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かんしょの収量およびでん粉含量と気象条件の関係について

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最終更新日:2018年9月10日

かんしょの収量およびでん粉含量と気象条件の関係について

2018年9月

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
畑作研究領域 畑作物生理・遺伝グループ グループ長 田中 勝

【要約】

 九州沖縄農業研究センター都城研究拠点における過去のでん粉原料用かんしょ育種試験の収量およびでん粉含量と気象条件の関係を調べた。その結果、無マルチの標準栽培、透明マルチを用いた長期マルチ栽培ともに主として栽培期間中の気温が高いほど収量が増える傾向にあった。一方、標準栽培では8月の日照時間が長いほど、長期マルチ栽培では8月の最低気温が低いほどでん粉含量が高くなる傾向にあった。ただし、気象条件の影響は栽培方法や栽培地域、品種によって異なっていた。

はじめに

 かんしょの収量やでん粉含量は、品種や栽培条件による変動の他に、毎年の気象条件によっても変動するが、長期間にわたって同一の品種を用い、類似の栽培条件で収量やでん粉含量に対する気象条件の影響を調べた研究は少ない。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下「農研機構」という)の九州沖縄農業研究センター都城研究拠点(以下「都城拠点」という)では、1989年からかんしょの育種試験が行われており、品種「コガネセンガン」と「シロユタカ」が毎年ほぼ同一の方法で栽培されている。そこで、これら品種の毎年の収量やでん粉含量のデータと栽培期間中の気象データとの比較を行い、かんしょの収量やでん粉含量に及ぼす気象条件の影響について調べた。なお、本記事は農研機構研究報告に掲載された田中ら(2018)1)の内容を要約したものである。

1.研究の方法

 コガネセンガンおよびシロユタカの収量、でん粉含量のデータは都城拠点における1989年から2016年までの育種試験の原料用生産力検定試験のデータを用いた。両品種ともに無マルチの標準栽培試験区(以下「標準栽培」という)と透明マルチを用いた長期マルチ栽培試験区(以下「長期マルチ栽培」という)の二つの試験区のデータを利用した。ただし、シロユタカは1996、97年と、長期マルチ栽培での栽培はされていないため、両年のデータは含んでいない。

 これら試験区の基本的な栽培方法は、表1に記載の通りである。これらのデータと気象庁の都城特別地域気象観測所で観測された毎年の気象データを用いて相関係数を計算した。気象データは平均気温、最高気温、最低気温、降水量、日照時間の5月から10月の6カ月間および各月の平均値を用いた。ただし、標準栽培については5月上旬から中旬に植え付けのため、5月の気象データは植え付け後の下旬の平均値を使用した。

表1 標準栽培および長期マルチ栽培の栽培方法

2.栽培期間中の気象条件と収量およびでん粉含量の関係

(1)収量

 栽培期間を通じた気象要因の平均値と収量の相関関係を見ると、無マルチの標準栽培ではコガネセンガン、シロユタカともに平均気温や最高気温、日照時間と高い正の相関を示し、逆に降水量とは高い負の相関を示す(表2)。月別に見ても、5月下旬から9月の毎月の最高気温と高い正の相関が認められる。また、6月から8月の降水量とは負の相関が見られる一方、日照時間とは正の相関が見られる(図1AB)。従って、標準栽培では、栽培期間中の気温が高く、6月から8月にかけて好天に恵まれることがコガネセンガン、シロユタカの収量の増加につながると考えられる。

 一方、透明マルチを用いた長期マルチ栽培では、収量と栽培期間を通じた気象条件の平均値との関係は品種間で違いが見られ、コガネセンガンでは平均気温や最高気温、最低気温との間に高い正の相関が見られるのに対し、シロユタカでは相関は高くない(表2)。月別に見ると、コガネセンガンの収量は生育初期の5月および生育後期の8月から10月の気温と高い正の相関を示す。一方、降水量とは8月に高い負の相関が見られるものの、日照時間との相関は栽培期間を通じて低い(図2A)。従って、コガネセンガンでは植え付け後1カ月程度と生育後期の気温が高いことおよび8月の降水量が少ないことが、収量の増加につながると考えられる。シロユタカも類似の傾向を示すものの、相関の程度は全体として低い(図2B)。都城拠点における長期マルチ栽培のシロユタカは、コガネセンガンに比べて収量の年次変動が大きく、収量変動に気象条件以外の要因が大きく影響していると考えられる。なお、標準栽培、長期マルチ栽培ともに、栽培期間中の気温が高いと収量が増加する傾向が見られるが、これはかんしょが熱帯アメリカ原産の作物であり、高い生育温度を好むことを反映していると考えられる。

表2 栽培期間を通じた気象要因の平均値と収量およびでん粉含量との相関係数(注1)

図1 標準栽培における月別の気象要因と収量との関係

図2 長期マルチ栽培における月別の気象要因と収量との関係

(2)でん粉含量

 かんしょのでん粉含量は、収量に比べると年次変動が少なく安定した形質である。栽培期間を通じた気象条件で見ると、標準栽培のでん粉含量は日照時間と高い相関がある(表2)。月別に見ても、コガネセンガンでは8月の、シロユタカでは7、8月の日照時間と高い相関を示す(図3AB)。従って、夏季の日照時間が長いことがでん粉含量の増加につながると考えられる。ただし、シロユタカでは気温や降水量ともある程度の相関が見られる。

