時代には全ての工場が国営であったが、90年代後半から民営化が進められ、当時、76あった工場は2000年代初頭には43まで減少し、2006年改革を経て、2009/10年度に現在の数に集約された(図5)。前述の通り、製糖企業4社のうち、国内資本の企業は、KSC社のみで、他はドイツ資本のGrupa Pfeifer & Langen社、Südzucker社、Nordzocker社である(写真1および2)。この背景には、前政権の外資参入緩和政策がある。

図5 製糖企業別工場の分布

写真1 KSC社 Dobrzelin工場

写真2 KSC社 Dobrzelin工場の砂糖サイロ

 長い年月をかけて工場の集約化が進められてきたポーランドではあるが、EUの他の主要生産国と比べると小規模な工場がいまだ多く稼働している。EU第2位の生産国であるドイツと比べると、製糖工場数は同程度であるが、1工場当たりの生産量が6割程度であるため、従業員1人当たりの生産量はドイツの7割程度である(表3)。砂糖の製造コストについては、ポーランドのてん菜取引価格(農家取引価格)や人件費がドイツより安いため、低水準となっている。

表3 ポーランドとドイツの製糖産業の比較(2016年)

3.砂糖の需給動向

(1)国内消費
 砂糖需給を見ると、消費量は2012年以降増加傾向にあり2017年は172万トンと予測されている(図6)。消費量全体に占める割合は、直接消費用(家庭用)が減少傾向にあり、2006年の45.1%から2017年には32.0%へ減少している一方、業務用は増加しており、2017年は68.0%を占めた。業務用の内訳は、清涼飲料水向けが約5割、 焼き菓子向けが10〜13%(製品中の砂糖含有率は約25%)、チョコレート向けが13%(同60%)を占めている。

 ポーランド中央統計局(GUS)によると、1人当たり砂糖消費量は、近年横ばいで推移してきたが、2015年は40.5キログラム(前年比8.6%減)で、このうち、直接消費は同13.08キログラム(同8.4%減)であった。直接消費を1人・1カ月当たりの世帯分類別に見ると、消費量の最も多いのは農業者世帯で、1.69キログラム(同0.6%減)であり、減少幅も小さかった。一方、自営業者世帯と勤労者世帯は、それぞれ0.71キログラム(同11.2%減)と0.84 キログラム(同10.6%減)であり、需要が最も大きく減少した。老齢・障害年金受給者世帯では、同6.7%減の1.39キログラムであった。世帯分類別の消費量の違いには、仕事の性格や自由時間の多寡などが影響している。一般的に、農家や年金受給者は、勤労者世帯などに比べて、時間の融通が利きやすい。そのため、家庭で野菜や果物を加工したりケーキを焼いたりすることが多いことから、砂糖の消費量が多いとみられる。

図6 砂糖消費量の推移

(2)輸出入
 砂糖の輸出量は、近年40万〜50万トン台で推移している(図7)。2016年は、46万4900トン(前年比7.9%増)で、平均輸出価格は1トン当たり480ユーロ(6万4320円)であった。輸出が伸長した背景には、国際砂糖価格の上昇や砂糖生産量の増加がある。EU域外の主な輸出先国はイスラエルやレバノンなどの中近東およびロシア、ジョージア、カザフスタンなどの独立国家共同体(CIS)諸国であり、域外輸出量は17万9600トン(同16.2%増)であった。EU域内の主な輸出先国はドイツやリトアニア、ラトビアなどであり、域内輸出量は28万5300トン(同2.8%増)となった。

 輸入量は、生産量の増減によって変動しているが、前年に砂糖生産量が増加した2015年を除き、近年は20万〜25万トン程度の水準である。2016年は22万9700トン(前年比2倍)、平均輸入価格は1トン当たり465ユーロ(6万2310円)であった。輸入増加は、前年の砂糖生産量が減少したことによる。EU域外からはジンバブエやモザンビーク、スーダンといったACP諸国から粗糖を輸入しており、2016年の輸入量は、14万3700トン(同2.5倍)である。一方、EU域内からは主に白糖を輸入しており、輸入先は、ドイツやスウェーデン、リトアニアなどであり、輸入量は8万6000トン(同41.9%増)となった。

図7 砂糖の輸出入量の推移

(3)価格動向
 白糖の小売価格は、国際砂糖価格の影響を受ける。最近では、2015年半ば以降、世界的な在庫の減少により国際砂糖価格の上昇が続き、2016年は1キログラム当たり2.87ズロチ(95円)で、前年に比べ28.7%上昇した。しかし、2016年第4四半期以降、価格の上昇は鈍化傾向にあり、加えて、2017/18年度は、生産割当廃止に伴う砂糖生産量の増加と国内供給量の増加が予想されているため、価格上昇はさらに鈍化すると見込まれる。

 なお、2016年の菓子など砂糖を含む製品の小売価格上昇率は平均0.8%、2016年12月時点では前年同月比で1.0%の上昇と、一定の上昇が見られている。

4.菓子輸出入の動向

(1)輸出入
 菓子類の輸出入量は、長年にわたって増加傾向で推移しており、近年輸出量が顕著に増加している(図8)。IAFEによると、輸出入が行われる菓子類は、ココアを含む製品(チョコレートなど)(HSコード:1806)、ココアを含まない製品(HSコード:1704)、ジンジャーブレッド類(生姜を使った洋菓子)とスイートビスケット(HSコード:1905.20、1905.31)の3種類に分類される。菓子類の輸出は、その原料(砂糖、小麦粉、でん粉、粉乳およびホエイパウダーなど)の需要も生み出すため、食品業界全体への波及効果がある。

 2016年の菓子類輸出量のうち、ココアを含む製品が32万600トン(シェア63%)と最も多く、ジンジャーブレッド類とスイートビスケットが10万9300トン(同21%)、ココアを含まない製品が8万2700トン(同16%)と続く。輸出先は主にEU域内で、ココアを含む製品では70%、ココアを含まない製品では63%、ジンジャーブレッド類とスイートビスケットでは40%がドイツや英国、チェコなど域内向けに輸出されている(図9)。EU域外向けでは、米国やカナダ、イスラエルなど近東への輸出が多い。

図8 菓子類の輸出入量の推移

図9 ココアを含む製品の国別輸出割合(2016年)

 一方、輸入も輸出ほどではないものの増加傾向で推移している。2016年の輸入量は、ココアを含む製品が16万5200トン(前年比3.3%増)、ココアを含まない製品が5万5800トン(同3.9%増)、ジンジャーブレッド類とスイートビスケットが3万8000トン(同4.4%増)であった。

(2)貿易収支
 2016年の菓子類の貿易収支は11億7730万ユーロ(1577億5820万円)の黒字で、前年よりも6.2%増加した。最も増加率が高かったのはジンジャーブレッド類とスイートビスケット(前年比18.6%増)であり、次いでココアを含まない製品(同10.6%増)であった。

(3)今後の見通し
 2017年の菓子類の貿易は、主要相手先であるEU諸国の状況に左右されるものの、輸出額は前年比5.4%増の21億4800万ユーロ(2878億3200万円)、輸入額も同7.4%増の9億2500万ユーロ(1239億5000万円)と増加が続くと見込まれる。菓子類の貿易収支の黒字は、前年比で約4%増加し、およそ12億2300万ユーロ(1638億8200万円)になると見込まれている。菓子業界は、生産割当廃止に伴い、砂糖の国内生産量が増加し、国内の砂糖価格が国際価格に近づくことで、以前よりも価格競争力の高い商品の生産が可能となり、輸出も増加するとして、生産割当廃止を歓迎している。