 一方、長期マルチ栽培でのでん粉含量は、栽培期間を通じた気象要因の平均値とは有意な相関を示さない(表2)。しかし、月別で見ると、コガネセンガンのでん粉含量は8月の最低気温と高い負の相関を示し、シロユタカでもある程度の負の相関が見られる(図4AB)。これは、8月の夜間の気温があまり高くならないことがでん粉含量の増加につながることを示している。過去の報告では、イモの中でのでん粉の合成は夜間の高地温により抑制されるとの報告がある2)。また、上述のように長期マルチ栽培の8月の最低気温と収量には高い正の相関がある。従って、夜間の地温が高いと、でん粉の合成が抑制される一方で、塊根の肥大成長が促進され、でん粉含量が低下した可能性がある。

図3 標準栽培における月別の気象要因とでん粉含量との関係

図4 長期マルチ栽培における月別の気象要因とでん粉含量との関係

3.長期的な収量およびでん粉含量の変動傾向と気象条件の関係

 都城拠点では、長期的に長期マルチ栽培のコガネセンガンの収量が増加している一方、でん粉含量が低下する傾向にある(図5)。また、1989年から2016年の間に5月および8月、10月の平均気温や最高気温、8月および10月の最低気温が上昇する傾向が見られる(表3)。上述の相関関係から見ると、これらの気象条件の変化は都城拠点の長期マルチ栽培のコガネセンガンの収量を増加させるとともに、でん粉含量を低下させる要因となる。従って、気象条件の長期的な変化がコガネセンガンの収量やでん粉含量の変動傾向と関係している可能性がある。

図5 コガネセンガンの収量とでん粉含量の年次変動

表3 気象データの平均値および年次との相関関係(1989〜2016年)

4.他の試験地での研究との比較

 西原・福元(2010)3)は、鹿児島県農業開発総合センター大隅支場(鹿児島県鹿屋市、以下「大隅支場」という)において1987年から2008年に長期マルチ栽培と類似の方法で栽培されたコガネセンガン、シロユタカのデータを用いて解析を行い、収量は生育初期(植え付け後0〜30日、おおむね4月中旬〜5月中旬)の気温が高いと増加傾向となり、でん粉含量は生育後期(植え付け後121〜180日、おおむね8月中旬〜10月中旬)の気温が低いと増加傾向になるとしている。収量に対する生育初期の気温の効果は都城拠点と同様であるが、都城拠点で見られた生育後期の気温の影響は見られない。大隅支場における植え付け時期は4月中旬で、都城拠点よりも生育前半の気温がやや低く、逆に後半の気温がやや高い傾向がある。このような生育期間中の気温の変化の違いが収量に対する影響の違いとなって現れた可能性がある。

 また、脇門ら(2002)4)は大隅支場で1989年から2000年にかけて、いくつかの作付け体系で栽培されたでん粉原料用かんしょの収量について解析を行い、化学肥料を用いた栽培では生育中期まで(5月中旬〜8月上旬)の気温や、栽培期間を通じた降水量および日照時間が収量に影響し、中でも降水量による減収の影響が最も大きいと結論している。また、藏之内ら(2010)5)は農研機構中央農業研究センター(現在は次世代作物開発研究センターに所属)で2000年から2008年に栽培された蒸切干加工用品種「タマユタカ」および「泉13号」の収量、でん粉含量について解析を行い、気温の影響は見られないものの、生育前期(5月中旬〜6月下旬)の降水量が多いと増収傾向となることを報告している。これらの報告に見られる気象条件の影響も都城拠点とは異なっており、かんしょの収量やでん粉含量に与える気象条件の影響は栽培地域や栽培方法、品種によって大きく異なることを示唆している。

まとめ

 以上のように、都城拠点におけるコガネセンガンおよびシロユタカの収量、でん粉含量には気象条件がさまざまな影響を与えることが示唆された。しかし、気象条件の影響は都城拠点内においても栽培方法や品種によって異なる他、過去の研究との比較から、栽培地域によっても大きく異なることが示唆された。今後、これまで各地で行われてきたかんしょ育種関連試験のデータを見直すことで収量やでん粉含量と気象条件との関係をさらに詳細に解明できる可能性がある。また、栽培期間中の地温や土壌水分、日射量などのデータの利用や、収量をイモの個数や一個重といった収量構成要素に分けて考えることで気象条件の生育への影響の生理学的な機構の解明にもつながると考えられる。
【参考文献】
1)田中勝、小林晃、甲斐由美、境哲文、田淵宏朗、高畑康弘(2018)「九州沖縄農業研究センター都城研究拠点におけるかんしょの収量およびでん粉含量と気象条件の関係」『農研機構研究報告九州沖縄農業研究センター』 67号 pp.35-46.
2)KANO, Y. and MANO, K. (2002)「The effects of night soil-temperature on diurnal changes in carbohydrate contents in roots and stems of sweet potatoes (Ipomoea batatas Poir.)」『J. Japan. Soc. Hort. Sci』71巻  pp.747-751.
3)西原悟、福元伸一(2010)「「コガネセンガン」・「シロユタカ」における気象と収量・でん粉歩留の関係」『日本作物学会九州支部会報』 76号 pp.28-30.
4)脇門英美、小玉泰生、井上健一、上村幸廣(2002)「家畜ふん堆肥の連用と気象変動が原料用甘しょの収量に及ぼす影響」『鹿児島県農業試験場研究報告』30号 pp.17-25.
5)藏之内利和、中村善行、高田明子、田宮誠司、中谷誠、熊谷亨(2010)「サツマイモ蒸切干加工用品種の収量・品質関連形質に及ぼすマルチ被覆および気象の影響」『日本作物学会紀事』79巻4号 pp.491-498.
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