コラム1〜砂糖製品の販売状況〜

 首都ワルシャワのスーパーマーケットでは、てん菜糖(1キログラム)は2.99〜3.29ズロチ (99〜109円)、ブラウンシュガー(500グラム)は4.99ズロチ(165円)で販売されていた(調査時点:2017年6月〈コラム1−写真1〉)。この他、特筆すべき点として、クッキーやババロアなどの菓子類の調理に利用できる砂糖を含むプレミックス製品が数多く販売されていたことがある。30種類以上の製品が並び、1袋(100グラム)1ズロチ(33円)前後と低価格帯のものが多く、風味もバニラやサクランボ、オレンジ、リンゴなどバリエーション豊かであることから、需要の高さがうかがえる。また、ホットチョコレートのように、お湯や水を注ぐだけで飲み物が出来る粉末飲料の品揃えも多い(コラム1−写真2)。砂糖の家庭での直接消費は減少傾向にあるものの、砂糖を含むプレミックス製品や菓子類の消費は堅調で、日常的な嗜好品であることが見て取れた。
 


 

5.砂糖政策

 ポーランドの砂糖政策は、EUの砂糖政策(注1)に基づき実施されている。なお、砂糖産業を基幹産業と位置付けている同国では、後述のてん菜の栽培面積に応じた任意カップル支払い(注2)を行っている点が注目される。

(注1)EUの砂糖政策については、丸吉裕子、佐々木由花「生産割当廃止を迎えたEUの砂糖および異性化糖産業の動向」『砂糖類・でん粉情報』(2017年12月号)を参照されたい。
(注2)EUとして全般的に直接支払いのデカップル化(支払基準を現実の生産量から切り離し、過去の一時点における農地面積などとする方法)を進める代替として、経済的、社会的または環境上重要な一部の品目については、各国任意のカップル化(支払基準と現実の生産量がリンクされた方法)された直接支払いが可能とされた。てん菜生産者に対しては、ポーランドを含め、チェコ、スペイン、フィンランド、クロアチア、ハンガリー、ギリシャ、イタリア、ルーマニアおよびスロバキアの10カ国が実施している。


(1)生産割当
 砂糖の生産割当数量を見ると、2006年改革後の2006/07年度は、前年度から9万9463トンが追加で割り当てられたため、177万1389トンに増加した(表4)。2008/09年度以降は140万5608トンと2005/06年度から16%削減されたことを受けて、製糖工場11工場が閉鎖した。なお、2016/17年度の企業別生産割当は、最大の製糖企業であるKSC社が39.1%、次いでドイツ資本のGrupa Pfeifer & Langen社が26.4%、同じくSüdzucker Polska社が25.0%などとなっている(図10)。

表4 砂糖の生産割当数量の推移

図10 製糖企業別生産割当の割合(2016/17年度)

(2)てん菜取引価格
 てん菜取引価格は、生産割当制度下では、欧州委員会がCAPの砂糖政策に基づき設定する最低取引価格(注1)を基準に定められ、2016/17年度は1トン当たり113.59ズロチ(3748円、前年度比2.4%高)、2016年の平均取引価格は同116.57ズロチ(3847円、同2.5%安)であった(図11)。最低取引価格がわずかに上昇したにもかかわらず平均取引価格が下落した要因は、ポーランド通貨ズロチがユーロに対し安値となったことや、割当外の砂糖生産量が増加したことにある。割当外のてん菜は低価格で買い取られたため、平均取引価格の下落につながった。

 2017/18年度以降、最低取引価格が廃止されたため、以前よりもはるかに国際砂糖市場の影響を受けると見込まれる。このため、全国てん菜生産者協会とポーランド製糖事業者協会は2017年4月、約2年に及ぶ交渉の末、2017/18年度以降のてん菜取引契約に関し、全ポーランド製糖業界協定(注2)を締結した。てん菜取引価格は、製糖企業ごとに設定可能となり、最低取引価格を設定して価格を保証する企業もあれば、砂糖の市場価格に応じて取引価格を変動させる企業、最低取引価格の設定を選択型とする企業もある。全国てん菜生産者協会によると、最低取引価格は、おおむね1トン当たり22.60〜26.29ユーロ(3028〜3523円)と想定されている。平均取引価格は、2016年と同水準の同115〜118ズロチ(3795〜3894円)になると見込まれている。

(注1)基準品質(欧州委員会規則に基づき「健全で公正な取引向けの品質」と規定。基準糖度は16度)のてん菜の生産割当内での最低取引価格(minimum beet price)は、2006年改革以降、段階的に引き下げられ、2009/10年度以降は1トン当たり26.29ユーロ(3523円)に設定された。ポーランドでは毎年度、為替レートを勘案してズロチで設定された。
(注2)全ポーランド製糖業界協定では、製糖企業に対する生産されたてん菜の全量受け入れの義務付け▽てん菜の契約数量の決定方法▽てん菜の品質取引に関する基準▽てん菜の種子の選択および購入▽収穫最盛期前後の搬入に係る上乗せ支払い▽生産者へのビートパルプの引き渡し(搬入されたてん菜1トンにつき、圧搾されたパルプ0.5トン)または相当額の支払い−などについて定められている。てん菜の取引価格や品質測定方法などの詳細は、生産者と各製糖企業間の取引契約により取り決められる。


 



 

(3)任意カップル支払い
 ポーランドは、CAP政策の下、加盟国の裁量に委ねられているてん菜生産への任意カップル支払いを採用している。この任意カップル支払いは、生産割当廃止後も継続され、2015〜2019年は年間約8100万〜8300万ユーロ(108億5400万〜111億2200万円)の予算がEU予算から割り当てられている。2016年には8160万ユーロ(109億3440万円)が生産割当用砂糖向けとして契約されたてん菜の栽培面積に応じて支払われた。1ヘクタール当たりの支払い額は480.8ユーロ(1952.25ズロチ〈6万4424円〉)であった。

 しかし、生産割当廃止に伴い、1ヘクタール当たりの支払い額は減少が見込まれている。その理由は、従来の支払い単価は、生産割当用として契約されたてん菜栽培面積に基づき算出されていたが、廃止後は、実栽培面積(約22万ヘクタール)に基づき算出されるためである。任意カップル支払いには、生産者の収入保障という側面もあるため、生産者からは単価の減額を不安視する声もある。

6.生産割当廃止後の見通し

(1)てん菜および砂糖の需給見通し
 IAFEによると、2017/18年度のてん菜栽培面積は、製糖企業が栽培契約を増やしたため、約22万ヘクタール(前年度比6.8%増)となる見込みである。同年度の1ヘクタール当たりの平均収量を63トンと仮定すると、てん菜生産量は、てん菜栽培面積が増加するものの、単収の減少が見込まれることから、前年度並みの1390万トンと予想される。同年度の砂糖生産量は、前年度並みの210万トンとなる見込みである。2017/18年度は国内砂糖価格が横ばいで推移すると予想されており、家庭での砂糖消費量の減少に一時的に歯止めがかかると見込まれることから、消費量は、172万トン程度(同1.8%増)と予想される。砂糖の輸出入量については、輸出量は50万トン(同7.5%増)、輸入量は21万トン(同8.7%減)と見込まれている。

 また、IAFEは、砂糖の国際価格に応じた2020/ 21年度までのてん菜生産と砂糖の需給予測を行っている(表5)。これによると、白糖の国際価格(ロンドン白糖価格)が2015/16年度と同水準の場合、2020/21年度の栽培面積は、19万ヘクタール(2016/17年度比7.8%減)、砂糖生産量は180万トン(同4.9%増)と見込まれている。砂糖価格が下落した場合の栽培面積は、14万ヘクタール(同32.0%減)、同価格が上昇した場合は、22万ヘクタール(同6.8%増)と、価格によって大きく変動することが見込まれている。砂糖消費量は、女性の社会進出や加工品の需要増加に伴い、直接消費用の減少が続く一方、業務用が増加することから、横ばいで推移すると見込まれている。
 



 

(2)業界の動き
 生産割当廃止後の増産を計画した製糖企業は、2013年ごろから生産の効率化を進めてきた。具体的には、貯蔵タンクなどへの設備投資による生産能力の増強▽契約()(じょう)を工場近郊に集約させることによる輸送コストの削減─などである。こうした取り組みにより、2016年の工場従業員1人当たりの砂糖生産量は、630トンと前年比42%増加した。KSC社は、さらに、輸出拡大のため、北部に新たな輸出ターミナルの建設を計画しており、他のドイツ資本企業へも貸し出すことを検討している。

 今後、製糖企業は、より多くの砂糖生産が可能となるよう、工場の操業期間を従来の100日程度から120日以上に長期化したり、各種データの活用により、製糖コストの削減を目指すとみられる。ポーランド製糖事業者協会は、今後は生産コストを削減した企業だけが生き残ることから、各企業のさらなる生産性向上は喫緊の課題であるとしている。

コラム2〜生産者によるてん菜生産性向上の取り組み〜

 全国てん菜生産者協会会長のクシシュトフ・ニキエル氏は、ワルシャワから西方へ約150キロメートル離れたウッチ県クトノ周辺のカシェビ・コロニャ地域で、てん菜(約20ヘクタール)、小麦(約15ヘクタール)およびトウモロコシ(約40ヘクタール)を輪作により生産している。てん菜の収穫作業は製糖企業へ委託しているが、それ以外の作業は全て自己所有の機械を用い、父と息子の3世代で行っている。

 播種は、6条仕様の播種機を用いて、畝幅約45センチメートル、株間約18センチメートルで行い、緑肥としてシロガラシを植え付けるなど土壌改良にも取り組んでいる。種子は、優良品種リスト(注1)から高収量で耐病性の高いKWS社(ドイツ)、SES Vander Have社(オランダ)、KHBC社(ポーランド)の品種を選んでいる。

 例年、風害は見られないが、霜害や干ばつ(注2)の他、病害虫による被害が発生している。中でも、褐斑病や萎黄病の被害が多いため、毎年、薬剤の種類を変えて防除を行っている。

 2017/18年度については、他作物に比べて価格が保証されているてん菜の栽培面積を拡大させたことから、増産の見通しである。しかし、生産割当廃止に伴い取引価格が下落する懸念があるため、生産割当の廃止を契機とした増産は計画していない。同氏のように、増産に慎重な生産者も少なくないという。同氏は、生産割当廃止によって砂糖生産量が増加し、輸出量も増加すると見込む政府の予測は教科書的であり、実際には、EU域内の主要生産国が競合することになるため、今まで守られてきたEUの砂糖市場の安定性が失われるとしている。また、任意カップル支払いを含む直接支払いは、生産者の経営安定に重要な役割を果たしており、生産割当廃止後、生産者の収入の頼みとなるとみている。

(注1)製糖企業が生産者と協議し、毎年、国の中央品種研究所の種子認定検査に合格した品種から優良品種リストを作成する。生産者は同リストの中から種子を選択し、製糖企業に注文して購入する。
(注2)ポーランドでは2カ月ほど降雨が無いこともあるが、かんがいは一般的に行われておらず、野菜を主に栽培する生産者が野菜圃場とともに併用する程度しか普及していない。


 

 



 
 

おわりに

 EU第3位のてん菜糖生産国であるポーランドでは、EU砂糖政策に対応し、てん菜生産の規模拡大、製糖工場の集約化や施設の増強などを行い、生産割当廃止後の増産体制を整備してきた。

 一方で、生産者1戸当たりの栽培面積や1工場当たりの製糖量は、依然としてEU第2位のドイツを下回り、てん菜生産コストの低減および製糖の効率化の余地はまだ大いにあるとみられる。

 経済発展が緩やかに進行している同国では、今後も生産コストを抑えながら、同時にさらなる生産の規模拡大も少しずつ進んでいくと見込まれる。てん菜生産に恵まれた気候や安い人件費という同国の強みを生かしながら、価格競争力の高い砂糖および菓子類をいかにより多く生産し、輸出拡大をしていくか、EU砂糖産業の変革期に臨む同国の砂糖産業がEU域内ひいては世界の砂糖需給に与える影響について今後も注目していきたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272



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